事例で分かるAI×RPAの現在地 非定型業務の自動化はどこまで進んだ?
「非定形業務の自動化は難しい」――そんな悩みを解消するため、UiPathはAIで人手が必要な作業の自動化を試みる。「UiPath AI EXPO 3.0」で同社のエバンジェリストが語った事例を基に、非定型業務を自動化する方法を解説する。
RPA(Robotic Process Automation)とAI(人工知能)の組み合わせによる自動化は、AI-OCR(光学的文字認識)が紙文書から必要なデータを自動で業務システムに入力をするように、人手が必要な作業を減らすことで成功してきた。しかし、その先の自動化ではテキスト自動認識にとどまらない判定や判断が必要になる。UiPathはユーザーがAIを自由に活用できる仕組みを提供し、非定型業務の自動化を進める。
AIが頭脳でRPAが手足、両方の連携で自動化を実現
RPAによる自動化のプロセスに人間の作業が介在することで、業務を十分に効率化できないことがある。そこで、人間の判断や判定、分類などの知的作業をAIに担わせようという機運が高まっている。
UiPath のエバンジェリスト鷹取 宏氏は、「AIには判断や分析をする頭脳の役割を果たすものもあれば、耳のように音声を認識するもの、顧客との対話を認識して対話するもの、画像やテキストを認識する目の役割を持つものがある。AIの処理結果を、RPAは既存システムや汎用パッケージ、IoTなどに連携する。AIという頭脳に対してRPAは手足の役割を果たすことができる」と述べる。
しかし、人間の業務をAIに置き換えるには多くの労力とコストがかかり、その投資を上回る効果が最初から期待できるとは限らない。UiPathは、AIの精度が完璧でなくとも、人間が一部介在するRPAプロセスで業務自動化を進め、AIにフィードバックを繰り返して「賢く」することで、人間の介在部分を徐々に少なくしていく考えだ。同社がRPA×AIで実現する非定型業務の自動化事例を紹介する。
RPA×AIによる2タイプの業務自動化
RPAとAIによる業務自動化は、「RPAプロセスにAIを投入して自動化するもの」と、「優れたAIにRPAを組み入れて自動化を拡張するもの」の2つのタイプが紹介された。
1つ目の「RPAプロセスにAIを投入する自動化」では、定型作業をRPAが担い非定型処理を人が行う。そして、"ちょっと賢いAI"を実装したRPAが定型の自動化領域を拡張していくことで、人間の作業を少しずつ減らせる。AIの処理結果を人が確認してAIにフィードバックすることで、AIをより賢く育てることも可能だ。
具体例として、AIが解約リスクがある顧客を予測し、RPAが自動で積極的なアプローチをした例が挙げられた。顧客の購入履歴やアプリログ、顧客マスター情報などのCRM上データを集計した後、「ちょっと賢いAI」がそのデータを基に、3カ月以内に解約する可能性のある顧客を分類する。解約の可能性がある顧客に対し、マーケティング部や営業部が適切なチャネルやコンテンツを選定し、RPAを利用して施策を実行する。施策の結果をフィードバックすることでAIを継続的に賢くできる。
2つ目の自動化は、"優れたAI"にRPAを組み入れて自動化を拡張する方法だ。AIによる処理結果を業務に落とし込む際、自動化が困難だったりROI(投資対効果)が出なかったりする場合に、RPAによってAIの処理結果をシステムに連携させることで自動化の範囲を拡張できる。また、1つ目のタイプと同様に、フィードバックを通してAIを育てることも可能だ。
具体例として、転売サイトに自社製品が掲載されているか継続的にチェックし、必要に応じて自動化プロセスによる削除依頼をしたり、市場を調査したりするものが挙げられた。RPAを用いて製品情報やマーケティングキーワードで転売サイト内を検索し、写真データやユーザーのデータ、ページURLなどの情報を抽出する。抽出した情報や写真データを類似検索AIで分析して、類似度のスコアリングをする。最後にスコアリング結果を人間が確認し、必要ならコンテンツ削除を依頼する。削除依頼には製品写真やURLも添える必要があるが、削除依頼プロセスをRPAによって自動化することも可能だ。
このプロセスで得られたデータをRPAで集計し、BIツールに連携することで、トレンドや類似製品の分析、市場レポート出力による製品開発への応用も可能だ。
「AI Center」で最適なAIを手軽に入手
RPA×AIによる自動化で活躍する「ちょっと賢いAI」は、UiPathのAI利用支援サービス「AI Center」と、同社の既存AIサービスで運用できる。AI Centerは、AIモデルをカタログのように閲覧でき、そこで選択したAIをRPAプロセスに組み込み、プロセスに実装できるツールだ。例えば、回帰分析、需要予測、在庫予測などテキスト分類をするAIモデルや、画像の中から目的のものを検出する物体検出AIモデルなどがラインアップされている。その他にも多くのAIモデルが用意されており、活用事例は多い。
AIモデルの構築にはコストも時間もかかりノウハウも必要だが、あらかじめパッケージ化されたAIモデルはデプロイが簡単で、RPAを用いている現場への適用や管理、継続的な改善も、自動化による運用が可能だ。なお、2021年の新機能ではAIに対する再学習が完全に自動化されるなど、AI Centerの機能開発は進んでいる。2021年10月からはAIモデルのマーケットプレースが開始され、コミュニティー内でモデルの販売や購入が可能だ。また、AI Centerから入手できるAIモデルに限らず、多くのテクノロジーパートナー製品を手に入れることができる。
鷹取氏は、「AI Centerは業務自動化におけるライフサイクル管理のための統合プラットフォームになるでしょう。また、RPAとAIの活用に対して不安があるユーザーには、2021年12月末まで"UiPass AI Clinic"といった専任チームにより、自動化へのサポートを提供します。自動化が可能な業務を調査するところから、自動化の範囲を拡張する段階的な取り組みまでを支援します」と述べた。AI利活用を含む業務自動化のアイデアはすでに多く提案されているが、RPAベンダーならではの実際的な改善提案に期待ができそうだ。
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