「覆面CEO」が自社の求人に応募、そこで見つけた酷すぎる実態とは
なぜ自社には優秀な人材が来ないのか。その原因を「狂った市場」のせいにするのは簡単だ。しかし、それは事実だろうか?
「採用市場は狂っている!」「人材不足だ!」「最適な候補者を見つけるのは不可能だ!」――。これらの言葉は毎週のように耳に入ってくる。
CEOやエグゼクティブ、リーダーそして採用担当者は、採用の難しさを簡単に“自分たちの力の及ばない抽象的なもの”のせいにする。もちろん企業のどのレベルにおいても採用活動は重要だ。採用担当者たちは、いつも右往左往しながら候補者を採用している。
崩壊した採用活動を暴く「覆面応募CEO」の存在
しかし、採用活動のプロは「いつまでも市場や人材不足のせいにするのではなく、自社の採用が本当に優れているのか候補者体験の観点から評価すべきだ」と助言する。
著者 クリス・バッケ(Chris Bakke)氏
米国の採用プロセス管理ツールなどを提供するLaskie.comの創設者兼CEO。本稿はクリス氏の意見をHR Diveに掲載したもの。
クリス氏は次のようにアドバイスする。「市場や人材不足を際限なく心配するのではなく、候補者の体験という観点から採用を評価するほうがよい。そうすれば、多くの改善の余地が見つかるはずだ」。
候補者の目線で想定される悪い体験は次の通りだ。これらの課題を自社の採用プロセスが抱えている場合、企業は優秀な人材を逃すことになる。
「応募者追跡システムは1994年製のままで、77の必須項目がある」「モバイル端末でキャリアページが読み込めない」「履歴書の手書きが必須」「採用担当者が候補者に連絡を取るまでに応募から30日以上掛かる」「最初の面接から次の面接まで2週間空く」「応募書類がブラックホール化」……。
経営者、創業者、そして今は創業CEOとしてクリス氏は自分の会社の求人に応募して採用プロセスの問題点を暴き出してきた。これは他のCEOにもできることだ。
「覆面CEO」は、応募者が企業の採用プロセスで遭遇する問題点を特定するのに役立つ。採用におけるトップオブファネルの最初期段階で、残りのプロセスがどのようなものかについて貴重な情報を提供できる。やり方は次の2通りだ。
まず、創業者や経営者が偽名、架空の履歴書、メールアドレスで応募すること。書類選考を通過するようなフェイクまたはサンプル履歴書を作成するには時間がかかる。目標は面接プロセス全体を偽造することではなく、高品質の履歴書を提出した時点から、採用チームからの連絡を受け取り一次面接の約束を取り付ける(または不採用になる)までのタイムラインを探ることだ。
しかし創業者や経営者として自分の会社に応募する場合、採用担当者にバレずに一次審査に通るのは難しい。もう一つのやり方として、役職の無い従業員が強力な履歴書を使用することだ。運が良ければ一次面接に進むことができ、うまくいけばパネルインタビューやアセスメントなどの追加スクリーニングプロセスに進めるだろう。この場合、従業員は採用プロセスにおける各ステップを改善するためのフィードバックを提供できる。
「覆面応募者」になるCEOなどは、応募者として不満に思うことがあるだろう。最終的にここで得られた新たな情報は、本当の求職者の体験を向上させるのに役立つ。
この演習では毎回、採用チームに対して改善点と優れた点のリストが提供される。毎年このプロセスに時間を費やせば、企業は大きく変化するだろう。この厳しい採用市場において、全ての企業にこの方法を勧めたい。
© Industry Dive. All rights reserved.