検索
ニュース

「ホームアローン効果」とは? テレワークの水面下で進む「集団退職」のリスク

オフィス復帰を求められた従業員の過半数が「それで良い」と考えている、一方で通勤を再開したくない従業員やハイブリッドワークをいやがる従業員もいる。これは「個人の身勝手」で済む問題なのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
HR Dive

 ある調査において、フルタイムでのオフィス復帰を求められた従業員のうち71%が「雇用主の決定に同意する」と回答した。同調査では、ほとんどの回答者が現在の勤め先に「満足」しており、退職の予定は「ない」と述べた。

 ただしオフィス復帰に伴って転居や生活リズムの変化、経済的負担の増加を懸念する声も多い。

 そのような中で「折衷案」としてハイブリッドワークの定着が予測されるが、これをベストな選択肢と断言するのも難しいようだ。さまざまな業界で、さまざまな事情の中で働く従業員がいる。水面下で進む「集団退職」(mass exodus)の気配に、経営者は気付けているだろうか。

「疲れ切った従業員」は何を求めているのか

 米国企業Workhumanが実施した最新の調査「Human Workplace Index」によれば、フルタイムでのオフィス復帰を「雇用主から求められている」と回答した従業員は51%おり、そのうち71%が「雇用主の決定に同意する」と回答した。79%の従業員が現在の会社に「満足」しており、63%が「退職の予定はない」と回答している。

 一方、オフィス復帰に同意しない3分の1のうち43%は「業務に必要ない」、31%は「複数のオフィスが選択できるようにすべきだ」と考えている。また、大多数が通勤費や育児、介護など、現場での仕事に伴う経済的負担を懸念していることが明らかになった。

 特にパンデミック後に転居した従業員は、雇用主のオフィス復帰計画を複雑化させる可能性がある。42%の従業員がオフィス復帰のために転居が必要になっているという。

 この調査結果は、長らく続く「大離職」と「労使間の緊張」の後に多くの労働者がオフィス復帰に近づいている可能性を示す。Workhumanの最高人事責任者であるスティーブ・ペンバートン氏は、テレワーカーを取り巻く状況を「最初は(家にこもっている時間を)クールなものだと感じるが、しばらくすると孤独感が生まれてくる」と指摘する。

 「私はこの現象を『ホームアローン効果』と呼んでいる」(同氏)

 コロナ禍によってテレワークが急速に普及した後、1年以上にわたる在宅勤務が一部の労働者に負担をかけ始め、孤立の懸念が高まった。在宅勤務の難しさには大きなばらつきがあるようで、在宅勤務がうまくいっていると言う人もいれば、同じ環境で萎縮してしまう人もいる。例えば女性や有色人種は、一般的に在宅勤務の方がよいと言っているが、インターン生はコミュニケーションをとるのが難しく、苦しんでいるという。

 しかし、労働者は職場での社会的なつながりを望む一方で、自宅で仕事をすることのメリットを捨てることも嫌がっているとペンバートン氏は話す。 「パンデミック以降、身の回りのことを考えるようになった。家族と散歩をして夕食を共にし、子供がスクールバスから降車して、就寝前に本を読むのを見た。このような人間的な触れ合いの時間を持つことは、長距離通勤をしながらでは困難だ」。

 よってペンバートン氏は、多くの人が長続きする妥協案はハイブリッドワークになると考えている。ハイブリッドワークは以前から人事担当者の構想にあるが、実現は容易ではない。2021年夏、米国の人事ツールベンダーTinyPulseが実施した調査によれば、従業員は「ハイブリッドワークが最も精神的に疲れる」と考えている。別のレポートでは、ハイブリッドワークはほとんどの職場にとって「隠れたギャップ、リスク、非効率性、脅威」を顕在化させる成長痛を伴う時期になるという。

 最後に、労働者の体験が全体的に非常に異なっていることを指摘しておく。今回取り上げたWorkhumanのレポートでは「労働者はオフィスに戻ることを熱望している」という結果が出たが、最近の他のレポートでは2年間のパンデミックと最近のインフレ、世界的な紛争などの問題で燃え尽きた従業員は「ただ安定を望んでいる」という。

 ある業界では従業員が仕事に満足して退職する予定がない一方で、従業員が集団退職(mass exodus)のような行動を計画している業界もある。

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る