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プロジェクト管理ツールの利用状況/前編(2021年)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を背景とした働く環境の変化によって、プロジェクトの進捗管理やタスク管理の難易度は増している。テレワークシフトによって生じたプロジェクト管理のトラブルとは。

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 キーマンズネットは2021年10月8日〜10月22日にわたり「プロジェクト管理ツールの利用状況」に関する調査を実施した。調査からは、コロナ禍で働く人の顔が見えにくくなったことで、チームメンバーのコミュニケーションや情報共有、進捗管理の難易度が高まっている状況が見て取れた。回答者からは「タスクの投げ合いが発生した」「PMが逃げた」など“怒りの声”が届いている。

 なお、本稿で取り扱うプロジェクト管理ツールとは、利用部門を限らず、目標や納期、チームのタスク、プロジェクトの進捗などを管理するものを指す。

約8割がプロジェクト管理で失敗した経験あり、原因は?

 プロジェクト管理ツールの導入状況に触れる前に、ツール導入の動機となるプロジェクト管理の難所について見てみよう。

 まず自身が関わったプロジェクトで「スケジュール通りに進まない」や「予算を超過した」といった“失敗経験”があるかを聞いたところ、83.0%と大多数が「ある」と回答した(図1)。プロジェクトが“失敗した”と思われるようなトラブルが発生する要因としては「時間か、予算か、人的リソースの見積もりが甘かった」57.7%と最も多く、「関係者とのコミュニケーション不足」(56.3%)や「リスクマネジメントができていなかった」(47.9%)「プロジェクトマネジャーの能力、経験が不足していた」(47.9%)が続いた(図2)。


図1:プロジェクトに失敗した経験の有無

 従業員規模別の回答ではこれら上位に挙げられた失敗要因の順位が前後している。101人以上の中堅企業・大企業帯では、「時間や予算、人的リソースの見積もりの甘さ」の割合が最も多く、100人以下の中小企業帯では「PMの能力や経験不足」の回答率がトップだった。ただし2番目に高い割合を示した項目は、どの企業帯も「コミュニケーション不足」だ。コミュニケーションがプロジェクト成功の可否に大きく関わることが確認できた。


図2:プロジェクト失敗の要因

タスクの投げ合いにサービス残業常態化、PM逃亡……コロナ渦の実録トラブル

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を背景とした働く環境の変化によって、プロジェクトの進捗管理やタスク管理の難易度は増している。テレワークシフトによって生じたプロジェクト管理のトラブルをフリーコメントで聞いた。

 多く挙げられたのは、社内外で対面コミュニケーションの機会が制限されたことによって業務の平準化が難しいという悩みだ。「クライアントからの急なオーダーに対して、チーム内での情報共有がうまくいかず、結局窓口となっている従業員が1人で対応せざるを得なかった」や「各人の業務負荷が見えにくい上に、リソース不足からタスクの投げ合いが発生し、非協力的な関係性が増長した」など、メンバーの負荷に偏りが生じた事例が報告された。

 こうした状況の回避や改善を担うはずのPMも「顔が見えない」状況でのプロジェクト管理に苦心しているようだ。「PM側からすれば、情報収集の打ち合わせ回数が増えて、時間をとられる」や「表情が読めないため、相手が考えていることが分からず業務に影響が出た」という声が寄せられた。中には「見積もりが甘く、プロジェクトに関係ない人の実工数を知らないうちに(金額として)上乗せされ、PMが逃げた」というショッキングな事例もあった。

 他にも「出社人数が制限され、試作納期が遅延した」に見られるように、コロナ禍で半ば強制的に始まった新しい働き方に対する順応が追い付かずに、スケジュール管理が難航したという声が挙がっている。

 その他、プロジェクトにどのような支障をきたしたのかは伏せられているものの、プロジェクトの進行を妨げるような事象が幾つも報告された。「取引先の現場現物が見られない」「協力会社の作業環境が整備されていない」など社外パートナーとの情報共有で不都合が生じた事例や「サーバへの負荷が増大し、通信が止ってしまう」「デバイスの取扱が不慣れな人に時間を取られる」などIT環境の変化に伴って業務が滞った事例はそれらのほんの一部にすぎない。「会社及び上司の怠慢でテレワーク時の従業員の残業を管理できず、サービス残業が横行している」といった怒りの声も届いている。

プロジェクト管理ツールの導入率は?

 プロジェクトを円滑に進行させるには、社内外のステークホルダーがスムーズに情報を共有するための仕組みやツールが不可欠だが、こと「メンバーの顔が見えにくい」コロナ禍でその重要性は高まっている。メンバー同士のコミュニケーションや情報共有、PMのタスク管理や進捗管理を支援する各種機能を提供するものとしてプロジェクト管理ツールがあるが、どれほど導入されているのか。

 現状は「導入している」とした回答者は29.0%で、全体の3割にとどまった。一方で、「検討中」(9.7%)と「必要性を感じる」(41.7%)を含めると過半数がツールを必要だと感じていることが分かる(図3)。


図3 プロジェクト管理ツールの導入状況

 関連してプロジェクト管理ツールを「導入しない」とした回答者にその理由を聞いたところ、「対象となるプロジェクトがない」(49.0%)、「表計算ソフトで十分」(33.3%)、「運用、導入コストが高い」(31.4%)が上位に挙がった(図4)。これらの多くは100人以下の中小企業に属する回答者から寄せられたものだが、近年はSaaSを中心に低価格帯のツールも提供されている。状況に応じてプロジェクト管理ツールの導入を視野に入れることも検討したい。

 本アンケートの全回答者数268人のうち、情報システム部門が39.6%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が15.7%、製造・生産部門が15.3%、経営者・経営企画部門が6.4%などと続く内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。


図4 プロジェクト管理ツールを導入しない理由

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