高速通信だけじゃない、「5G」の意外な使い道を大発見:610th Lap
超高速、超低遅延、多数同時接続を実現する次世代通信技術「5G」に期待が集まる。しかしある大学によれば、5Gを通信だけではなく、あるものを生み出す技術として活用可能だという。その意外な使い道とは?
実利用の現実味を帯びてきた、次世代通信規格「5G」。社会での利用が浸透するのはもう少し先になりそうだが、何やら5Gを活用した新技術が誕生しつつあるという。5Gからあるものを生み出すことが可能な技術というが、どういった大発見なのか?
その新技術とは、米国ジョージア工科大学の研究チームが開発したもので、5Gネットワークを「電力網」として活用する技術だ。2021年3月25日に、同大学のオフィシャルブログで公開された。それによれば、5Gネットワークで使われる高周波の電波を電力に変換してIoT(モノのインターネット)デバイスに供給するのだという。
次世代通信規格5Gは、高速通信を可能にするだけでなく、その他用途への活用も期待されている。それがIoT分野での活用だ。5Gには「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」といった特徴がある。この中の「超低遅延」「多数同時接続」の恩恵を大きく受けられるのがIoTなのだ。
スマホやPC以外にも、さまざまなデバイスがネットにつながって活用されるのがIoTであり、家電や自販機といった以前はネットとは無関係だったものが通信機能を持ち、遠隔操作などを可能にする。そして5G通信環境下なら、基地局の1キロ四方当たりで100万台の機器が同時接続できるという。そして通信遅延が1msと小さいことも、リアルタイムでデータをやりとりするIoTデバイスにとっては都合がいいのだ。
そうした中で話題となっているのが、発電技術だ。IoTデバイスの中には、給電が難しい環境で使わざるを得ないデバイスもある。そこでネックとなるのが給電手段だ。
巨大な指向性アンテナを使えば、基地局からIoTデバイスへ無線で電力を供給できなくもないが、見通しが悪ければ機能せず、広域をカバーするのも難しい。その問題を解決するのが、ジョージア工科大学が開発した技術なのだ。
ジョージア工科大学の研究チームは、5Gネットワークに対応した「レクテナ」を開発した。レクテナというのは、マイクロ波を直流電力に変換できる整流アンテナのことで、5Gネットワークで使われる28GHz帯の周波数帯でやりとりされる電波を電力に変換できるのだという。
アメリカの科学者であるウォルター・ロットマン氏が開発したアンテナ「ロットマンレンズ」は、もともとレーダー技術に活用されていたアンテナ技術だが、それをベースにして開発されたのが、5G対応のレクテナだ。研究チームが提示したこのレクテナは、クレジットカードほどの大きさ、厚さで、印刷技術を応用することで大量生産も難しくないという。
5Gでさらなる普及が期待されるIoTだが、この新技術によって、より活躍の場を広げそうだ。なんといっても5Gの電波さえ拾えれば容易に電力の供給が可能なのだから。
なおこの技術がさらに洗練されれば、IoTデバイスのような小消費電力のデバイスだけでなく、スマホやタブレットといったデバイスへの電力供給も可能となるとか。充電不要のスマホが登場する未来も遠くはなさそうだ。
上司X: 5Gの電波網を「送電網」へ変えることができる新技術が開発された、という話だよ。
ブラックピット: おお、これは期待じゃないですか。
上司X: まあ、スマホじゃなくてIoTデバイスへの給電だからね、今のところは。
ブラックピット: 今よりもっといろいろネットにつながるようになって配電も不要となったら、農業やら漁業なんかでもっとIoTが普及しそうですね。
上司X: そうだろうな。5Gの真骨頂はまずIoTで発揮されそうな気もする。
ブラックピット: 広く普及する前に給電能力まで備えちゃったら、5Gはもう無敵じゃないですか?
上司X: 無敵ってほどじゃあないとは思うけどな。まあ確かに期待はできるかもね。
ブラックピット: 充電不要のスマホとか夢が膨らみますね。まあ5Gだと通信量も通信料もどんどこ増えそうですけど……。
上司X: データ量が増えるのは仕方ないさ。今の4Gだって3G以前に比べたらとんでもないデータ量なんだろうけど、今となってはもう普通だし。まあ、それよりはやっぱり充電フリーな環境に期待したいな。5Gの完全普及とともに何年先になるかは分からんけど。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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