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「Amazon Connect」とは? AWSで電話窓口のクラウド化に成功した中小企業の事例3つ

中堅中小企業は大企業ほど十分な人的リソースを確保できるとは限らない。AWSが主催したセミナーで、中堅中小企業がコンタクトセンター業務をクラウド化して、生産性と業務効率を向上させた3つの事例が紹介された。

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 コンタクトセンター業務を中核事業とする中堅中小企業では、電話業務は、いわば事業の生命線だ。コールセンターや保守サポート窓口、問い合わせ窓口、予約受付、店舗の応対などが業務に含まれる企業もあれば、それらの委託を受けて事業とする企業もある。それぞれの業務には特有の課題があり、各課題は電話システムのクラウド化で解決できるという。

 Amazon Web Services(AWS)は2021年5月11〜12日に開催した「AWS Summit Online 2021」の中で、同社の提供するコンタクトセンター統合プラットフォーム「Amazon Connect」によって電話窓口業務のクラウド化に成功した3つの事例を紹介した。

サマリー

  • Amazon Connectで何ができるのか
  • 事例1.輪番制の「電話番出社」から従業員を開放、社用端末の貸与も不要に
  • 事例2.「年末年始だけ忙しいコンタクトセンター」で受電率20%アップ
  • 事例3.企画から稼働まで1カ月半、8人体制のまま対応回線を2倍に

Amazon Connectで何ができるのか

 Amazon Connectは、100%クラウドベースのコンタクトセンター統合プラットフォームだ。ライセンスや専用の機器、専用の電話回線などがなくてもコンタクトセンターが構築できる。コンタクトセンターに求められる機能には、電話回線や電話番号、PCで通話するための「ソフトフォン」、チャット、自動応答、電話振り分け、通話録音、レポートなどがあり、Amazon Connectはそれら全機能が標準で装備されている。電話番号は「0120」と「050」「03」「0800」の4種類で始まる番号を提供可能で、オペレーターはPCとヘッドセットがあればコールセンターの業務を始められる。

 自動応答のフローは、顧客自身がセルフサービスで設定できる。自動応答の文言をテキストで入力すると、その内容の音声が自動的に流れる仕組みだ。管理者向けには、応答待ちの人数や通話内容を確認できる「管理者ダッシュボード」機能がある。


中堅中小企業における電話業務の課題例(出典:AWS Summit講演資料)

 ユーザーは既存の問い合わせ番号をAmazon Connectに転送すれば、自宅のPCやスマートフォンで応答できるようになる。企業が使っているCRM(顧客情報管理)との連携にも対応し、例えば「電話をかけてきた顧客を自動応答で確認して、オペレーターのPC画面に顧客管理を自動表示する」といった仕組みが構築できる。さらに通話をテキスト化する機能も搭載するため、感情分析やキーワードを抽出といった「顧客対応のデータ化」も可能になる。

 Amazon Connectは初期費用は無料で、コールセンターの席数やオペレーターの数、回線の数は価格に影響しない。利用量に応じて料金が変動し、キャパシティーは自動で拡張/縮小されるので、従来のように「問い合わせの増減に会わせてプランをこまめに見直す」「念のため多めにキャパシティーを確保しておく」といった負荷が不要になる。

事例1.輪番制の「電話番出社」から従業員を開放、社用端末の貸与も不要に

 キャラウェブは電子書籍のライセンス管理や販売の他、AWSの認定パートナーとして企業のクラウド移行の支援を提供している。同社はコロナ禍において、顧客からの問い合わせに対応するために「輪番の出社体制」を取っていたが、Amazon Connectの導入後は社員全員がテレワーク可能になったという。さらに、電話対応を社員が所有するスマートフォンでできるようになったため社用端末の貸与が不要になり、コスト削減の効果も得られた。


キャラウェブが構築した新しい業務プロセス(出典:AWS Summit講演資料)

事例2.「年末年始だけ忙しいコンタクトセンター」で受電率20%アップ

 ナカノモードエンタープライズは、ネットショップや大手ショッピングモールなどで、おせち料理を販売する事業者だ。同社は100席規模のコンタクトセンターをAmazon Connectに置き換えた。おせち料理は季節性が高く、ピーク時の対応能力が非常に重要になる。同社は自社内製でシステムを開発し、3カ月で構築した。その他のAWSサービスとも連携させ、注文状況の見える化も実現した。Amazon Connectの導入後はピーク時の受電の取りこぼしが減り、受電率20%アップを実現したという。


ナカノモードエンタープライズが構築したシステム全体像(出典:AWS Summit講演資料)

事例3.企画から稼働まで1カ月半、8人体制のまま対応回線を2倍に

 musubuは、福岡県福岡市に本社を置くコンタクトセンター運用企業だ。20代から60代の従業員8人でネットショップのコンタクトセンターを運用している。同社はこれまで業務委託で運用していたコンタクトセンターのシステムを、Amazon Connectによって内製化した。


musubuのシステム移行フロー(出典:AWS Summit講演資料)

 コンタクトセンター業務を外部委託で運営していた時は、固定電話での業務で、通話録音機能がなく、受電件数や応答率の把握もできていなかった。同社代表の荒巻里恵氏は「受電の状況がリアルタイムに記録されなかったので、業務品質はオペレーターが毎月まとめる月報で確認していました。そのため問題の確認と解決が遅れていました」と語る。

 2020年5月に移行プロジェクトを開始した。既存の3つの番号をそのまま移行してソフトフォンへ切り替え、3つのECサイトのそれぞれからフリーダイヤルで入電する注文をAmazon Connectに集めた後に8人のオペレーターに振り分ける仕組みを構築し、同年6月30日に本番稼働を開始した。企画から稼働まで1ヶ月半という短期開発を成功させたことになる。

 musubuはAmazon Connectの導入によって業務内容のリアルタイム収集が可能になった。現在は応答状況を15分単位で管理して「どの時間帯にスタッフの空きがあるのか」を把握し、それに基づいて休憩時間の設定やシフト作成をしている。

 顧客の電話番号や過去の購買履歴などをPC画面で把握できるようになり、スムーズな対応が可能になった。さらにシステム連携も容易になったため、SMSのメッセージから「LINE」へ誘導するサービスを追加したという。

 導入から約1年後、同社は現在固定回線数を3つから5つに増やし、さらにLINEへ誘導するためのSMS回線も新しく取得している。対応の幅は拡張されたが、オペレーターの増員はしていない(2021年5月時点)。

 荒巻氏は移行を振り返って「予算も時間も限られた中で、最小限のシステムからスタートできた。Amazon Connectであれば、初めてコンタクトセンターを立ち上げるスタートアップ企業でも、自由で柔軟なシステムをスピーディに構築できるだろう」と語る。「Amazon Connectによって、問題点が見える化できたことが一番大きなメリットだと感じている。さらにシステム連携を進めていきたい」と述べ、今後の活用にも期待を見せた。

Amazon Connect導入アプローチの例 左:自社構築/右:パートナー活用(出典:AWS Summit講演資料)

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