結局対面が一番? コミュニケーションツール選びの「オンとオフ問題」で割れる価値観、愛されるツールは
コミュニケーションツール選びの意見は組織内や従業員間でも分かれ、価値観の違いが浮き彫りになる。企業と従業員はオンラインとオフライン、業務のオンとオフをどう切り分けたいと考えているのか。
キーマンズネット編集部は2022年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「テレワークインフラとデバイス管理」「従業員コミュニケーション」「オフィス」「デジタルスキル」「人事制度」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2021年11月10日〜12月11日、有効回答数678件)。企業における2022年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。
第3回は「従業員コミュニケーション」の調査結果を紹介する。コミュニケーションにおける「オン対オフ」をどう捉えるか、価値観の違いをすり合わせるのが難しい状況や、新しい文化がうまく浸透している組織の属性が見えた。
コミュニケーションを円滑化する「顔が見える組織」の特徴とは
コロナ禍をきっかけにコミュニケーションのオンライン移行が進んだ。今後は、オフラインとオンラインのハイブリッド化が進むだだろう。非対面コミュニケーションをサポートするツールは数多いが、それらは「対面並み」の体験を提供できているのか。
まずコミュニケーションの「オンラインとオフラインの割合」についておおよその感覚値を聞いたところ、全体のおよそ4割が「コミュニケーションの50%以上がオンライン」と回答した。
この結果を従業員規模別に見ると「オンラインコミュニケーションは10%未満」と回答した割合に大きな差が見られた。従業員数10人以下の企業は44.9%と半数近くが10%未満と回答した一方、1001人以上の企業では約6%にとどまった。
一方で、従業員数10人以下の企業の32.7%は「50%以上がオンライン」と回答した(全体では43.2%)。ほぼオンラインコミュニケーションを利用しないグループと積極的に活用するグループに二分される状況が見て取れる。
オンライン移行が可能な環境においても、小規模の組織では「できれば対面で、顔を見て」のコミュニケーションが「選ばれている」様子が見える。
対面の割合が高い組織ほど従業員コミュニケーションに満足
次いでコミュニケーションツールの浸透によって社内に起きた変化について複数回答で聞いたところ、最も多かった回答は「不便はあるが慣れた」(39.8%)だった。特に1001人以上の企業ではおよそ半数が「慣れた」を選択したが、いずれの規模でも「慣れた」と回答した割合の2分の1〜3分の1程度は「不便を我慢してしまう」という回答があった(全体では15.6%)。「現状がベストだと感じている」と回答した割合は全体では16.4%で、従業員数10人以下のグループでは34.7%が選択していた。つまり、対面の割合が高い組織ほどコミュニケーションに満足しているようだ。
コロナ禍以降のビジネスを「もう対面に回帰することはないだろう」と予測する声は多いが、業務の現場には「やはり対面が良い」という感覚があるのかもしれない。昨今の「通勤回帰/テレワーク離れ」は、企業と従業員が共に「非対面では対面コミュニケーションほどの満足度や生産性を得られない」と判断した結果とも言える。
「LINE使いたい/使いたくない」が象徴、仕事の「オンとオフ」の価値観
従業員コミュニケーションにおいて使用するツールの種類を聞いたところ、公式で使われているツールと非公式で使われているツールに大きな違いがあった。
具体的には、公式ツールでは「Microsoft Teams」を利用する割合が最も高く65.0%、次いでコロナ禍で急進した「Zoom」は57.5%だった。コロナ禍以前から企業に普及していた「Cisco Webex」(18.4%)や「Skype for Business」(11.5%)も利用は続いており、SaaS型ツールの普及によってコミュニケーションの手段が増えているようだ。
非公式ツールで最も多かったのが「電話」(53.8%)だった。次いで「LINE」(44.1%)と個人メール(29.8%)が多く、個人で利用するコミュニケーション手段を業務でも利用するのが「当たり前」になっている状況が見えた。
最後に業務で使うコミュニケーションツールについてフリーコメントで所感を聞いたところ、特に「仕事とプライベート」の切り分けに関するさまざまな意見が寄せられた。象徴的だったのが非公式ツールとして最も多く使われていたLINEの扱いで、「プライベートで使っているため集約したい」という声と「プライベートと切り分けるために使いたくない」という声がそれぞれあった。
特に、公式ツールとして一番人気だったTeamsと比較して「Teamsは重いため、LINEのほうが使いやすい」という声が目立ち、ビジネス用のリッチな機能がユーザーの負担になっている状況が見える。また、ZoomとLINEには共通して「セキュリティ面が不安」という反対意見があり、過去の事例からユーザーに疑心暗鬼が残っていることも分かった。
また、公式では0.7%、非公式では1.5%が使っていた「Discord」に関してはフリーコメントで「使いやすい」「公式ツールにしてほしい」といった好意的な意見が目立ち、ユーザーに愛されている様子が見えた。
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