文書管理ツールの利用状況(2021年)/前編
2017年に実施した前回調査と比較してビジネス文書の活用意識が高まっていることと企業内では活用が進んでいること、一方で日常業務には課題が残り、現場は混乱と不満の中で業務を続けている様子が見えた。
キーマンズネットは2021年6月7日〜18日にわたり「文書管理ツールの導入状況」に関するアンケートを実施した。全回答者数140名のうち、情報システム部門が28.6%、製造・生産部門が23.6%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が10.8%、経営者・経営企画部門が10.0%などと続く内訳であった。
今回は、文書管理ツールの「導入状況」や「導入目的」「満足度」に加え、業務における「文書の取り扱い方法」などを2017年に実施した同調査と比較した形で分析した。文書データを活用する意識は高まりつつある一方で、時代に合わせた変化ができているかについてはさまざまな意見が聞かれた。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
管理ツールは「入っているが、使っていない」一方で現状への不満も
文書管理ツールはビジネス文書の保管や利活用、ライフサイクル管理、情報保護などを目的に導入が進んでいる。2017年に実施した前回調査と比べると、文書管理ツールの導入率は「微増」という結果が出た(図1、2)。
導入済み企業の割合は3.8ポイント増加し、現時点で導入していない企業は8.1ポイント減少している。また、導入を検討している企業の割合は5.1ポイント増加した。この結果からは、ツールによる文書管理のニーズは増加する一方で「使っていたが、やめた」ケースや「今のツールをやめたい」企業があることも分かった。
次に、日常業務における文書の取り扱い方法を聞いたところ、最も多かった回答は「ファイルサーバで保存/共有している」(67.9%)で、次いで「ローカルストレージで個別に保存している」(10.7%)だった。ファイルサーバやローカルストレージへの格納では、一元的な管理や保護はできない。日常の業務で取り扱う文書について管理ツールを活用しているユーザーは少ないことが分かった(図3)。
この傾向は、文書管理ツールを「導入しない」と回答したユーザーにおいてさらに顕著だった。文書管理ツールを導入していない企業や導入をやめた回答者は、文書を「ツールなしでデータ管理している」や「紙やファイリングなどで管理している」と回答した。
しかし、そのような管理方法に対してユーザーがどう思っているのかを聞くと不満の声が少なくない。全回答者を対象に「現在の文書管理方法についてどう思うか」を聞いたところ、56.7%が「満足」と応える一方で43.3%が「不満」と回答した(図4)。
そこで「不満」と回答した方にフリーコメントで具体的な不満や課題を聞いたところ、既存のルールや古い手法に苦労している様子が見えた。
- ファイルサーバと文書管理ツールを併用しており、管理ルールが不明確
- 文書検索が的確にできず、必要な書類を見つけられないことがある
- 古い紙の文書をどうすればいいか決められない
- 文書の保管ルールや環境に一貫性がなく、個人のリテラシーに依存するため現場が混乱する。
現状の文書管理方法についての不満には、紙文書の扱いやツールの使いにくさ、個人のリテラシーに関する課題などが出る一方で「文書管理ツールで何が良くなるのか分からない」や「適切な検索性を確保すればファイルサーバによる運用でも十分」といった声もあり、文書管理ツールにメリットを感じていない様子も見て取れた。
文書データの活用意欲は増加傾向
現状の文書管理方法に不満を持つ回答者は多く、文書管理ツールの導入は進んでいる。しかし、日常の業務で取り扱う文書は同ツールの管理対象外になっている……そのような状況が見える。それでは企業は実態として、何を目的に文書管理ツールを導入しているのか。
そこで、文書管理ツールを導入済み、もしくは導入検討中の企業ではどのような目的があるのかを調査したところ、「業務効率化」(67.1%)や「ペーパーレス化や文書の保管スペース削減」(60.0%)、3位は「社内ナレッジ活用」(38.8%)などが続いた。順位の傾向は2017年の前回調査と変わらないが、回答する割合が全体的に上がっていることから文書管理ツールを活用する意欲は高まっていることが分かる。特に「バージョン管理」(25.9%)は2017年調査では3.8%、「ISOなどの取得・維持のため」(15.3%)は2017年調査では2.5%で、増加が著しい。これらは前述した「ツールの導入率」よりも大きく増加していることから、既に文書管理ツールを使っている企業が適用範囲を広げている可能性もある(図5)。
次に、実態として文書管理ツールで管理している文書や情報の分野を聞いたところ、1位は「マニュアル・手順書」で78.8%、2位は「社内規定」で58.8%、3位は「契約書」で51.8%と続いた。マニュアルや手順書、設計書などは、前述した国際規格ISO9001の厳しい要件を満たすために管理ツールを利用する必要があるが、実態としても前回調査より回答した割合が上がっている。社内規定や議事録といった社内情報についても、バージョン管理をきちんと行うことで従業員の社内ナレッジ活用に繋がり、結果として業務効率の向上が期待できる。日常業務では意識しないものの、文書管理ツールを導入する目的と実態は一致していることが分かる(図6)。
前述した通り、業務効率化やペーパーレス化、セキュリティ面でのメリットなどから文書データを活用する意識は高まっている。活用範囲も広がりつつある一方で、日常の業務文書を管理ツールで活用するシーンは未だ珍しいことが分かる。しかし、その状況を不満に思う回答者もいる様子だ。
後編では寄せられた声を参考に、従業員規模別に文書管理を取り巻く課題についての傾向を見ていく。
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