リモートワークを実施することで、災害発生時の対応や従業員の安全衛生管理において、これまでにはない課題が浮上する。企業はどのような対策を講じているのか。
Specteeは2021年4月14日、「リモートワークにおける防災と従業員の安全管理」に関する調査の結果を発表した。2021年2月22〜23日の間に、リモートワークを導入している企業および団体の防災担当者とBCP(事業継続計画)対策管理者1083人を対象に実施したインターネット調査を基にしている。
コロナ収束後も8割の企業がリモートワークを実施
同調査はまず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてリモートワークを導入した企業が「コロナ収束後もリモートワークを継続するか」を明らかにした。
これによれば、「一部の従業員で継続する予定」と回答した割合が47.3%で最も多く、「全従業員で継続予定」(29.9%)、「廃止・中止する予定」(15.2%)、「まだ分からない・決まっていない」(5.0%)、「収束前に廃止・中止する予定」(2.6%)と続き、約8割の企業がコロナ収束後もリモートワークを継続する予定だと分かった(図1)。
リモートワークの防災対策はどうしているのか
リモートワークの導入に伴って、危機管理に対する考え方にも変化があったようだ。組織の危機管理に対する考え方が「大きく変わった」と回答した割合は26.9%、「ある程度変わった」は54.3%と、約8割の企業が危機管理に対する意識が変わったことが明らかになった。具体的に変化したことを聞くと、「安否確認もシステム登録になった」「在宅時の防災マニュアルの周知徹底」「安全に対する組織図を変更した」といった声が上がり、働く環境の変化に伴って、さまざまな対策を講じていると分かる。
企業が防災対策や従業員の衛生管理に苦慮している状況も見えた。「リモートワーク導入によって以前よりも難しくなったこと」を聞いた質問では、「災害発生時の対応(オフィス周辺以外の災害に対しても対応する必要があるなど)」とした回答が36.6%(複数回答)で最も多かったという(図3)。
具体的に「防災対策や従業員の安全衛生管理に関して喫緊の課題」は何かを聞くと、「従業員の危機意識の醸成」との回答が最も多く、36.4%(複数回答)を占めた。次いで、「従業員の就業場所を網羅した災害情報の把握」が34.7%、「組織としての防災対策の見直し」が31.7%、「災害情報の従業員への周知」が24.7%、「従業員の精神衛生(メンタルヘルス)のケア」が22.8%、「従業員の安否確認体制の整備」が21.3%、「人事評価制度の見直し」が13.5%だった。
防災対策や安全衛生管理システムを導入する企業も
リモートワークの実施に伴って新たに導入したツールとして、防災対策や従業員の安全衛生管理に関連するものは、「防災・危機管理システム」(22.0%)、「安全衛生管理システム」(10.8%)などが上がった。
上位は「ビデオ会議ツール」(53.5%)(複数回答)、「ビジネスチャットツール」(37.1%)、「ファイル共有システム」(30.0%)だった。
今回の結果を受けてSpecteeでは、新型コロナウイルス感染症の流行が収束しても、リモートワークを継続する意向を持つ企業・団体があり、いつ起こるか分からない災害に備えて組織の在り方や対応プロセスを見直すなど、防災・安全管理体制を抜本的に見直すことが求められているとしている。
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