あなたはどのタイプ? 学習タイプを知ると圧倒的に働きやすくなる理由
部下の育成に悩むマネジャーは、彼らの行動パターンの観察が足りていないのかもしれない。人には「情報の取り込み方」(抽象的か具体的か)と「情報の処理方法」(能動的か、反射的か、受動的か)の2種類の軸で分けられる4つの学習スタイルがあり、それぞれのスタイルに合わせたフレームワークを適用することで効果的なアプローチができるようになる。
コロンビア大学で組織とリーダーシップ学を研究するテレンス・マルトビア准教授によれば、人間が情報を取り込んで処理する方法は複数ある。従業員育成においてそれらの違いを理解し、違いに応じて学習をパーソナライズすることは、雇用者にとって有利に働く。
同氏は「私が管理職なら、部下の学習スタイルを知って、彼らがどこにエネルギーを感じているかを知りたいと思うでしょう。それを基に仕事、責任、割り当てなどを配分して彼らとどのようにコミュニケーションを取り、モチベーションを上げるべきか。ベストな方法を知ることができます」とHR DIVEに語った。本稿では、成人の学習と成長を専門に研究する同氏による学習スタイルとスクリプトの分類、スマートに働くための組織的なサポートと学習スタイルのフレームワークをより広く適用する重要性を、インタビューを通して解説する。
4つの学習スタイルと適用すべきフレームワーク
――学習・能力開発の専門家、そして学習スタイルに精通していないマネジャーやスーパーバイザーのために(おそらくこれが最も重要)、それらのスタイルとは何か、そして各スタイルをどのように定義するのかについて教えてください。
4つの一般的な学習スタイルにはそれぞれ指標となるもの、つまりスクリプトがあり、行動パターンから分かるようになっています。
発散型学習者(Diverging learners)
自分が感じた「具体的な経験(concrete experience)」と、自分が見た「反射的な観察(reflective observation)」に頼ります。多くの情報を取り入れることを好み、大局的な思考をします。このカテゴリーの学習者には、仕事やプロジェクトを始める前に読み物やビデオ、図表などを勉強することを好む視覚および聴覚系の学習者が多く含まれ、熱心な「メモ魔」である可能性があります。
同化型学習者(Assimilating learners)
自分が考えた「抽象的な概念化(abstract conceptualization)」と、自分が見た「反射的な観察(reflective observation)」に頼ります。同化型学習者は物事全体をまとめ、多くのユニークなアイデアを統合して関連付けることを好みます。彼らはモデルを構築し、作成し、いじくり回すのが好きです。
集中型学習者(Converging learners)
自分が考えた「抽象的な概念化(abstract conceptualization)」と、自分が実行した「能動的な実験(active experimentation)に頼ります。発散型とは正反対で、最重要事項に焦点を当てて「要点を得る」ことを好みます。このグループは、テストが成功したかどうかにかかわらず、理論を検証することも同様に学習への道と考える傾向があります。
適応型学習者(Accommodating learners)
自分が感じた「具体的な経験(concrete experience)」と、自分が実行した「能動的な実験(active experimentation)に頼ります。彼らは「とにかく、やる」の思考を持ち、新しい情報を実際に処理し、より細かい概念の例を求めることがあり、抽象的で受動的な学習は苦手な傾向があります。
それぞれのスタイルには利点と欠点があります。ほとんどの人は、4つの学習スタイルをバランスよく組み合わせて持っています。大抵の人生経験において、4つのスタイルを全て、時には不自然に使いこなすことが要求されますから。
――バランスのとれた学習スタイルと、一方向に大きく傾いた学習スタイルの違いは何でしょうか?
さまざまなスタイルにバランスよく対応できる学習者は、情報の取り込み方や処理方法が非常に柔軟で、特定の分野に偏らないので、個人でもチームでもビジネスでも有効です。まるでカメレオンのように、相手の学習スタイルに合わせてその場に応じた対応ができます。
一方、ある学習スタイルの優位性は、学習のエネルギー、つまり注意が最も集中している箇所を示しています。私は同化型が得意で、学習の約80%でこのスタイルを採っています。これの良い点は、私が「どのような立場で、どのように物事に取り組んでいるのか」が周囲に伝わることです。しかし他の学習スタイルに対応する能力は20%程度しかありません。できなくはありませんが、実行においてより多くのエネルギーや時間、労力が必要になります。
――ラーニングデザイナーやその他のリーダーが学習スタイルについて知る必要があるのはなぜですか?
