テレワークのIT環境調査、満足度の高い通信環境とは?
在宅勤務のIT環境調査では、固定ブロードバンド回線よりも利用満足度の高い回線の存在や自宅での回線通信費を全額会社負担する動きなどが明らかとなった。
IDC Japan(以下、IDC)は2022年2月3日、国内企業900社を対象に実施した「2022年企業ネットワークサービス利用動向調査」における"Branch of One"に関する調査結果を発表した。"Branch of One"とは、オフィスのIT環境を在宅勤務者の自宅へと拡張する取り組みのことで、オフィスと遜色ないネットワークやセキュリティ、そして企業の費用負担などが求められる。
本調査は、在宅勤務における利用回線種別ごとの満足度やセキュリティ技術の導入状況、在宅勤務用のブロードバンド回線の会社負担の実態などについて調査したものだ。
有線/無線と回線の組み合わせ別満足度
調査結果によると、"Branch of One"の重要な要素である在宅勤務用のブロードバンド回線として、「ある回線」の満足度の高さが明らかとなった。通信環境の安定しやすい固定ブロードバンド回線よりも満足度が高いことから今後の利用拡大が見込まれる。
5G回線を無線や有線のLANと組み合わせて利用している回答者のうち、約7割が「満足」または「概ね満足」と回答し、この比率は固定ブロードバンド回線よりも高くなった。
IDCによると、モバイル回線として従来の主流だった4Gのみならず、通信品質が安定しやすい固定ブロードバンド回線と比べても高い満足度になっており、5G回線の在宅勤務での利用拡大の可能性が明らかとなった。
在宅勤務の実施率や、在宅勤務に特化したセキュリティサービスの導入率は、従業員規模では大企業がより高い傾向となり、産業分野では「情報サービス/通信/メディア」「流通」「金融」で進んでいることが分かった。具体的には、従業員の一部でも週1回以上の在宅勤務を実施している企業の割合は、従業員数1000人以上の大企業で93.7%、業種別では「情報サービス/通信/メディア」が93.3%、「金融」が82.4%、「流通」が81.8%となり、その他のセグメントよりも高い結果となった。これらの業種についてはセキュリティサービス導入状況についても同じ傾向が見られ、EDR(Endpoint Detection and Response)、CASB(Cloud Access Security Broker)、クラウドWebプロキシなどの導入割合が高かった。
また、一部の業種では、在宅勤務用の通信回線費用を会社が負担する動きも広がっている。「ブロードバンド回線費用を全額負担する」と回答した割合は、在宅勤務を実施している企業全体で見ると37.8%だが、業種による差が大きく、金融業は約5割が全額負担をしており他の業種よりも高くなった。
調査結果を受け、IDC Japanのコミュニケーションズ リサーチマネジャーの山下頼行氏は「通信事業者や在宅勤務ソリューションを提供するベンダーは、通信回線やセキュリティサービスなどの在宅勤務のためのIT環境に必要な要素を、オフィスのIT環境を自宅へ拡張する"Branch of One"という概念を用いて整理し、需要の大きな企業セグメントを見極めて提案すべきである」と述べた。
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