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「RPA×AI-OCR」が取引をアップデートする――日商エレクトロニクス主催セミナーレポート

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
移管に関する FAQ やお問い合わせは RPA BANKをご利用いただいていた方へのお知らせ をご覧ください。

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RPA BANK

企業が抱える受発注や決済業務を効率化する試みには、今日に至るまでの長い歴史がある。中でもB to Bで1970年代から導入が進んだEDI(電子データ交換)は、紙の帳票類と入力作業を一掃できる点で高く評価されてきた。ただ一方、多頻度の小口取引でコストがかさむEDIは取引全体に占める割合が頭打ちとなり、経済産業省は2013年度限りで普及実態の調査を終えている

近年B to Cでオンライン手続が広がる中でも、郵送やファクス、紙出力を介しての事務作業は旧来の姿を残してきた。それがいま、スキャンデータでの代替を認める「規制緩和」と、OCR(光学文字認識)を高性能化する「AI(人工知能)の進化」、さらに認識されたデータを自動処理する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の登場」によって変貌を遂げようとしている。IT専門商社の日商エレクトロニクス株式会社は2018年9月14日、こうしたトレンドの核となる「RPA×AI-OCR」にスポットを当てたセミナーを都内で開催。デモンストレーションも交えて活用法を示した。当日の模様をダイジェストで紹介する。

なくせない“紙”の業務を効率化。3つのモデルケース

約120人が参加したセミナー会場では、実務を想定したAI-OCRの活用法を、RPAと連携するモデルも含めて3パターン提示。それぞれ実際に機器・ツールを動かしながら、日商エレクトロニクスの担当者が特徴を解説した。

【ケース1:支払処理業務】

このうち「支払処理業務」を想定したソリューションは、同社経理部門の従業員が行う実務の代替に向けて実用化を進めているもの。営業部門が商品を仕入れた先から届く請求書を、基幹システムに登録されている支払予定データと照合した上で、システム上のステータスを「承認待ち」に変える一連の作業を自動化している。AI-OCRの機能を活用して、個別の設定をしなくても複数様式の請求書が読み取れるほか、請求書以外の書類が紛れ込んだ場合はそのスキャンデータを除外し、次の工程に進ませない仕組みにもなっているという。

この日壇上に設置されたスキャナーに通された4種類・8枚の請求書は、AI-OCRソフト「ABBYY FlexiCapture」とRPAツール「BluePrism」の連携でただちに照合が完了。意図的に仕込んだ不整合も正確に指摘した。定量的な効果も目覚ましく、デモを行った同社デジタルレイバー課の遠山明秀課長は「月あたり30時間かかっていた作業が、ほぼ10分の1の3.1時間に短縮した。同2,500件行ってきた目視での照合作業は(スキャンエラーなどが原因でロボットが不整合と判断した)100件のみに絞り込まれ、作業量の96%を削減できている」と胸を張った。

【ケース2:引受査定業務】

続いて紹介されたのは、生命保険の引受査定を想定した「健康診断書の自動読み取り」。受診機関ごとに様式が異なり、データ分析の対象として整理・加工しづらかったところを、AI-OCRの活用でデータ化の手間を大幅に削減できることが示された。

具体的には、FlexiCaptureによって複数枚にわたる場合を含むさまざまなフォーマットの健康診断書を、共通する1回の設定だけで読み取ることが可能。個々の読み取り結果は信頼度が数値化して示される。OCRがスキャンデータから読み取ったテキストと取得エリアはソフト上で連動して表示されるため、複数のフォーマットが混在していても項目の場所を探す手間がなく、目視による検証の負担が軽減されている。

同課の千葉矢貫氏は、読み取り結果を個別に修正していく以外に、特に精度の低いエリアがある場合はそこだけ設定をやり直すことでAIが学習し、以後の精度を高められることを実作業も交えて解説。「難解な病名や複雑な地名などはあらかじめリスト化しておくと、読み取りが不確かな場合の自動補正に活用できる」と説明した。

【ケース3:口座開設業務】

最後に披露されたのは、口座開設の申し込みを想定した「手書き文字のデータ化」。日本語の手書き文字に強いAI-OCRのクラウドサービス「Tegaki」を、英数字の処理に適したFlexiCaptureと併用し、さらに読み取り結果の基幹システムへの登録をBluePrismが行うソリューションについて同課の中村好夫氏が解説した。ユーザーによるTegakiでの処理は社外との通信を伴うが、FlexiCaptureの機能を使ってスキャンデータを分解し、順不同に送信することでセキュリティーの問題をクリアしているという。

実演に臨んだ“機械の目”は、一般に判別困難とされる手書きカタカナを正しく読み分け、二重線が引かれた文字は無視するなど的確な動きをみせた一方、罫線を「1」と読み違えるミスも犯した。このソリューションでの具体的な文字認識精度について、中村氏は「90%前後」と説明。パンチャーによる入力精度は上級者が99%、初級者が90〜95%であることから「事後の確認・修正に先立つ1次入力をAI-OCRで置き換えることは現実的に可能だ」と結論づけた。

RPAの定着に必要な「4つのポイント」と「BPMへのステップアップ」

入力作業を十分代替しうるまでに進化したAI-OCR。その後工程でデータを受け取り、システム連携などを担うRPAについては、日商エレクトロニクスの青木俊氏(ビジネスソリューション事業本部企画開発室室長)が「導入時から将来を見据えて考えておきたいこと」として、以下の4つのポイントを示した。

  1. 将来(およそ3〜5年後)を見据えた投資計画
  2. 拡大期を見据えた体制整備
  3. 各種ドキュメントの整備
  4. ロボットの台帳管理の仕組み

このうち1点目・2点目に関して青木氏は、RPAツールのライセンス費用や運用環境構築、導入支援サービスの利用といった初期投資を回収するために、おおむねフルタイム従業員5人分にあたる「年間10,000時間の人的リソース創出」が導入目標になると説明。ロボット化の費用対効果に関するシミュレーションを示しながら「展開スピードが速いほど有利。できるだけ迅速にロボットを作り上げられる体制づくりが重要だ」と説いた。

また3点目・4点目に関して同氏は、「(ロボットの実装や統制を専門チームが担うとしても)業務の責任は現場に残るという当たり前のことを、しつこく啓蒙していくべき」と強調。ロボットにトラブルが発生しても当面の作業を人手で円滑にバックアップできるよう、ロボットの仕様と作業内容を「見える化」しておくよう勧め、同社としてそれらを支援するツールの提供も予定していると述べた。

このように、RPAを用いた個別作業の改善に取り組む中で業務の見通しがよくなることから、同社の長谷川健氏(エンタープライズ事業本部 第二営業部 部長)は、「単一の業務だけでなく全社的な業務効率化を生むことができるチャンス」と指摘。業務や部署を超えた全体最適の観点からも可視化・標準化を進めていくため、RPAをBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)のツールと一体で運用していくプランを提案した。

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