フルスクラッチの基幹システム、「承認業務のために出社」を無くしたDX事例
三井不動産ビルマネジメントは、コロナ禍以前からワークスタイル改革に積極的に取り組んでいた。しかし、申請、承認などのワークフローはいまだ紙ベースで、旧態依然とした業務実態だった。このアナログな環境から脱却するために、同社はどう動いたのか。
三井不動産グループの不動産運営管理事業を担う三井不動産ビルマネジメント。1982年に設立されて以来、オフィスビルをはじめとする物件の運営、管理に関わるサービスを提供している。
同社は、2017年から「働き方変革」を進めている。総務部に「IT推進グループ」を設置し、ITを活用した施策を主導し、場所や時間の制約にとらわれない柔軟な働き方の実現を目指している。
フルスクラッチの基幹システム、紙印刷を回覧する往年のスタイル
当時、働き方変革を推進する上での大きな課題となっていたのが、紙を中心に回されていた申請、承認処理の回覧業務だった。
同社の基幹システムは、フルスクラッチで開発したもので、申請、承認処理のワークフロー機能を備えていなかった。申請、承認業務は基本的に、出力した紙の書類を回覧していたという。この申請業務が、同社の目指す場所と時間にとらわれない働き方の実現を大きく阻害していた。
「回覧のために出社」を不要に
この課題を解決するため、同社のIT推進グループは2019年に、基幹システムの追加開発ではなく本格的なワークフローシステムの導入に向けた検討を開始した。
三井不動産ビルマネジメントは基幹システムの追加開発は時間、コストともに難しい。他の業務アプリケーションでもワークフローの機能を持たないシステムもあり、柔軟に対応可能な新製品の導入を考えたという。
同社は機能やコスト、品質などさまざまな視点から候補製品を比較検討し、既に導入済みの「Office 365」(現Microsoft 365)との連携を重視し、「SharePoint」ベースで、三井不動産グループの品質、セキュリティ要件を満たしたSBテクノロジーの「Flow」を採用した。Flowは、SBテクノロジーが「Microsoft 365」を活用して働き方改革を支援する独自サービス「clouXion」にラインアップされている。
SBテクノロジーのプレスリリースによると、2019年11月の導入決定後、三井不動産ビルマネジメントは一部の申請、承認業務にFlowのワークフローを適用し、約4カ月間のトライアルを実施した。トライアルを実施した結果、短期間かつ低コストでワークフローを作成でき、利用者も迷わず使えることが分かったとし、2020年5月にはワークフローを利用する従業員1300ユーザーに本番導入した。
現在は、押印申請処理をはじめ、社内申請、承認業務の多くを電子化した。電子化により紙の回覧のために出先から会社に戻る必要はなくなり、自宅やシェアオフィスからノートPCで申請から承認までの業務が可能になったという。三井不動産ビルマネジメントは今後、文書管理業務など適用範囲を広げていきたいとしている。
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