企業の14%がテレワーク従業員をこっそり監視中、違法を主張できるのか?
テレワークを実施する企業によっては、従業員の働きぶりを専用のシステムなどで監視している。時には「従業員に通知することなく」そうした監視を実施しているが、プライバシーの侵害には当たらないのか。
テレワークを実施する企業によっては、従業員の働きぶりを把握するために「カメラをonにさせる」「メールの内容やWebの検索履歴を監視する」といった施策を実施している。だが、こうした監視は従業員にストレスを与え、生産性を下げるといったデメリットを引き起こす可能性がある。さらに、日本においては、メールや検索の内容、住居内の様子などを企業が収集することは場合によって「プライバシーの侵害」に当たる場合がある。
企業の14%がテレワーク従業員をこっそり監視 SNSの監視は合法か?
テレワーク中の従業員の監視は、国内でも議論すべきテーマとして話題に上がるが、海外ではどのような見方がされているのか。HRに関するニュースを取り上げる「HRDive」のに寄せられた以下の質問に対し、米法律事務所Fox Rothschildのパートナーであり、同社のプライバシーおよびデータセキュリティプラクティスの共同チェアであるマーク・マクリーリー氏は次のように回答した。
Q:HR業界では、監視ソフトウェアの人気が高まっているようだ。これはどのような場合に合法と見なされるか?
A:従業員のWebブラウザを監視する、キーストロークを記録するなどの監視形式は、米国の「通知アプローチ」に照らすと合法だ。一方、プライバシー権の観点からは、「同意アプローチ」が必要になる。
「事前に通知するほうがアプローチとして適切であることは間違いないが、全てのケースにおいて絶対的な要件ではない」とマクリーリー氏は言う。
「雇用主が従業員に、電子メール、インスタントメッセージング、Webブラウジング、会社が提供したラップトップの使用など、業務のために提供する全てのリソースを監視する権利があることを事前に通知している場合、通常はその通知だけで十分だ。その通知は、従業員ハンドブックに記載したり、従業員がPCにログインするたびにログイン画面に表示したりという方法で明示する」(マクリーリー氏)
マクリーリー氏は、このアプローチがベストプラクティスであると考えていると付け加えた。
中小規模の法人向けにさまざまなサービスのレビューを提供するDigital.comの調査では、従業員監視に関して、雇用主の回答者の14%が「監視していることを従業員に伝えていない」と述べている。背景には、従業員に監視を通知する必要がない法域(管区)の存在がある。「判例法は異なるかもしれないが、一般的に言えば、監視対象のサービスや機器が企業から提供されているものである限り、雇用主は通知する必要がないことを強く主張する傾向にある」とマクリーリー氏は述べる。
個人の電子メールやプライベートソーシャルメディアアカウントに関する行動を、雇用主が業務用のラップトップで監視できるかどうか、または監視すべきかどうかという問題は、判断が「はるかに困難」だとマクリーリー氏は付け加えた。法的には監視できないとされており、雇用主は従業員に個人の電子メールまたはTwitterアカウントのパスワードを提供することを強制できない。しかし、企業が提供する機器を使った全ての活動を監視する通知があれば、雇用主は業務と無関係な活動の監視も主張できる。
「問題は、従業員が特定の状況でプライバシーを求める権利を持っているかどうかということになる」とマクリーリー氏は述べ、「会社が提供するラップトップでプライバシーを期待することは、私の見解では勝ち目のない議論だ」と結論付けた。
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