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iPaaS(Integration Platform as a Service)の利用状況(2021)/前編

近年、「iPaaS」(Integration Platform as a Service)という用語を頻繁に耳にするようになった。システム連携のコストや工数削減を実現するものとして、また業務自動化のあらたな一手として期待を集めているiPaaSの現在地をさぐる。

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 キーマンズネットは2021年11月19日〜12月11日にわたり、「iPaaS(Integration Platform as a Service)の利用状況」に関するアンケートを実施した。iPaaSとは、オンプレミスやクラウドの別を問わず、複数のシステムの統合に必要な各種機能を提供するクラウドサービスを指す。

 近年、「iPaaS」という用語を頻繁に耳にするようになった。その背景にはSaaSとSaaS、あるいは既存のオンプレミスシステムとSaaSを連携させたいというニーズの高まりがあるようだ。iPaaSは、これらのシステム連携に必要なデータの抽出や加工の機能をクラウドサービスとして利用できること、さらにローコードでの開発が可能であることから、システム連携のコストや工数の削減、難しさの解消が期待されている。

 米国では既に導入が進むiPaaSだが、日本ではどれほど認知されているのか。前編となる本稿では、導入率や認知度、期待する効果などを明らかにする。

増加するSaaS利用のウラで複雑化する業務プロセス

 コロナ禍を機に業務のオンライン化が進み、SaaSの利用が拡大した。場所を選ばず働ける環境が整いつつある一方で、業務プロセスにまつわる新たな課題が発生している。近年のシステム環境の変化によって発生した業務プロセスの課題を聞いたところ、「基幹システムのデータとSaaSのデータを機動的に連携できない」(49.2%)、「刷新できないレガシーアプリケーションが数多くあり、UXや生産性が低下している」(25.9%)、「SaaSの導入が進んだことで、アプリケーションが乱立して業務プロセスが複雑化している」(23.0%)という順に課題が挙がった(図1)。

 企業規模別に回答を見ると、1001人以上の大企業では57.4%が「基幹システムのデータとSaaSのデータを機動的に連携できない」ことを問題視している。比較的規模の大きい企業においては基幹システムに蓄積してきたデータとSaaSのデータを機動的に連携させてタイムリーな事業運営やサービス開発につなげたいとするニーズが高まっているが、API化されていない基幹システムを連携させるための工数やコスト、技術的な難しさが壁になっているという話も聞く。


図1:SaaS普及による業務プロセス上での課題

海外では導入が進むiPaaS、日本の認知度は?

上記の課題に対し、iPaaSは複数システムの統合に必要な機能を提供するクラウドサービスとして解決の糸口を提供する。主に欧米を中心に利用が進んできたが、日本での利用状況はどうか。

 「導入している」とした回答者は7.4%と全体の1割にも満たない。企業規模別で回答を見ると、1001人以上の企業における導入率が最も高いが、数字の上では13.0%と爆発的に普及しているわけではない(図2)。


図2 iPaaSの導入状況

 iPaaSの認知度に関する質問では、「名前は聞いたことがあるが何をするものかは知らない」(44.3%)が最も多く、「聞いたことがない」(38.5%)、「具体的に何をするものか知っている」(17.2%)が続いた(図3)。この回答を見てもiPaaSは黎明期にあると考えられ、その用途やメリットが広く認知されるまでには至っていないようだ。特に、企業規模が小さくなるにつれて、認知度が低い傾向にあった。

 SaaSは初期コストや導入工数が比較的低い傾向にあることから、企業規模問わず導入が進んでいる。こうした状況を鑑みると、中堅・中小企業においてもSaaSの連携ニーズは高いはずだ。今後、日本における事例が公開されるにつれて、導入が進む可能性もある。

 なお、全員を対象にした回答を見ると、「導入していないが具体的な導入に向けて検討中」(5.7 %)や「導入していないが興味はある」(30.3%)を合わせて36.0%の回答者が何らかの関心を寄せているようだ。


図3 iPaaSの認知度

iPaaSに期待する効果は? 自動化ツールの新たなスタンダードになるか?

 iPaaSを「導入済み検討中、興味があると回答した方に対して、期待できる効果について聞いたところ、「システム連携のコストの削減」(54.7%)、「業務プロセスの自動化と生産性の向上」(47.2%)、「データ管理の省力化」(39.6%)、「システム連携の開発スピードの向上」(32.1%)、「組織横断的な業務プロセスの自動化」(24.5%)と続いた(図4)。

 「システム連携のコストの削減」や「システム連携の開発スピードの向上」について、iPaaSはローコードで連携プロセスを開発できることから、SIerなどを巻きこんだ大規模なプロジェクトを立ち上げることなくシステム連携を実現できる場合がある。iPaaSの導入費用はベンダーによってまちまちだが、クラウドサービスとして機能を利用するという特性上、大規模な連携プロジェクトと比較してコストメリットが得られるようだ。内製化が促進されることで、連携スピードの向上にも資するとされる。

 また、「業務プロセスの自動化と生産性の向上」「組織横断的な業務プロセスの自動化」など、自動化をキーワードにした項目にも回答が集まった。日本においては、業務の自動化を実現するツールとしてRPAの注目度が高いが、人間のデスクトップ作業をシナリオとして倣うRPAと比較し、API連携をコア技術とするiPaaSはデータの連携スピードが格段に速いという特徴がある。また、RPAのようにシステムのUIが変更したことでロボットが止まるといったこともない。こうしたメリットによって、近年はRPAの弱点を補完し、組織的な業務プロセスの自動化に貢献する自動化ツールとして注目を集めている。

 関連してiPaaSを適用したい業務についてフリーコメントで聞いた。最も多かったのは基幹システムに蓄積したデータをシステム連携によって活用したいというニーズだ。具体的には「社内システムの顧客データとクラウド上のデータ連動」や「基幹システムとMAとの連携」が挙がった。用途としては「過去の営業記録および実績関連データの活用」や「売掛金回収消し込み、支払管理、調達納期管理」「営業情報のプロジェクト情報(売上高や工数など)を実際のプロジェクト管理と連動させる」といったニーズがあるようだ。

 その他、SaaS間で連携することでデータの統合を自動化させ、業務効率の改善に活用したいといった声が挙がった。「取引先企業からの伝票や納品書データ等のDB化」や「複数システムへのユーザー登録を一括で行いたい」「勤怠管理と工数管理など複数の業務アプリケーションの間のデータ受け渡しを行う」などがその例だ。

 こうした業務自動化ニーズはテレワークの広がりも相まって急伸し、RPAを筆頭にソリューションも増え始めている。後編では“業務自動化”に着目し解決策としてのiPaaSの導入ニーズをさぐる。


図4 iPaaSの導入によって期待できる効果

 なお、全回答者数122人のうち、情報システム部門が27.9%、営業・販売部門が16.4%、製造・生産部門が15.6%、経営者・経営企画部門が13.2%と続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

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