中途半端なリモート開発は生産性低下を招く? コロナ禍でのシステム開発体制と課題
2020年4月に発出された緊急事態宣言。システム開発の現場も体制を変えざるを得ない状況となり、環境が変わったことで「生産性が低下した」と回答した企業は少なくない。IDC Japanの調査を基に、コロナ禍でのシステム開発体制と生産性への影響について解説する。
IDC Japanは、企業のITシステム部門の開発の管理者と担当者を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおける国内企業のITシステムの開発体制に関するを調査を実施し、その結果を発表した(調査時期:2020年8月、有効回答数:435社)。
コロナ禍での開発体制の変化は生産性にどう影響を及ぼしたか
調査結果によれば、COVID-19による緊急事態宣言期間中(2020年4月7日〜5月25日)に、在宅勤務に切り替えてフルリモート開発を実施した企業は34.9%だった。出社日数を減らして在宅からのリモート開発とオフィスでの開発を併用した企業は25.7%であり、合わせると、約60%の企業が在宅からのリモート開発を実施していたことになる。
緊急事態宣言解除後は、在宅からのフルリモート開発を実施した企業が22.5%、リモート開発とオフィスでの開発を併用した企業が31.5%となった。COVID-19感染拡大前と同じように通常通りの体制で開発を実施した企業は23.4%であった(下図参照)。
リモート開発を実施している企業に対して、COVID-19感染拡大前の通常体制による開発と感染拡大後のリモート開発による開発生産性について尋ねた項目では、在宅によるフルリモート開発を実施した企業の48.8%が感染拡大前よりも開発生産性が低下したと回答した。そのうち「25%以上低下した」と回答した企業は16.7%となった。
一方、リモート開発とオフィスでの開発を併用した企業は、63.9%が感染拡大前よりも開発生産性が低下したと回答した。そのうち25%以上低下した企業は26.2%であった。この結果を見ると、フルリモート開発よりも、オフィスでの開発と併用したリモート開発の方が生産性が低下していたことが分かる。
在宅によるリモート開発の課題を尋ねた項目を見ると、「エンジニア間のコミュニケーション不足による進捗(しんちょく)の遅れ」「各エンジニアの進捗やタスクの状況の把握のしづらさ」「要件定義/設計/変更などの調整の難しさ」が回答の上位を占める結果となった。
IDC Japanの入谷光浩氏(ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー)は、「リモート開発による開発生産性を向上させるためには、細かい調整までできるコミュニケーション環境と進捗やタスクの共有環境の整備が必須である。また、週に数回の出社を義務付けるなどの中途半端なリモート開発体制にすると逆に開発生産性の低下を招く恐れがあるので注意する必要がある」と述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 開発者を悩ます「ソフトウェアアーキテクチャ選定」 迷った時に使える3つの判断基準
さまざまなソフトウェアアーキテクチャが存在する中で、プロジェクトに合ったものを選ぶには何をよりどころにすれば良いのか。こうした開発者の悩みに対して、本連載を通してその答えを探る。新規アプリ開発を発注するなどプロジェクトに関わる際の参考としてほしい。 - 5分で分かる「MVP」アーキテクチャ基礎解説
1980年代初頭に登場したアーキテクチャ「MVC」。MVCには各モジュール間の依存が強く、変更に対する柔軟性が低いという問題点があった。そこで登場したのが「MVP」。MVPはMVCよりも何がイイのか。 - 図解で分かるソフトウェアアーキテクチャ 「MVVM」のテスタビリティーと3つの特長
アーキテクチャを選定する上で重要な視点の一つにテスタビリティ―がある。「MVVM」はMVCやMVPとどこが違い、何に優れているのか。図を交えて解説する。 - 「Flux」アーキテクチャとは? MVCやMVPとの違いとテスタビリティー
「MVC」や「MVP」では、ModelやViewの数が膨大になり構造が複雑化するという問題があった。FluxアーキテクチャはMVCやMVPとどう違うのか。