「Microsoft 365」と「Google Workspace」の利用状況(2021年)/後編
MicrosoftとGoogleがそれぞれ提供するオフィスツールはどの程度定着しているのか、ユーザーは同ツールをどのように利用しているのかを機能や活用事例別に調査した。
キーマンズネットは2021年3月16日〜4月6日にわたり「Microsoft 365とGoogle Workspaceの利用状況」について調査を実施した。全回答者数259名のうち情報システム部門が27.4%、製造・生産部門が17.4%、営業・販売・営業企画部門が16.6%、総務・人事部門が9.3%などと続く内訳であった。
前編では、前回調査を行った2020年6月から約1年間でSaaS型の利用率が3.5ポイント増加するなど、オフィスツールのクラウド化が進んできている現状に触れた。後編は「Microsoft 365」や「Google Workspace」の使用頻度や認知度、活用事例を調査した。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
気になる、となりの企業のM365とGoogle Workspaceの活用テク
最近のオフィススイートは多様なツール群から成る故に、便利なツールがバンドルされていても"埋もれて"しまいがちだ。しかし、中にはそれらの機能を余すことなく有効に活用する企業もある。そうした企業は、Microsoft 365やGoogle Workspaceの機能をどのように活用しているのか。
フリーコメント形式で勤務先でのMicrosoft 365とGoogle Workspaceの"活用テク"を尋ねたところ、以下のような活用法が寄せられた。
- 多人数のセミナーで共有スライドを同時に編集して討議している
- OneDriveでファイルサーバレス化した
- Teamsの通話を内線代わりに使用している
一般的に使用頻度が高いと思われる、ファイルやドキュメントの共有・編集機能を有効に活用しているという声が目立つ。また、コミュニケーションや業務自動化についての活用事例も多く寄せられた。
コミュニケーション
- Microsoft Formsで匿名の意見投稿ページを作成した
- 部署横断的にマネジャーが連携するチームの運営で、Teamsのチャネルが活躍した。メールでは混乱していたと思う。
自動化
- スクリプトを使って、メールの自動配信やバックアップを自動化した
- フォームを使用して承認フローを自動化した
- Power AppsとPower Automateによる荷物の保管/引取り管理を自動化した
Google WorkspaceのApps Scriptを活用したと推測される例やワークフロー自動化で業務効率を向上させた例など、SaaSアプリを活用して業務の自動化に取り組む企業の姿が見えた。
M365とGoogle Workspaceの利用実態調査、この機能、知ってますか?
次に、Google WorkspaceとMicrosoft 365で利用可能なアプリケーションやクラウドサービスについて、使用頻度や認知の有無を聞いた。
まずGoogle Workspaceでは、使用頻度の高い機能は「Gmail」がトップで88.4%、「カレンダー」67.2%、「ドライブ」66.0%、「ドキュメント」51.4%、「スプレッドシート」48.3%、「Google meet」43.6%と続いた。(図1)
全体的に、コラボレーション機能の利用率や認知度が高い傾向にある。特にGmailやカレンダー、ドライブは、9割近くが「使っている/使ったことがある、名前を知っている」と回答した。
使用頻度の低い機能では、企業内コンテンツ検索の「Cloud Search」(3.5%)やJavaScriptでドキュメントやスプレッドシートを拡張できる「Apps Script」(9.3%)などが挙がった。他機能に比べて専門性が高く、利用者が限定される機能の利用率は前回に続いて低い。
使用頻度で最下位となったのは、企業向けSNSサービス「Currents」で、1.5%に留まった。これはサービス提供開始時期が2020年7月と、比較的最近であったことが要因として挙げられる。調査時点での利用率は低いが組織単位で利用する特性を持つため、今後普及する可能性はあるだろう。
また、2020年はコロナ禍をきっかけにテレワークが普及してWeb会議ツールの認知度が世界的に上がった年とされる。しかし3割近くの企業が「Google Meet」を「知らない」と回答した。
一方、Microsoft 365では、図2のような結果となった。
「Microsoft Excel」などのオフィスツールを除くと、使用頻度の高い機能では「Microsoft OneDrive」73.7%、「Skype for Business」53.7%、「Microsoft SharePoint/SharePoint Online」48.6%、「Microsoft Exchange/Exchange Online」44.0%などが上位に続き、認知度もおおむねそれに準じる結果となった。
使用頻度の低い機能には「Microsoft Sway」6.2%、「Microsoft Power BI Pro」6.6%、「Microsoft Intune」9.3%、「Microsoft Power Apps」10.0%などがあった。
前回調査と比較すると、使用頻度や認知度の高い機能に変化はない。クラウドストレージや共有イントラネット、ドキュメント管理など、社内外でコラボレーションが実現できる機能の利用率や認知度は総じて高く、積極的に活用されていることが分かる。
認知度の低い機能についても傾向に大きな変化はなく、システムやセキュリティ管理者向けの「Microsoft Intune」や「Microsoft Power Apps」、データ分析担当向けの「Microsoft Power BI Pro」など、使用者が限定される機能についてはあまり知られていない状況が続いた。レポートやプレゼンテーション資料の作成ツール「Microsoft Sway」は、2年連続で使用頻度が最下位だった。
オフィススイート、これからどうする?
最後に企業がオフィススイートをどのように活用していく見通しか、今後の展望についてフリーコメントで意見をもらったところ、大きく2つの意見があった。1つは現状活用できていない機能への挑戦で、もう1つはテレワーク対応の取り組みだ。
- RPA、AI-OCRなど開発していくための情報があればいいと思う
- ビッグデータやAIなどとの連携がスムーズにできればうれしい
- スマートデバイスでの活用しやすさが更に向上するとベター
- クラウド化は当然の流れだが、レスポンス改善が今後も必要
- コロナ禍を通して旧来のオフィスアプリケーションの使い方からクラウドを併せて使うことへの習熟度が上がったと思う
テレワークが一般化する中で、対面を避けながら業務の生産性を上げる取り組みは、今後のオフィスツール活用の「伸びしろ」となるだろう。
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