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ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況(2021年)/前編

コロナ禍により、ファイルサーバの運用を見直す“脱ファイルサーバ”の動きが見られる中、ファイルサーバの利用実態をアンケート調査から探る。そして、実際に現場で起きたファイルサーバ、クラウドストレージにまつわる“怖い話”を紹介する。

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 キーマンズネットは2020年12月28日〜2021年1月15日にわたり「ファイルサーバの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数128人のうち、情報システム部門が33.6%、製造・生産部門が24.2%、営業・販売部門が11.7%、総務・人事が6.3%と続く内訳であった。

 今回はファイルサーバやクラウドストレージの利用状況や運用方法、満足度やトラブル発生の有無などを調査した。なお、グラフの合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

コロナ禍におけるファイルサーバの利用状況

 オフィスでの勤務を中心とした従来の働き方が変わろうとしている現在、見直すべきものの一つに、オンプレミスのファイルサーバの存在がある。遠隔地での就労を許可する企業も出始めているが、2021年はそうした動きがさらに活発化することが予想される。オフィスから離れた場所で働くことが一般的になると、ファイルベースの情報共有も進むだろう。そこで、キーマンズネット読者に対して勤務先でのファイルサーバの運用状況を尋ねた。前編、後編にわたって、アンケートの調査結果を紹介する。

 まず、読者の勤務先におけるファイルサーバの利用状況について尋ねたところ、「ファイルサーバを利用している」が52.3%、「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」が39.8%、「クラウドストレージのみ利用している」と「ファイルサーバとクラウドストレージのどちらも利用していない」が同率で3.9%と続いた(図1)。結果をまとめると、何らかの形でファイルサーバを利用している割合は92.1%、クラウドストレージを活用している割合は43.7%となった。


図1 勤務先でのファイルサーバとクラウドストレージの利用状況

 関連して「ファイルサーバを利用している」「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」と回答した人に対してファイルサーバの運用方法を聞いたところ、「自社運用」が86.4%と過半数を占め、「マネージドサービスなどを利用し外部で運用」とした人は全体の9.3%にとどまる結果となった(図2)。

 自社運用ではセキュリティ面やカスタマイズ性などにメリットがある一方、社外からのアクセスを前提とした業務には対応しづらい面もあり、COVID-19の世界的流行を背景に働き方が急変した現在においては、課題を抱えているも企業も少なくないのではないだろうか。


図2 ファイルサーバの運用方法

まるでごみ箱……行先不明のファイルの蓄積に従業員のイラ立ち

 前項目で、大半の企業でファイルサーバを運用している状況が分かったが、次にファイルサーバの利用における不満点に焦点を当てて調査結果を見ていきたい。

 「ファイルサーバを利用している」「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」とした回答者に対して、ファイルサーバの満足度について尋ねたところ「満足」としたのはわずか16.9%。「やや満足」が28.8%、「やや不満」38.1%、「不満」16.1%となり、結果をまとめると、「満足」と感じている割合は45.7%と半数を下回る結果となった(図3)。


図3 ファイルサーバやクラウドストレージについての満足度

 「やや不満」「不満」と回答した人に対して、ファイルサーバの不満点を聞いたところ「不要なデータが多く整理できていない」「誰のものか分からないデータが多い」「データ転送速度が遅い」「容量が足りない」などが上位に続いた(図4)。


図4 ファイルサーバに対する不満点

 ファイルサーバの運用で陥りがちな事例として、ファイル管理や共有ルールが部門間で異なるなど、利用の自由度が高い利点が反作用を起こすこともある。“誰のものか分からない”不要なデータを生みやすく、容量不足や転送速度の低下も招きやすい。また、「不適切なアクセス権の設定」はコンプライアンスの面におけるリスクとなりがちだ。こうした不満が集中しやすいポイントを参考にして、部署、部門ごとのファイルサーバの利用状況を把握し、整理する必要があるだろう。

「うちのファイルサーバはカオスだ」最も多い現場の“困った”は?

 ファイルベースの情報共有が盛んな今だからこそ、トラブル時の代償は高くつきそうだ。ここからは、読者が実際に経験したファイルサーバ、クラウドストレージにまつわるトラブル事例を紹介する。最も多く寄せられたトラブルは、容量不足やアクセスの遅延などではなかった。

 まず、「ファイルサーバを利用している」「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」「クラウドストレージのみ利用している」と回答した人を対象に、ファイルサーバ、クラウドストレージのトラブル発生有無について聞いたところ、「ほとんど発生しない」が69.1%と過半数を占める一方、「時々発生する」26.8%、「頻繁に発生する」2.4%と、合わせて29.2%が何らかのトラブルを経験していた(図5)。


図5 ファイルサーバやクラウドストレージに関するトラブルの有無

 具体的なトラブル事例をフリーコメントで聞いたところ、3つに大別できる。1つ目は「容量不足」に関連するトラブルだ。「容量不足で不要になったファイルを削除して対応している」「不要ファイルの増大による容量枯渇」など増え続ける不要データに頭を抱える管理者は少なくないようだ。

 2つ目はファイルサーバやクラウドストレージへの「アクセス」に関する声だ。「アクセス集中によるパフォーマンスの低下」「ファイルサーバが不調で接続できない場合があった」「クラウドストレージでは頻繁にアクセスしづらい状況が発生。トラブルで利用不可になる頻度がファイルサーバより圧倒的に多い」など通信遅延に関するトラブル事例も多く報告された。

 そして最も多く寄せられたのが3つ目の「データの消失」に関するトラブルだ。「手違いでフォルダが移動、削除された」「権限設定が不適切なこともあって、重要なファイルがいつでも誰でも消せる状態にあった」「ユーザー(従業員)のデータ誤削除」など設定不備や操作ミスに起因する事例や、「ファイルサーバ交換時に自動同期データが削除された」「古いフォルダのアクセス権が不明。資料のリンク先が古いファイルサーバになっていて、移動して見ることができなくなっていた」といった運用課題に起因する事例が挙げられた。

 その他の声として「ファイル管理の明確なルールがなく、カオスになりがち」「ファイルサーバのダウン。どんどん増えるフォルダ」「サーバ(NAS)の故障、アクセス権の設定変更に関わるミス」「頻繁にレスポンス低下、たまに停止」といったコメントも寄せられた。

 ここで挙げたどのトラブルも業務へ与える影響は大きく、いつでも生じうる事例だ。こうしたコメントを人ごとにせず、自社のファイルサーバの運用状況やクラウドストレージの利用状況をあらためて確認したい。

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