2030年には国内で最大79万人不足 IT人材採用難の対処策
日本でも2030年に最大79万人が不足と予想される「IT人材不足」の課題。深刻化する問題に企業はどう立ち向かうのか。最新の調査結果を紹介する。
業種業界を問わず「IT人材不足」が問題となっている。世界中でデジタル化が加速し企業のデジタル戦略に期待が高まる一方で、IT部門の業務範囲は拡大し、年々人材不足の課題は深刻化している。
IT人材の不足は、日本国内でも深刻な課題だ。情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書2020」によると、日本国内で、2030年に最大で79万人のIT人材が不足すると予測される。
深刻化する人材不足の課題に企業はどう立ち向かうのか。最新の調査結果を紹介する。
3人に1人の経営幹部があの技術に着目
国内では上記のような課題があるが、業界への投資が先行している米国ではどのように取り組んでいるのだろうか。
コンサルティング企業West Monroeの「四半期経営者世論調査」(年間収益2億5000万ドル以上の企業の経営幹部150人を対象に調査)によれば、経営幹部の3分の1が、IT人材不足に対処するため自動化技術に目を向けている。
West Monroeのマネージングパートナーであるマイク・ヒューズ氏によると、「企業は自動化技術によって効率化できる冗長な作業を取り除くことができるか評価しようとしている。例えば、AI(人工知能)や機械学習といった技術を活用するために不可欠なデータの準備作業や、ベンダーへの支払いなどを含む経理業務の効率化では既に初期の成功を収めている」と分析する。
また、「次の四半期に従業員の採用を増やす予定」とする経営幹部の10人に7人は、IT人材の採用難に直面している。そこで、経営者たちは雇用問題に対応するため、賃金の引き上げを計画している。
さらに、半数以上の経営者が、雇用における地理的な障害を解消しようと考えている。IT人材は先に挙げた自動化技術の活用や業務効率向上を推し進めるにあたって重要な役割を担うためだ。
IT業界団体のCompTIAが分析したデータによると、2021年9月の米国内の技術職の求人情報は29万5000件に達した。IT職の失業率はわずか2.2%で、熟練したIT人材に対する需要が高いことを示している。
しかし、自動化だけで、既存の従業員たちが新たな役割や追加の業務を引き受けるのは難しい。
「自動化を導入した場合でも、時間の余裕ができたスタッフに期待通りの仕事をこなすスキルセットがあるかどうかを確認する必要がある」とヒューズ氏は話す。
従業員自身もまた、スキルアップをすればキャリア上の潜在的利益がもたらされることを理解する。米国のIT系出版社O'Reillyのデータによると、ITプロフェッショナルの10人に6人が、過去1年間に昇進や昇給を求めながら、トレーニングを受けたり資格を得ようとしたりしていた。
自動化で企業に業務効率化のメリットをもたらすためには、採用の障壁を克服する必要がある。プロセスを可視化するバリューストリームマッピングに取り組めば、企業プロセス全体のボトルネックがどこにあるかを特定すると同時に、自動化が最大限の効果をもたらすタスクは何か確認するのに役立つ。
ヒューズ氏は、労働市場の逼迫(ひっぱく)に苦慮する経営幹部が自動化だけに頼るのではなく、企業がIT人材を魅了し、IT人材に自社で働き続けてもらうための戦略の組み合わせの追求を推奨している。「現状においてバランスを取ることが重要だ」と同氏は話す。
出典:1 in 3 C-suite execs automate processes to tackle hiring crunch(HR DIVE)
※冒頭のIPAによる情報の引用および国内の状況についてはキーマンズネット編集部で加筆した。
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