対策待ったなし? 日本にも迫るディープフェイクの脅威:586th Lap
欧米を中心に世間を賑わせているディープフェイクが日本でも脅威となり始めた。一体、何が起こっているのだろうか?
「ディープフェイク」とは、人工知能(AI)を用いて既に存在する動画に静止画などを組み合わせることで簡単に「偽動画」を作成できる技術だ。既に存在する動画に、他の動画や静止画から拝借した画像を貼り付け、「偽動画」を作る。
動画で、ある人物の顔を他の人の顔に置き換えて、あたかも他人が話しているかのように見せることもできる。
欧米を中心に世間を賑わせているため「日本のわれわれにはあんまり関係ない」と思っている人も多いのではないだろうか。しかし、ディープフェイクが日本でも急激に増加傾向にあるという。その詳細とは――?
産経新聞が2020年10月24日の記事にてディープフェイクの危険性について触れている。
2020年10月上旬、ディープフェイク動画を作成したとして日本国内で初めて2人の逮捕者が出た。アダルトビデオの出演者と女性タレントの顔をディープフェイクによって合成したということで著作権法違反と名誉毀損(きそん)の罪に問われている。
産経新聞の記事によると、海外では、2017年頃からディープフェイクを使って作成された動画などが出回り始めたという。2020年6月時点で約4万9000件もの偽動画が公開されているという。その中で日本人のフェイク画像も4%ほど存在していた。
警察庁も国内におけるディープフェイクの利用実態を調査しており、2020年9月末までに3500本ものディープフェイク動画がネットに投稿され、約200人がその被害に遭っているという。
ただ問題は、今回の逮捕者が著作権法違反と名誉毀損の罪に問われていることからも推測できるように、ディープフェイク動画を作成すること自体は罪に問われないという。フェイク動画が公開され、被害者が訴えたり当局が動いたりして検挙されることはあるが、そこにタイムラグが存在する。その間に拡散が進んでしまえば、取り返しのつかないこととなってしまいかねない。
さらにディープフェイクは作成も難しくない。顔データを3万枚収集してAIに100万回学習させれば、1週間で10分ぐらいの動画が作成できるのだという。逮捕された人物も、約3年で1000本ものフェイク動画を作り上げたというのだから、コツさえつかめば容易であることは想像に難くない。
米国では、先の大統領選挙におけるディープフェイクへの警戒の高さから、ディープフェイクを見抜くAI技術の研究が急速に進んだという。GoogleやFacebook、Microsoftらはそれぞれディープフェイクを検知する新技術を発表し、対策を進めている。
日本においても、国立情報学研究所を中心にディープフェイクの自動判別技術の研究が進められているが、問題はいまだ国内でディープフェイク自体への関心が薄いことだ。もし自分や家族、大切な人がディープフェイクの被害に遭ったら……そう考えれば自然と対策も進んで行くのかもしれない。
上司X: 日本でディープフェイクが増えている、という話だよ。
ブラックピット: 逮捕者が出たっていうのが報道されていましたね。
上司X: ただなあ。今のところ作るのは別に問題じゃないんだよなあ。
ブラックピット: んー。それは絶妙に微妙な状況ですね。
上司X: 今のところ、日本で政治家がディープフェイクの被害に遭ったというような話は聞こえてこないから、楽観的な考えなのかもしれない。
ブラックピット: いまのところアダルトビデオと芸能人との問題ですからね。ちょっと前の「アイコラ」みたいな感じで捉えている人が多いのかもしれませんねえ。
上司X: 実際、政治家が自分のディープフェイク動画を目にしてようやく慌てて大騒ぎ、法整備だ! なんて騒ぎになるような予感がするけどな。
ブラックピット: まあそこまで愚かなことはない気がしますけどね。
上司X: ま、問題は一般の人にも意識が薄いのが問題の一つかもね。国内でももっとディープフェイクの危険性が広まって、多くの人が危機感を持てば、政府なり警察なりが動くきっかけになると思うよ。ともかく日本でもディープフェイクのまん延は待ったなしだ。末端の俺たちもちょっとは注意しておこうじゃないか。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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