Apple幹部もヒヤリ? 「M1 Ultra」が実はそんなにウルトラじゃない疑惑:654th Lap
2022年3月9日に開かれたAppleの発表会で注目を集めたのが、「Mac Studio」に搭載可能な「M1 Ultra」だ。国内のApple公式Webサイトでは「最強のパワースポット」とうたうが、「実は最強と言えないのでは?」との疑惑が持ち上がった。
2022年3月9日、Appleは春の恒例行事として幾つかの新製品を発表した。3世代目の「iPhone SE3」やアルパイングリーンが追加された「iPhone 13」に加えて、新チップ「M1 Ultra」が搭載された「Mac Studio」とそれに合わせた27インチの5Kディスプレイ「Studio Display」などだ。
特にMac Studioはコンパクトな筐体に強力なチップを搭載し、大きな注目を集めた。Appleの公式Webサイトでは「最強のパワースポット」という製品コピーで大々的に紹介されているが、どうやら、ある点で「最強とは言えないのでは?」とのうわさが流れている。Appleも思わずヒヤリとするそのうわさとは?
新たなMacシリーズとして登場したMac Studioは、「Mac Mini」をほうふつとさせる小型でシンプルな筐体ながらも、Appleのデスクトップ機として「Mac Pro」に次ぐ性能を誇る。
購入時に「M1 Ultra」もしくは「M1 Max」のいずれかを選択可能だ。どちらもAppleが開発した独自チップで、CPUとGPU、そしてユニファイドメモリを統合した高性能のチップだ。M1 Ultraは20コアCPUに最大64コアのGPU、最大128GBのユニファイドメモリを、M1 Maxは10コアCPUに最大32コアのGPU、最大64GBのユニファイドメモリを搭載する。
問題となっているのは、よりハイスペックなチップであるM1 Ultraの方だ。
Appleは新製品発表イベントの中で、M1 Ultraを発表した。M1 Maxを2基連結させる「UltraFusion(ウルトラフュージョン)」技術によって誕生し、現時点でApple最強のチップであることを強調した。
そしてM1 Ultraは、CPU能力はもちろんのこと、GPU能力が非常に高いことも強調された。統合チップでありながら、そのGPUパフォーマンスは「ハイエンドGPUと同等ながらも電力効率が圧倒的に良好」とされ、大きな注目ポイントとされた。
発表会では比較対象としたGPU名は明言されなかったが、Tech系メディアのThe Vergeは発表会前の2022年3月9日にM1 Ultraについてリークし、記事の中でAppleが比較対象としたGPUがNVIDIAの「RTX 3090」であるとした。発表会を見ていた人の中には「RTX 3090と同等の能力が低電力で使えるか」と思った人もいただろう。
そしてThe Vergeは、2022年3月18日に発売されたMac Studioを早速購入し「Geekbench 5」を使ってベンチマークテストを敢行した。RTX 3090を搭載したPCとMac Studioを比較してみたのだ。
すると、RTX 3090搭載PCのスコアが21万5034だったのに対して、Mac Studioは8万3121だった。つまりMac Studioのピーク性能は、RTX 3090を搭載したPCのピーク性能の半分以下であることが明らかになったのだ。またゲーム「Shadow of the Tomb Raider」のテストプレイでは、1080pの解像度でRTX 3090搭載PCが142fpsを記録したのに対してM1 Studioは108fpsと、こちらも下回る結果となった。
The Vergeはこの結果を伝えつつも「消費電力当たりのGPUパフォーマンスに関しては、M1 UltraはRTX 3090を圧倒する」とフォローした。さらに「両者が競合するのは明白で、状況によってはM1 Ultraを使用する方が多くの利益を得られる」とも語り、AppleのUltraFusion技術を高く評価した。
もっとも、RTX 3090は単体のグラフィックスカードに搭載されるGPUであり、M1 UltraはCPUもGPUも内包する統合SoC(System on a Chip)だ。RTX 3090を搭載するPCのCPU性能などその他の要素にベンチマークテストの結果が左右される可能性は高く、単純にグラフィックパフォーマンスだけを抽出して横並びで比較しても仕方がないように思う。
ともあれ、M1 Ultraのグラフィック性能は高いものの、ピーク性能においてはハイエンドグラフィックスカードであるRTX 3090には及ばない、ということは明確になった。しかしながら、この結果のみでMac Studioの評価が下がったわけではなく、Mac Proシリーズに準ずる高性能なデスクトップMacとして多くのユーザーに支持されるだろう。今後の販売実績に注目していれば、自ずと結果が分かるだろう。
上司X: Appleが新発表した「M1 Ultra」チップが実は大したことないのかも、という話だよ。
ブラックピット: 「大したことない」ってことはないでしょう。
上司X: まあそうだな。十分スゴいよ。M1 Ultraは。M1 Maxを2つがっちゃんこしてるわけだしね。強引に見えるけど、UltraFusionていうのはなかなかスゴい技術だ。
ブラックピット: デュアルCPUにある「遅延の増大」「帯域幅の減少」「電力消費量の大幅な増加」などのデメリットを解消した、とAppleのエラい人が言ってましたよ。
上司X: エラい人っていうかティム・クック氏だよな、多分。
ブラックピット: あ、そうです、そうです。クックさんもそんな技術の粋を集めたM1 Ultraが遅いだの大したことないだの言われるとは思ってもなかったでしょう。
上司X: もともとAppleのM1チップは消費電力当たりの性能が高いことが最大の特長だからな。発表会でもそこは強調されてたし。そもそもRTX 3090って現時点でNVIDIA最高峰のGPUだしな。ピーク性能でそれに負けたとして、一般的なGPUよりは高性能ってことだろうし。
ブラックピット: いずれにしても、新製品をディスられるのはいやだと思いますよ。それにしてもホイホイ買える価格じゃないのが残念なところですよ!
上司X: M1 Ultra搭載のMac Studioだと最小構成で49万9800円(税込)だもんなあ。ま、RTX 3090を搭載したゲーミングPCもたぶんそれぐらいすると思うけど。懐に余裕があったら「さてどっちを買おうか」なんて迷ってみたりもしたいところだけどねぇ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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