PCキッティングのツールとアウトソーシングの利用状況(2022年)/後編
企業におけるPCキッティングの負荷は大きく、解決策に挙げられるのがアウトソーシングサービスの活用だ。後編となる本稿では、キッティング業務のアウトソース状況や課題、サービス選定理由などを調査した。
キーマンズネットは2022年5月13〜27日にわたり、PCの各種基本設定や、利用者が業務で必要なソフトウェアをインストールし利用できる状態にする「PCキッティング」に関する調査を実施した。
今回はキッティング業務のアウトソースの工程や課題、サービス選定理由などを調査した。全体の4割がキッティングをアウトソースする一方、残りの自社完結している企業の8割(全体の約4割)が「アウトソースを検討していない」と回答した。負荷の高いキッティングを外注しない理由とは。
全体の4割がアウトソース派……過半数が外注する工程とは
前編では、過半数が自社でキッティング業務をするものの、作業の平準化やコスト、テレワーク対応などで課題を持つ企業も見られた。後編では、キッティングのアウトソース状況に注目し結果を考察する。
はじめに前編で紹介した企業のキッティング状況を振り返ると「自社とアウトソーシングの両方でキッティングしている」(27.2%)と「全てのキッティングをアウトソーシングしている」(12.3%)を合わせ、全体の4割がキッティング業務をアウトソースしていた(図1)。
アウトソースしている工程は「PCイメージのインストール」(59.2%)が最も多く、次いで「PCイメージの作成」(39.2%)や「PCイメージのテスト」(35.2%)、「ユーザーへの発送」(35.2%)が続く(図2)。
従業員規模別に見ると、500人以下の中堅・中小規模企業はPCイメージの作成やテストなどの”前工程”をアウトソースし、1000人以上の大企業はユーザーへのPC発送など”後工程”をアウトソースする傾向が見て取れた。「インストール作業」は対象台数分の工数がかかるため全ての規模帯の過半数がアウトソースしていた。
また、アウトソーシングサービスの選定の理由として「料金体系が自社に適していた」(43.2%)や「対応可能な台数と期間が適していた」(28.8%)など、コストや対応期間が優先されることも分かった(図3)。
自社完結企業の8割が「アウトソースしない」理由とは?
キッティング業務を”自社で完結”している企業の約8割は、今後もアウトソースを検討しない意向で、アウトソース検討割合は1割にも満たなかった(図4)。
以降の調査結果から、企業がPCキッティングをアウトソースしない理由が明らかになった。キッティング担当者が「じゃあ全部自分がやるよ!」と言いたくなるような理由も見受けられた。
理由としては「金額コストに見合わない」(70.1%)や「希望する要件を満たせない」(25.5%)、「会社や上司の許可が出ない」(20.4%)が上位に挙がり、コスト面の課題が他を大きく引き離した。
アウトソースを検討するキッティング工程を聞いたところ「PCイメージのインストール」や「ユーザーへの発送」といった、人数分手間のかかる”後工程”を挙げる声が多かった。
一方、「PCの機種選定」や「PCイメージ作成」などの"前工程"は自社で実施するとする割合が多い。フリーコメントには「PCの納期がかかることから手配の優先順位がしばしば変わる。アウトソースすると指示する情報が直前に変わることになるので難しい」という意見もあった。自社完結企業が”前工程”を実施する理由は、環境変化に柔軟に対応できるためという側面もありそうだ。
フリーコメントで分かる、アウトソースニーズの多様化
最後に、今後アウトソーシングサービスに期待することをフリーコメントで聞いたところ、回答は3つに大別できた。
サービス柔軟性の向上
1つ目は最も多く挙げられた意見で、サービスの幅や対応の柔軟性を求める声だ。「端末の選択幅の制限がない」「タブレットやスマートフォンのキッティングが課題」など、自社環境の変化による要件の変更に柔軟に対応してほしいという声が目立った。
また、「『会社規模小』『ニーズ不定期』『短納期』でやってくれるところがほしい」や「導入時に業務を止めないよう切替スケジュールの調整に柔軟に対応して欲しい」といった、対応面での柔軟性を求める声が多く挙げられた。
サポートの向上
2つ目は障害対応を中心としたサポートの充実だ。「HDDなどのハード障害時のリカバリーサービス」や「障害発生時の対応など含めPCキッティングに関わる全ての作業を請け負うようなアウトソースが望ましい」「イメージは納品された時点から古くなるので、それを定期的にアップデートするサービスが欲しい」など、マスターPCのイメージを定期的に更新したり、一定期間保存したりするなど、有事に備えるバックアップニーズも少なくなかった。
価格と納期のより良いバランス
3つ目は「低コスト化を求めている」「社内リソースの負荷低減のための短納期(1〜2日)」など、低価格かつ短納期を要望する声だ。
前述の通り、アウトソーシングサービス選定者の4割は「料金体系が自社に適しているかを重視する」、3割は「キッティングにかかる期間を重視する」という結果が出ている。多くの企業が気にする点であるが、「手離れが良く、出社もせずにできること」や「テレワークの環境設定やアプリ配信のサポート」などテレワークへの対応を挙げる意見も見られた。
柔軟性やバックアップニーズと合わせ、キッティング業務のアウトソースサービスへのニーズは、昨今の環境変化によってコストや納期だけではなく”多様化”している様子が見て取れる。
全回答者数は316人で、従業員規模別で見ると101〜1000人が40.5%と最多であった。次いで1001人以上が34.2%、100人以下が25.3%であった。所属部門別では情報システム部門が43.7%、営業/営業企画、販売/販売促進部門が14.2%、製造・生産部門が10.1%、総務・人事部門が7.9%と続く内訳であった。
なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるのでご了承いただきたい。
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