乱立する国内のデータ事業者、データビジネスの最新の傾向とは?
IDC Japanは2020年8月20日、国内企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況を調査した結果を発表。IDCはエコシステムを構成する具体的な企業を挙げ、3つの傾向を解説した。
IDC Japan(以下、IDC)は2020年8月20日、国内企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況を調査した結果を発表した。データエコシステムとは、企業内部におけるさまざまなファーストパーティーデータを、外部のセカンドパーティー(協業先の組織)、サードパーティー(協業先以外の外部組織)データと掛け合わせ、新たなビジネスモデル/収益モデルを創出すべく形成するステークホルダーの集合体を指す用語としてIDCが定義したものだ。
本調査では、データエコシステムに関わるプレイヤーの中でも「産業横断データ取引基盤」「Data as a Service」「情報銀行」「データ流通推進活動」に関わる事業者に焦点を合わせて調査をしている(図1の中央部参照)。なお、具体的な事業者名については図2に挙げられている。
調査では、データエコシステムに関わる事業者の動向について、次の3つの傾向が明らかとなったとしている。
1つ目は、パーソナルデータの取り扱いに対する各事業者の傾向だ。
パーソナルデータを扱う情報銀行などの事業者はデータ提供者に対し、新鮮かつ継続的な体験を生み出すことで流通データを最大化しようとしている。
パーソナルデータ流通のユースケース自体は地方創生、副業支援、融資サービスの最適化など多様だ。このため、産業横断データ取引基盤やData as a Serviceを推進する事業者は、データ流通基盤上でパーソナルデータとそれ以外のデータを配合して、データ利用側がビジネス利用しやすい形にする「データブレンディング」がデータエコシステムの活性化に重要と考えている。
その際、データ提供側、利用側ともに流通するパーソナルデータのプライバシーやコンプライアンス管理を効率化する点が差別化要因になりつつある。
2つ目の傾向として、企業または産業を横断してデータを共有する事例が多様化しており、その方向性が「非競争領域のデータ共有」「地域特化型データ共有」「デマンドチェーン型データ共有」に分類されることが分かった。
業種や立場が異なるステークホルダー間でデータ共有をスムーズに実行するには、データの収集と保護、品質管理、統合、準備、学習、分析、活用など各プロセスと、それを支えるテクノロジーおよび各プロセスに関わる組織や人の概念である「データパイプライン/DataOps」の整備が必須だ。その上で、「データ標準化に向けたルール作りや関連する技術開発」と「データビジネス創造に向けた人材間/組織間連携の推進」が不可避な取り組みになるとIDCはみている。
3つ目に、パーソナルデータの「使い道」について不安視する個人消費者がいまだ少なくない中、感染症の予防対策や防災、治安の維持など、「公共性」の高いユースケースでは、パーソナルデータの活用に対する受容性が比較的高く、事例が先行する傾向が明らかとなった。
地域密着型でパーソナルデータ流通を推進する事業者では、特定地域で、まずパーソナルデータ活用の成功事例を確立し、将来的に国内外の多様な地域にデータ流通基盤を横展開するといったロードマップを描く事例が目立つ。これらのことから公共性と地域密着性を重視した上で“ユースケース作り”の重要性が増しつつあるとIDCは指摘する。
IDCの鳥巣悠太氏(コミュニケーションズ シニアマーケットアナリスト)は、この結果を受けて次のようなコメントを発表した。
「データエコシステムに関わるベンダーが製品やサービスを企業に提供する際、データエコシステムを最大限活用して、PoC(Proof of Concept)フェーズでの活用データを増やし、データから生み出すアイデアの幅を広げなければならない。また、ソリューションのKPIを設定する際にも活用可能なデータ量や種類、データパートナーやアイデアの数を複合的に評価することも肝心だ」
鳥巣氏はまた、「COVID-19の影響で、人々の働き方に対する考え方が大きく変化する中、専門職の人材が持つ感覚的な能力や同僚と顧客、知人、家族からの評価といった人の能力などをあらゆる角度からデータ化して流通させる必要がある。それにより、従来と比較して圧倒的に柔軟なワークスタイルが確立し、また適材適所な人材リソースの配分が可能となる」として、個人の能力や評価といった従来数値化しにくかった情報のデータとしての流通も重要だと指摘している。
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