キーマンズネットは2021年2月1日〜12日にわたり「帳票の利用状況に関するアンケート」を実施した。全回答者数137名のうち、情報システム部門が27.0%、製造・生産部門が23.4%、営業/企画・販売/促進部門が10.9%、総務・人事部門が8.8%などと続く内訳であった。
今回は、業務で利用される帳票の管理方法と紙の帳票管理が残っている企業の割合、紙運用が残っている理由などを調査した。ほぼ全ての企業で部分的にでも帳票のデジタル化が実施されている一方で、特定の業務では紙文書の管理が増加していることも分かった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
文書をデジタル化している企業は「ほぼ全て」、一方で紙の増加傾向も
まず、業務で利用している帳票形式を聞いたところ「部分的にデータ化しているが、紙に出力して管理している」が45.9%、「部分的にデータ化しており、紙はスキャンするなどでデータ化して管理している」が37.8%、「全てデータ化しており、データのまま管理している」が13.3%、「全て紙で運用し、紙で管理している」が3.1%となった。全体で97.0%と、ほぼ全ての企業で部分的にでも帳票をデータ化していることが分かった(図1)。
この結果を2020年4月に行った前回調査と比較すると「全てデータ化しており、データのまま管理している」が0.8ポイント増えている。全体的に帳票のデジタル化が進んだ一方で「部分的にデータ化しているが、紙に出力して管理している」は33.8%から45.9%と12.1ポイント増加しており、紙書類の管理が増加している工程がある傾向も見えた。
時代への逆行か、一時的な負荷か? コロナ禍中でも紙文書が増加したのは
図1の結果からは、コロナ渦中においてビジネスのデジタル化が進んでいるにも関わらず、紙書類の管理が増加している領域があることが見える。それがどのようなビジネス領域で、なぜ紙運用が増えているのか。紙で管理している帳票の種類を複数回答で聞いたところ、以下のような結果が出た(図2)。
多かったのは「契約書などの法務案件に関わる書類」(83.3%)や「受注・発注・納品などの商取引に関わる書類」(70.8%)、「自社経理向けの提出書類」(66.7%)、「会計・経理に関わる帳簿類」(54.2%)、「社内承認プロセスの証左に関わる書類」(52.1%)だった。この結果を前回調査と比較すると、会計や経理の社内承認用の書類は15〜20ポイントと大幅に減少している一方で、自社経理向けの提出書類が13.4ポイントと突出して増加していた。
紙で帳票を管理する理由を聞いたところ「業務運用ルールで紙にファイリングすることになっているため」(54.2%)や「法律により、紙での保存を義務付けられている帳票があるため」(45.8%)、「承認印の記録が必要なため」(45.8%)、「取引先が紙でのやりとりを希望しているため」(35.4%)などが上位に挙がった。(図3)
以上から見えるのは、社内承認用の書類を中心にデジタル化が進んでいるが取引相手の環境が整わずに紙文書が残ってしまうケースと、コロナ禍で最低限のデジタル化をしたものの抜本的な見直しはできていないケースだ。緊急事態宣言下で勤務体制が変則的になり、経理業務が一時的に煩雑化した状況も見える。
「コロナ禍ならではの不満」から「長年の悩み」まで紙運用の悲哀
業務のデジタル化はペーパーレス化から始めるのがセオリーだ。しかし、コロナ禍においても紙運用から脱しきれない例が多いことも分かる。それでは、現場は紙運用に納得しているのか。そこで紙運用についてどう考えているのかを聞いたところ、以下のような声が寄せられた。
- 膨大な資料の紙の印刷にコストと時間がかかる
- 検索ができない、参照するのに郵送が必要になる
- 記入のミスや遅れがある。サイロ化しており共有や活用ができない
- 管理スペースの確保が難しく、廃棄が手間
- 在宅勤務ができない社員が出てしまう
- 上長にハンコを押してもらうために、上長と出社のタイミングを調整する必要がある
以上から、運用コストや検索性、可用性、保管場所の確保、ニューノーマル対応など、紙運用から脱却できないことで発生するさまざまな課題に直面していることが分かる。
後編は帳票がデジタル化されている領域に注目し、業務で利用される帳票の管理方法や企業の実施状況、デジタル管理の課題などを紹介する。
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