IT資産管理ツールの導入状況(2021年)/後編
後編では、現場で実際に発生したIT資産管理にまつわるトラブル事例や、今後ツールに期待する機能や意見を中心に現場の生の声を紹介する。ツールへ期待することとして、Microsoft製品の対応に関する声も見られた。
キーマンズネットは、2021年9月27日〜10月15日にわたって「IT資産管理ツール」に関するアンケートを実施した。前編では、全体の約6割が「勤務先でIT資産管理ツールを導入している」とし、ツールの導入ポイントとして、コストよりも運用のしやすさやセキュリティ機能を重視する傾向にあることに触れた。また、場所を限定しない働き方が進むことで、クライアント端末の適切な管理に意識がより傾き、IT資産管理ツール未導入企業の導入契機ともなるのではと考えられる。
後編では、IT資産管理ツールを利用する企業で実際に発生したトラブル事例や、今後ツールの期待する機能など、利用者から寄せられた現場の生の声を中心に紹介する。管理ツールへの要望では、Microsoft製品の対応に関する声もあった。
全回答者数225人のうち、情報システム部門が32.0%、製造・生産部門と営業・販売部門が同率で16.4%、経営者・経営企画部門が8.0%などと続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
「離れていても業務状況を把握したい」に応える機能のニーズも
まずは、前編に引き続き、IT資産管理ツールの利用実態について詳しく見ていく。
「IT資産管理ツールで利用している(する予定の)機能」について聞いたところ、「ライセンス管理」(59.7%)、「資産台帳作成」(48.7%)、「ログ収集・監視」(48.7%)、「ソフトウェア配布」(45.5%)、「クライアント構成維持・管理」(40.3%)などが上位に続いた(図1)。
オフィス外で働く機会が増えるとともに、PCやスマートフォン、モバイルWi-fiなど従業員に貸与する端末は増加し、ソフトウェアライセンスを含めたIT資産の適正管理の必要性も増す。また過重労働や健康管理の観点で、テレワークや在宅勤務中の業務状況を見える化をしたいというニーズもよく聞かれる。「ログ収集・監視」機能が上位に位置するのは、PCやアプリケーションの操作ログを勤務実態の把握に生かそうと考える表れでもある。
ステータスは「廃棄」、でもまだ使われたいた……
IT機器の運用面だけではなく、情報漏えいやソフトウェアライセンス違反のチェックなど、コンプライアンス順守の面でもIT資産管理ツールの導入効果が期待される。次に、過去にIT資産管理にまつわるトラブルが発生したことがあったかどうか、また発生したトラブルについて詳細を聞いた。
結果を見ると、全体の約3割でトラブルが発生した経験が「ある」との回答を得た(図2)。2019年4月に実施した調査ではトラブル発生率が11.7%だったため、約2年で3倍近く増加したことになる。
発生したトラブルについて詳細を聞いたところ、「(誰が利用しているか分からない)迷子端末が発生した」「(管理台数が)実数と合致しない」など正確なIT機器管理に支障が生じたといった声が目立った。
また「廃棄と登録されていた機器が実はまだ利用されていて、再登録する羽目になった」や「既に廃棄されたと思われたマシンが今もまだ利用状態にあると登録されており、マシンを探すが見当たらず、時間を要した」などのヒヤリハット事例も寄せられた。
その他、リモート下での監視やPCのパフォーマンス低下を気にしてか「従業員が管理ツールを削除する、無効にする」ケースもあるようだ。セキュリティリスクの最小化を果たすためにも、従業員のリテラシー向上と合わせた運用が重要になりそうだ。
「Microsoft製品の変更対応やリモート制御」ツールへの要望
最後に「今後IT資産管理ツールに求める機能」について、フリーコメント形式で回答を求めたところ、最も多かったのが「Windows 11」のアップデート管理に関する要望だ。
多いものとして「Microsoft製品のバージョンアップの自動化。日々の変更や更改に付いていけていない」や「Windows 11のアップデート管理を含むファイル管理」などの声があった。Windows 11ではアップデートサイクルが変わり、Windows 10では大型アップデートは年に2回だったがWindows 11では年1回になった。こうした変更はIT部門のバージョン管理業務にも少なからず影響するものだ。
次点ではテレワークに関連する要望が目立った。「各デバイスの個体管理、更新管理」「テレワークで利用している個人端末も把握したい」「GPS機能」など、リモート下での適正な管理、監視ニーズが高まっている様子がうかがえる。加えて「認定機器以外の外付けデバイスの無断接続制御」「リモートコントロール」といったリモート制御機能を要望する声や、「文書管理ツールとの連携」「勤怠システムなど他システムとの連携」などの意見も多く見られた。
その他「素人でも分かる使いやすさ」「簡単な操作性」など使い勝手に関する要望や、「ログ収集の軽量化」「データ量(通信、保管ともに)の削減。(IT資産管理ツールの利用において)CPUなどPCリソース負荷の軽減」などネットワークやメモリ負荷の軽減を求める声もあった。
意見の中には「OSのバージョンアップのロードマップを示し、優先度や実施時期、工数などを管理できる機能」や「各機器の棚卸情報の一元管理と棚卸進捗(しんちょく)を表示し、ユーザー拠点や経理部門と共有できる機能」「機器に貼付するラベル発行機能」「ハードウェアの故障可能性、ソフトウェア脆弱(ぜいじゃく)性の可視化サービス(他社を含む同型機の利用状況をデータ化)」といった具体的かつ実効性の高そうなアイデアもあり、今後のIT資産管理ツールの機能拡張に期待したいところだ。
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