「魂のデジタル化」で亡くなった人をよみがえらせる? Microsoftの特許技術とは:598th Lap
亡くなったあの人をデジタルで再現できるとしたら――?まるでSFのような技術が特許を取得しているという。
「人間の魂をデジタル化して再現する」、SF小説などで見かける話だろう。魂が再現できれば、デジタルで再現された亡くなった人と残された人が会話したり心を通じ合わせたりできる。
フィクションの話だろう、と思うが「魂のデジタル化」が真面目に研究され、Microsoftが特許を取得していたことが明らかになった。真相はいったい──?
この件は米国メディアが一斉に取り上げた。CNN Businessは2021年1月27日、この件を報道した。
報道によると、Microsoftが米特許商標庁に2017年に出願し、2020年12月に承認された。公開された文書からこのことが判明した。特許情報資料は「Creating a conversational chat bot of a specific person/特定人物の対話チャットbotの制作」と題されている。発明者は同社のダスティン・アブラムソン(Dustin Abramson)氏、ジョセフ・ジョンソン・ジュニア(Joseph Johnson,Jr)氏だ。
この技術は特定の人物をモデルとして会話できる「チャットbot」を作成するというもの。特定の人物の画像やSNSの投稿、メッセージ、メール、そして音声など各種データを収集し、それらをAIによって分析する。
そして分析した情報をチャットbotに反映してその人格を再構築し、それに沿った話し方や口調や話し方を再現する。特定の人物は、もちろん現存する人でも構わない。逆にいえば、データがそろうのならば既に亡くなっている人でも作成可能だ。
場合によっては、音声認識や顔認識技術も応用して画像や映像を作成し、2次元モデルや3次元モデルを作成してよりリアルにチャットbotを強化することも可能だという。チャットに合わせ、特定の人物が表情豊かに動く。もし自分のチャットbotを作成できれば自分との会話も可能となる。
しかしながら、MicrosoftでAI関連のゼネラルマネジャーを務めるティム・オーブリエン(Tim O'Brien)氏はこの報道を受けて「今のところ正式な計画はない」と表明している。技術的には可能かもしれないが、実際にプロジェクトが動くことはない、ということだろうか。
それにしても、実際にこの技術が利用可能なものとして実現されたら、自分の近親者のみならず、遙か昔に鬼籍に入った人物すら再現できることとなる。例えば本物の織田信長のチャットbotを再現することは根本的に無理だが、これまでドラマなどのフィクションで構築されてきた織田信長の「像」を元にして再現すれば架空の織田信長が再現できてしまう。こういったことがどんな人物でも可能となる。倫理的にどうなのか議論の余地はあるだろう。
上司X: チャットbotで「特定の人物」を再現する技術について、Microsoftが特許を取得した、と言う話だよ。
ブラックピット: あのMicrosoftが。
上司X: まあ特許段階だからね。すぐさま何かを製品やサービスにするというワケじゃないとは思うけどね。Microsoftのエラい人もそう言ってるし。
ブラックピット: しかし、技術としては可能であるということが特許情報から明らかになっているわけですよ。
上司X: 確かにな。こういう技術は今後需要があると思う。個人のデータがたくさん蓄積されている昨今なら、可能であれば「亡くなった人を再現したい」と思う人は少なくないはずだ。
ブラックピット: チャットbotかもしれませんけど、もし正確に再現できたら該当する人にとってはもはやそれは「その人」そのものでしょうから。例えば突然亡くなった家族とまた話せたら、それはある意味「幸せ」と考える人もいると思いますよ。
上司X: そうだろうな。容易に再現可能なら再現してみたいと思うのは人間のサガだろうし。
ブラックピット: うふふ。でも、過去に手ひどくフラれた恋人の情報をストーカー的に収集してチャットbotとして再現して永遠に僕のモノに……! なんてこともできなくはないと言うことですよね!
上司X: うわ、相変わらず気持ち悪いことを考えるね。この技術が確立されたとしても、現存する人物の再現は禁止するとか、そういう制限が欲しいところだね。かといって亡き人を際限なく再現してもどうかとは思うが。いろいろ議論の余地がある特許だな。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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