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BYODの利用実態(2020年)/後編IT担当者300人に聞きました

2020年は急なテレワークのために、どうしても個人の端末を使わざるを得ないケースがあった。それでは今後、BYODはどうなっていくべきだろうか。コロナ禍中のトラブルや、そこから見えるBYODのメリットとデメリットについて調査した。

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 キーマンズネットは2020年11月20日〜12月4日にわたり「BYOD(私用端末の業務利用)の実態」に関する調査を実施した。全回答者数408人のうち、情報システム部門が37.7%、製造・生産部門が21.3%、営業・販売部門が13.0%、経営者・経営企画部門が8.3%といった内訳であった。

 今回は、企業がBYODを制度として導入する際のメリットやデメリットに加え、これまでBYODで発生したトラブルなどを調査した。その結果、多くの回答者がメリットもデメリットもあると感じていること、コロナ禍によって多くの企業が緊急でBYODに取り組まざるを得なくなり、それに伴ってさまざまなトラブルが発生していたことなどが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

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コロナ禍のバタバタを振り返って考える「もし、BYODが正式に導入されたら?」

 前編では全体の77.7%の企業でBYODを「禁止」もしくは「非推奨」を制定しているにも関わらず、シャドーIT化した”隠れBYODユーザー“を含めて62%が何らかのBYODを実施している実態を取り上げた。こうした背景から後編では、今後BYODの企業導入が本格化した場合を想定してメリットやデメリットなどを調査した。


図1 BYODが制度化されたら「メリット」は?

 はじめに、現時点でBYODの取り組みがあるかとは関係なく、全体に対して「企業がBYODを制度として導入するメリット」について意見を募った。「企業が端末を調達/支給するコストを削減できる」や「個人で持ち歩く端末が減る」「従業員が使い慣れた、好みの端末で業務できる」などに票が集まった。(図1)また、「メリットはない」と回答した割合は20.1%となり、およそ8割が何らかのメリットがあると考えていることが分かった。

 また、部門別に異なるメリットを想定していることが分かった。以下に一部の傾向を抜粋する。

  • 企業が端末を調達/支給するコストを削減できる(経営者・経営部門、総務・人事部門)
  • いつでも業務に取り掛かれる(営業企画・販売促進部門、マーケティング部門)
  • 従業員が使い慣れた、好みの端末で業務できる(営業・販売部門)

 以上から、業務や役割によって享受できるメリットが変わるため、BYODへの捉え方も部門ごとに異なっている実態が見えた。

デメリット「なし」はわずか1.7%、最大の懸念はやはり「セキュリティ」

 反対に「企業がBYODを制度として導入するデメリット」についても聞いている。最も多かったのは「セキュリティに懸念がある(80.9%)」だった。次いで「仕事とプライベートの区別がなくなる(67.4%)」「従業員の費用負担が増える(61.0%)」「紛失や盗難のリスクが高い(39.2%)」などの回答が多かった(図2)。また、「デメリットはない」と回答した割合は1.7%(7人)と非常に低く、ほとんどの回答者が何かしらの懸念を持っていることが分かった。


図2 BYODが制度化される「デメリット」

 企業が支給する端末であれば、MDMやMCMといったエンドポイントセキュリティ対策を講じるのが一般的だが、従業員の私用端末を会社が完全に制御することはできない。セキュリティ対策の度合いは個人の意識やリテラシーに依存するため、従来通りの対策では盗難や紛失による情報漏えいやマルウェア感染などのリスクが増える。

 そこでBYODを正式に導入する際には、ビジネス領域とプライベート領域を分けて利用範囲や管理範囲、運用方針などのポリシーを制定する必要がある。端末調達のコストとBYODの運用に掛かるコストにどの程度の差があるかの検討も必要だ。

 「その他」の回答には、以下のようなコメントがあった。

  • 費用を補填しないと従業員のエンゲージメントが下がり、補填するとコストメリットがなくなる。リスクを考えればスマホはともかく、PCと回線、ルーターは支給されるべきだ
  • さまざまな機種やプラットフォームでの利用が想定されるため、管理やアプリの動作検証の負担が増える

コロナ禍のバタバタを振り返る 本当にあったこんなトラブル

 最後に、回答者がこれまでに経験した「BYODにまつわるトラブル」についてフリーコメントを募ったところ、コロナ禍中での急激なテレワークへの以降に伴い、機器の準備が間に合わずにセキュリティ上の問題を抱えたまま私用の端末を使わざるを得なくなった状況を振り返る声が目立った。

  • 準備不足の中でテレワークが始まり、一部がなし崩し的にBYODをすることになった
  • 一時的に私用のPC(Windows 7)を使うことになった

 また、設備も制度も未整備の状況で始まったテレワークを従業員が個々の努力で乗り切り、そのために個人の負担が増えたり、後に問題になったりといった例も見られた。

  • 私物の端末のテザリングで業務にあたってデータ通信の使用量が増え、通信制限がかかった
  • テザリング費用の負担について社内ルールがなく、後日もめることになった

 一方で「端末の不足から一気にBYODが解禁され、自宅PCの利用に月額手当が支給されることになった」という柔軟なルールを制定したケースもあった。

 BYODの現状については、実態に制度やルール策定が追いついていない状況が見られる。一方で、コロナ禍でBYODに頼らざるを得なくなり、それをきっかけに「業務効率面で効果がある」と考えるようになった例も多い。推進にも禁止にもそれぞれのメリットとデメリットがあり、組織の実態に合わせた選択をしていく必要がある。

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