NFT(非代替性トークン)とは? 仮想通貨との違い、ブロックチェーンやデジタルアートとの関係を解説
新しいマーケットへの期待から新規参入が相次ぐ。デジタルアートの高額販売が話題になり、投機的な取引も過熱している。
- NFTの仕組みと注目の背景
- NFTでできること、できないこと
- NFTの取引事例
- 関連用語
NFT(non-fungible token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーンを用いて記録される非代替性のデータ単位で、一般的にアート作品などのデジタルデータとひも付けて売買される。LINEや松竹、スターバックス、ルイ・ヴィトンなど、さまざまな分野からの市場参入が相次ぐ。
NFTの仕組みと注目の背景
NFTはブロックチェーン技術を利用して発行や取引の履歴を保存し、複製や偽証を実質的に不可能にしたデジタルデータだ。暗号通貨(仮想通貨)や現金通貨のような”代替性”を持たないため「通貨によって売買される取引対象」となる。
2008年のブロックチェーン技術考案、2009年の暗号通貨発行を追って、2014年に「Quantum」が発売された。NFTという名称は2017年に提案されたもので、仮想の猫を取引するサービス「CryptoKitties」の成功をきっかけとして広く知られるようになった。
「デジタルデータにひも付けて売買できる、複製できないデータ」という特徴が注目を集めて投機手段としての取引も過熱し、2021年には取引総額が200〜400億ドルにのぼったとされる。
NFTでできること、できないこと
NFT市場は、従来は売買の対象とされてこなかったようなデジタルデータを用いた参入も可能だ。従来の枠組みにとらわれない多様なデータが取引される中で、新しい価値を生み出す可能性がある。一部の商品は市場価格が変動しやすいため、短期的な売買によって利益が得られるケースもある。
一方、トークンそのものはコピーできないものの、ひも付けられたデータのコピーを防止する効果はない。ブロックチェーンに記録される取引対象はNFTそのものであり、ひも付けられたデジタルデータ自体はブロックチェーンに記録されない。そのため、例えば「ローカルに保存しておいたデジタルアートが盗難に遭う」といったケースは起こり得る。
また、一般的に、NFTを購入しても商品データの所有権や著作権は得られない。例えばNFTにひも付けられたデジタルアートを購入した場合、そのNFTをもって「購入者であること」を主張できるが、アーティストが同じ作品を第三者に販売することや、公開することを差し止める権利はない。
NFT取引に関する法律は各国とも未整備だ。日本においては、NFTは民法の規定上、所有権が保護されない(2022年4月時点)。前述したブロックチェーンによる取引履歴証明が、係争時にどの程度考慮されるかは今後の判例が待たれる。
NFTの取引事例
NFT取引は、金額の大きさや前例のない取引内容、本来の著作権者や所有者が関知しない所で売買されたケースなどで注目される事例がある。
2021年3月22日、TwitterのCEOジャック・ドーシー氏が「Twitter」に初めて投稿したツイートのNFTが約3億1640万円で落札された。落札したのはBridge Oracleのハカン・エスタビCEOで、同氏は2022年4月8日(現地時間)に本NFTをオークションにかけた。同年4月14日時点で、約45万円の入札がある。
2021年8月、バンクシー作品のコレクターがバンクシーの公式サイトからNFTオークションに参加して作品を約4000万円で落札したが、支払い直後に詐欺の可能性を疑う声明をSNSに投稿した。後日、バンクシー側が「NFTオークションには関与していない」とコメントして詐欺が発覚した。サイトが不正アクセスを受けて偽のNFTオークション情報が掲載された可能性があり、支払った金銭は返金されている。
関連用語
NFTはブロックチェーン技術の発展によって成立したものと言える。
ブロックチェーン
ブロックと呼ばれるデータ単位を鎖状に連結して同一性や唯一性、耐改ざん性を確保する暗号化技術。複数の参加者が分散してレコードを保有する仕組みで耐改ざん性が高く、暗号通貨の台帳やスマートコントラクトなどに利用される。
暗号通貨(仮想通貨)
NFTと同様にブロックチェーンに取引履歴が記帳されるデータ単位で、デジタル資産として扱われる。NFTと異なり代替性を有するため「通貨」となる。
デジタルアート
PCを使用して作成されたアート作品全般を指す。ペイントソフトで描いたイラストや電子音楽、デジタル写真なども含み、NFTはデジタルアートにひも付けられた別個のデジタルデータとして売買される。8才の男児がタブレット端末で描いた絵が140万円で落札された事例もある。
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