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三菱マテリアル、ジオテクノロジーズも推進、UiPathの「Fully Automated Enterprise」とは

RPAが普及期に入り、DXの一要素として全社的な業務の自動化を推進する企業も現れた。ユーザーは今、どのようにRPA活用を深化させることが正解なのか。UiPathの2023年度の事業戦略説明会でそのヒントが語られた。

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 幻滅期の底を脱して普及期に移ったとされるRPA(Robotic Process Automation)。「期待はずれ」に終わる企業がある一方で、RPAで小規模な自動化に成功した企業がより広範な業務を自動化する「ハイパーオートメーション」を目指す企業もある。ベンダー各社も戦略を次のフェーズに進め、RPAに閉じないさまざまな自動化製品の拡充に努めている。

 こうした潮流の中で、ユーザーは今どのようにRPA活用を進め、深化させるべきなのか。UiPathの2023年度の事業戦略説明会で語られた方針と事例にヒントが隠されていた。

3つの製品が実現するFully Automated Enterprise

 UiPathは2022年4月19日、2023年度の事業戦略を発表した。鈴木正敏氏(UiPath取締役最高収益責任者)は同社2023年度の方針として「Fully Automated Enterpriseの推進」「業種別取り組みの強化」「顧客満足度のさらなる向上」「デジタル人材育成の推進」「パートナーエコシステムのさらなる強化」の5つを挙げた。

 「Fully Automated Enterprise」について鈴木氏は「RPAが企業全体のプラットフォームになり、エンドツーエンドの自動化を推進すること」と説明する。UiPathはRPA以外にも「UiPath Process Mining」「UiPath AI Center」「UiPath Test Suite」といった製品を展開し、このビジョンの実現を目指してきた。

 「UiPath Process Mining」は業務プロセスを可視化し、ボトルネックや非効率性を発見して自動化対象業務を発見する製品だ。

 日本におけるプロセスマイニングの市場はまだ黎明(れいめい)期ではあるものの、UiPath Process Miningの採用数は増加傾向にあるという。鈴木氏は、「23年度と24年度の取り組みによっては、UiPathはプロセスマイニング市場において確たるポジションが得られると確信しています。UiPath Process Miningは国内の大手金融機関や大手製造業、大手通信業に導入いただいており、22年中には活用事例として紹介できると考えています」と語る。

 「UiPath AI Center」はAI(人工知能)の民主化を推進し、現場のユーザーによるRPAとAIの連携を容易にする。人の判断や文書チェックなどに適用することで、自動化の範囲を拡大できる点がポイントだ。

 「UiPath Test Suite」は、システム開発の現場においてさまざまなアプリケーションなどのテストを自動化する。さらにRPAワークフローもテスト自動化の対象で、開発したロボットの品質確保に貢献する。

 鈴木氏は「この3製品を活用して、Fully Automated Enterpriseを多くの企業で実現していきたい」と語り、「RPAがあらゆる業務やシステム、人と調和し、企業の経営基盤となることで“全社的自動化”が企業や組織に浸透し、自動化を進める人や文化がこの先のDXの柱となる」と説明した。


図1 Fully Automated Enterpriseを推進するUiPathの3つの製品

従業員の教育及び意識改革を進めている三菱マテリアル

 記者会見では「Fully Automated Enterprise」を推進する企業として三菱マテリアルとジオテクノロジーズの担当者が登壇し、自社の取り組みを紹介した。

 三菱マテリアルは1871年に創業した非鉄金属メーカーで、2021年に創業150年を迎えた。現在は次の50年を見据えた経営改革に取り組んでおり、「CX(Corporate Transformation)」「HRX(人事制度改革)」「DX(デジタル・ビジネストランスフォーメーション)」「業務効率化」の4つの観点から全社規模の改革を進めている。

 「業務効率化」に関しては、2021年4月に開設された業務プロセス変革推進部が中心となり、社内のDX推進本部や外部パートナーであるUiPathと連携しながら、業務の可視化や業務プロセスのマネジメント、効率化施策の実行、効果の集約と再配置といった取り組みを進めている。

 同社はプロジェクトを3つのステップに分けて展開している。ステップ1は現場の担当者が自動化のアイデアを出し、CoE(Center of Excellence)がロボットを開発して担当者が実行する。ステップ2は現場の担当者がロボットを開発し、CoEに提出してガバナンスチェックを受ける。ステップ3はCoEが業務プロセスを可視化し、組織横断的な自動化を実現する。作成された自動化のアセットは全社で共有できるようになる。

 なお、従業員への技術サポートはCoEとUiPathが連携して提供し、従業員教育及び意識改革は社内サイト、セミナーや研修を活用しているという。

 同社の最高デジタル責任者である亀山満氏は、「UiPathの製品や技術サポートを活用しながら、従業員の教育及び意識改革を進めている」と語った。


図2 UiPathが提案する三菱マテリアル社内への業務効率化展開マップ

RPAを使ったデジタル人材育成に注力するジオテクノロジーズ

 ジオテクノロジーズは、1994年設立のデジタル地図の制作と販売を手掛け、三菱マテリアルと同様、RPAやAIの導入を全社規模で進めている。その一環として特に注力しているのがデジタル人材の育成だ。社長が人事部と連携して社内の各部署から12人を選出し、RPAの開発トレーニングやロボットのコンテスト、開発のためのルール策定などを進めている。

 同社はデジタル人材育成プログラムを軸として、デジタル地図開発業務の他にもソリューション開発業務やバックオフィス業務をRPAやAIで自動化している。榎本司氏(常務執行役員CDO デジタル本部本部長)は、「地図データ開発の高度化と高速化を実現し、生産性を3倍にしたい」と意気込みを語った。


図3 ジオテクノロジーズのRPA・AI導入に関する全社的な取り組み

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