Windows標準ソフトにまさかのトラップ発見か?:669th Lap
Windows OSにはユーザーの“お助け役”として、さまざまなアプリやソフトが標準で備わっている。しかし、Windowsソフトの中にその期待を裏切るものが見つかったという。
画像編集アプリやメモアプリなど普段使いで役立つものからウイルス対策ソフトまで、Windows OSにはさまざまなお役立ちアプリやソフトが標準で搭載されている。
しかし、Windows OSに標準搭載のあるソフトが「悪さをしているのでは」との疑惑が持ち上がった。どうやら、われわれの普段の利用にも影響が及ぶ可能性があるという。本来、ユーザーの手助けとなるソフトが悪さをするとはどういうことか。そして、その影響とは。
問題になっているのは「Windows Defender」だ。Windows Defenderは、Microsoft純正のウイルス対策ソフトで、「Windows 8」から標準搭載となった。「ThrottleStop」や「RealTemp」などのアプリ開発で知られるケヴィン・グリン(Kevin Glynn)氏が、Windows Defenderが何やら悪さをしているらしいと公式ブログで告発した。
ブログでグリン氏は「Windows DefenderがIntel製CPUのパフォーマンスを低下させる可能性があるのでは」と主張している。Windows Defenderはマルウェアの脅威からシステムを保護するために常駐稼働していても、システムに負荷をかけにくいところが利点の一つとされる。それだけに、この報告は意外なものだ。
グリン氏は、自身のアプリ「Counter Control」の開発作業中にWindows Defenderのバグらしきものを発見し、システムに負荷がかかっているように思えたという。もちろん常駐型のセキュリティ対策ソフトを使っていれば、多少なりともシステムに負荷が掛かるものだ。しかし同氏は、多少どころではない負荷だったと述べる。
そこでGlynn氏は、ハードウェア情報解析ソフトの「HWiNFO」を使って、Windows Defenderが動作しているときのCPUのパフォーマンスを確認してみたのだった。するとどうか! Intel製のCPUに限ってその性能が低下することに気がついてしまった。
グリン氏はベンチマークテストを敢行した。「Cinebench」でパフォーマンスを計測したところ、Windows Defenderのリアルタイム保護が有効になっている場合、ベンチマークテストのスコアが1000ポイント、パフォーマンスにすると6%も低下することが判明した。
この現象は「MsMpEng.exe」というプログラムがCPUの4%ほどを占有することが原因だと考えられている。MsMpEng.exeとは、Windows Defenderのリアルタイム保護機能の有効時に動作するプログラムであり、Intel Coreプロセッサの第8〜11世代を使用しているシステムでこの現象が発生することが分かった。ちなみにAMDのCPUでは発生しないという。
第8〜11世代のIntel Coreプロセッサといえば、まさに現役のCPUだ。しかも「Windows 10」と「Windows 11」で発生している現象となれば、その影響の大きさはどれほどだろう。グリン氏によると、この原因はWindows DefenderがIntel Coreプロセッサが提供する7つの「ハードウェアパフォーマンスカウンター」をランダムに使うことに起因するという。
そもそもハードウェアパフォーマンスカウンターは、CPUで発生するイベントを計測し、分析する機能だ。一般的なユーティリティーソフトは、ハードウェアパフォーマンスカウンターを利用する場合でも優先度が低い「モード3」を利用するのだが、Windows Defenderは優先度の高い「モード2」を占有してしまい、これが原因でCPUのパフォーマンスが低下するのだという。そしてさらなる問題は、Windows Defenderがハードウェアパフォーマンスカウンターにアクセスするのはランダムであり、予測が難しいとのことだ。グリン氏によれば、氏が制作したユーティリティーソフト「ThrottleStop」の最新版を利用することで、今回報告された問題を回避できるという。
この問題に対処するには、Windows Defenderを無効にするしかなさそうだ。しかし無効にすれば、脅威に対して無防備な状態となる。もちろん、Windows Defender以外のセキュリティ対策ソフトを利用することでこの問題を回避できる可能性はあるが、Windows OS標準搭載で「無償で安全」という恩恵は受けられなくなり、納得できないユーザーもいることだろう。自分の身は自分で守らなければならない時代であるだけに、悩ましいものだ。
上司X: 「Windows Defender」がIntel製CPUの動作を重くしている、という話だよ。
ブラックピット: 6%のパフォーマンスダウンというのは、結構な数字だと思いますけどね。
上司X: 大昔は、Windowsにセキュリティ対策ソフトを入れると「遅くて遅くて仕事にならない」なんて時代もあったけどね。今のセキュリティ対策ソフトはどれも軽量で、仕事の邪魔になることはまずないだろう。
ブラックピット: ところが無償のWindows Defenderは重たくしちゃうと。
上司X: Windowsの標準ソフトが特定のCPUでだけシステムの負荷になっているというのは、ちょっといただけない話だな。
ブラックピット: 安全には変えられませんが、CPUリソースを奪われるのもそりゃ納得できませんね。早々にバグフィックスしていただきたいものですよ。
上司X: 実はWindows Defenderってセキュリティ対策ソフトのシェアで半数以上を獲得しているっていう調査もあるんだよね。セキュリティ対策としてはもはや定番中の定番な存在だ。
ブラックピット: 実際、僕も特にセキュリティ対策ソフトは買ってないですからね。でも遅くなるのは困ります! でも、あれ? 普通にそのまま使っているということは、遅くなっていることにすら気付いていないのでは?
上司X: そこなんだよね。Windows 10を使い始めてそのままずっとWindows Defenderだけ使っているなら比較対象がないから、自分の環境のパフォーマンスが6%下がっていても特に気が付かない可能性が高いんだよね。まあ、この報告を受けていつの間にか修正されていることを願いたいものだよ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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