彼らはまず「学習スタイルが存在すること」を知る必要があります。これは一人の人間をサポートし、デフォルトの学習方法を理解する努力を示すものです。第2に、リーダーが他者のさまざまな学習スタイルを認識すると自分自身の学習スタイルをより明確にでき、それが組織の共感を生みます。このような意識は、学習者の能力開花につながります。
また、この学習スタイルを知り、認識する能力である「経験学習理論」は、新しい仕事、新しいクライアント、新しいプロジェクトといった機会ごとに、学習スタイルが活性化される永続的なものです。学習スタイルは私たちが世の中で活動し、成果を挙げる方法と密接な関係があるのです。
――職場の学習者は、多くの場合自分の学習ニーズが明確です。ある専門家によると、視覚的な学習者はデモンストレーションを求めることがあるといいます。また、聴覚的な情報やマニュアルを求める人も、自分で何かをやってみたいという人もいるでしょう。L&D担当者や経営幹部は、どうすれば自分や他者の学習スタイルを特定できるのでしょうか?
学習スタイルは、情報の取り込み方(抽象的か具体的か)と情報の処理方法(能動的か、反射的か、受動的か)の2つの要素によって決まることが分かっています。これらの要素を組み合わせれば、一般的な学習スタイルが分かってきます。
「学習スタイルインベントリ」は、数十年前に教育理論家によって開発されたモデルで、人々が自分の学習ミックスまたは優位性を理解するのに役立ちます。学習スタイルにはプロファイルがあり、一度知れば簡単に識別できますし、個人とグループのために測定するアセスメントも存在します。
――ビジネスリーダーは、どのように学習スタイルを尊重し、職場で受け入れるべきでしょうか?
職場で学習スタイルを尊重するには、まずその存在を認めることです。次に、同僚の学習スタイルを尊重すること。そして、重要なことは、それらのスタイルに対応するためのフレキシブルな調整です。
プロジェクト開始時に「発散型学習者」は、環境をスキャンし、多くの情報を集め、データを収集するのに力を発揮します。情報がまとまると「同化型学習者」はテーマやパターン、類似性や相違性を発見し、発散学習者が収集したデータに意味を与え、 優先順位を付けます。そして「適応型学習者」はどのように実行すればよいか考案します。
新製品を受け取ると「発散型学習者」はすぐにパッケージを開けようとします。説明書などは読まないでしょう。「同化型学習者」は接続部分を見て、説明書を読みます。「集中型学習者」は、箱の中の全ての部品を見ます。「適応型学習者」は完成が待ちきれません。
チームで仕事をする場合、全員の学習スタイル、つまりエネルギーを理解してそれをどのように活用するかを考える方が、はるかに効率的で、効果的です。
――学習スタイルに関する理論は、流動的で根拠のないものとして否定する考え方もあります。学習スタイルが存在することを知る価値をどのように定量化しますか?
私は、学習スタイルに対するいくつかの批判をよく知っています。どんな理論や関連する評価もそうですが、完璧なものはありません。学習スタイル理論が「根拠がない」とは思いませんが、批判の核となるものの性質は理解しています。発達の初期に設定され、時間の経過による変化があまりない安定な構成要素である「人格」とは異なり、「学習」は個人の累積的な経験に基づいて変化します。学習スタイルの測定は、学習へのアプローチの”スナップショット評価”と見なされるべきなのです。
ほとんどの経験的学習スタイル評価には、適用範囲があります。これは新しいことを学ぶためのアプローチを定義して測定するのに役立ち、同時に「学習スタイル」を「思考」や「性格」と区別するものです。これらの2つの領域は、学習スタイルとしばしば混同されがちです。
学習スタイルを知ることの価値を定量化する方法については「ほとんどの大人は誰もが同じように学ぶわけではない」ことを指摘します。学習スタイルは他の多くの要因と同様に、人間の多様性の一形態です。そして、学習スタイルの組織的な利用は、うまくフレームワークされ、特定の学習成果とリンクしていれば、おそらくほとんど抵抗を感じることはないでしょう。
――職場で学習スタイルを最適化したいと考えるL&Dやその他のリーダーへアドバイスをお願いします。
学習スタイルはフレーミングとアプリケーションに関わるとお考えください。学習スタイルが社員やマネジャー、組織にとってどのような価値を持つのか、また、学習がどのように使われ、どのような結果をもたらすのかを理解することです。
学習スタイルは、チーム内のさまざまなスタイルに対する認識を高めるために使用できます。チームメンバーが職場で示す多くの「好み」の一つであり、問題解決や意思決定、コミュニケーション、対立へのアプローチなどの領域でも影響力を持つものです。
例えば、私はコーチングで、学習スタイルの結果をクライアントと共有します。これにより、新しい学習を必要とする新しい経験にどのようにアプローチするかについての認識が高まります。また、典型的な学習アプローチの強みを意図的に活用し、与えられた学習目標や業績目標の実現に向けた進歩を加速します。そして、好ましい学習方法と関連する潜在的なギャップに対処する戦略を考案できるのです。
スーパーバイザーは、自分の学習スタイルと他人の学習スタイルを理解するにつれて、従業員のニーズや状況の変化に柔軟に対応できるようになります。
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