これはアリかナシか Amazonが顧客にナイショでアレして大騒ぎ:670th Lap
先日のプライムセールでひと盛り上がりしたAmazon。その裏で、ある商品が問題となり物議を醸している。議論を呼んでいるAmazonのあの商品とは。
Amazonと言えば、2022年7月12〜13日にかけてプライム会員向けに開催された「プライムセール」が話題になった。全世界で120億ドル以上の売上を果たしたそうだ。
そんなAmazonが販売するある商品が“怪しい”のではないかと問題になっている。これは「ナシ」という意見もあるが、別の見方では「アリ」ともとれる。何ともモヤモヤした話だが、プライムセールの影で発覚したその問題とは。
Amazonは「Ringシリーズ」という名称で、スマートホームセキュリティデバイス関連の製品を展開している。製品ラインアップの一つに、モーションセンサーを搭載した室内向けのセキュリティカメラ「Ring」がある。
自宅のRingデバイスをWi-Fiでインターネットに接続することで、ユーザーはカメラの映像をリアルタイムで確認でき、録画もできる。外出先でもスマホから映像を見られるので、自宅の訪問者を逐一確認可能だ。またデバイスによってはカメラ映像を見ながらリアルタイムで通話することも可能で、「見守りカメラ」としても活用できる。
Ringデバイスの機能の一つに「Neighbors」がある。「ご近所さん」というネーミングが示すように、撮影した映像を近所のRingユーザー同士がクラウドにアップして共有することで、互いのホームセキュリティを向上させるというわけだ。
もともとRingはAmazonが開発したデバイスではなく、ベンチャー企業Ringの手によるものだ。2018年にAmazonが同社を買収したことでAmazonデバイスとして販売されるようになった。Ringは「コミュニティーセキュリティの向上」を掲げてRingデバイスを開発していたため、Amazonに買収された後もこのNeighbors機能が搭載されているというわけだ。
今回発覚した問題というのが、このNeighbors機能に関わるものだ。
この問題については、2022年7月14日にアメリカのニュースメディアKOMO Newsが記事にして掲載した。それによるとAmazonは、Ringによって撮影された映像をユーザーの許可なく警察などの法執行機関に提供していたという。
このことを知ったマサチューセッツ州の上院議員エドワード・マーキー(Edward Markey)氏は、2022年6月ごろにAmazonに対して質問状を送った。そして2022年7月13日に回答を得たマーキー氏がその内容を公表して記事が発表されたといういきさつだ。
KOMO Newsの記事によると、Amazonは2022年に入って11本の映像を法的執行機関に共有していたことを認めたという。そもそもRingのNeighborsには法執行機関への画像共有機能が標準で備わっている。地域で窃盗事件などが発生したときに住民との協力によって事件を早急に解決するためだ。
法執行機関との画像共有の問題はRingの買収時点で既に問題視されていたものの、Amazonは「ユーザーの同意や令状がある場合、または緊急の状態である場合を除いて顧客情報を警察や法執行機関へ提供することはない」と明言していた。
つまりAmazonが認めた11本の映像については、ユーザーの同意や令状の提示はなかったものの、何らかの事件において「緊急の状態」であったと判断されたためであり、「問題はない」行為だったという。
マーキー氏およびKOMO Newsは、「緊急の状態」がどのような状態かを懸念している。2021年には人種差別への抗議活動の模様をRingデバイスで撮影した映像を警察が収集しようとしたことも報じられており、それが正しく「緊急」だったかどうかは疑問が残るという。
手軽に扱えるデバイスなだけに、ユーザーのプライバシーに踏み込みかねない勝手な画像提供は避けてほしいものだが、別の見方では居住地域の安全を守る有用な機能とも捉えられる。痛し痒しで、何とも歯がゆい話だ。
上司X: Amazonのセキュリティカメラを使っていると、その画像が勝手に法執行機関へ送られるかもしれない、という話だよ。
ブラックピット: 「Ring」ですか。Amazonデバイスのラインアップに加えられているんですね。
上司X: 「Amazon Echo」や「Amazon Fire TV」「Amazon Kindle」と同じような立ち位置の製品というわけだ。俺も買おうかどうか迷ってるんだよな。
ブラックピット: セキュリティカメラにあまり興味がないので知りませんでしたよ。どうせ僕の自宅には監視するものも守るべきものも、特に気にするべきものもありませんし……。
上司X: そういうことを言うもんじゃない。こちらが悲しくなるじゃないか。
ブラックピット: 事実ですし……。Wi-Fiに対応した監視カメラにしたら安い方じゃないですか。ペットや子どもの見守りカメラとしても使えそうです。
上司X: でもな、撮影された画像が勝手に警察に共有されるとなるとなあ。
ブラックピット: 気にしすぎな気もしますけどね。ちなみに日本国内で販売されている製品についてはNeighbors機能が有効かどうかは不明ですねえ。スペック表を見る限りは搭載されていないようですけど。
上司X: ご近所共有機能はそもそもRingデバイスのコンセプト機能のようだし、Amazonも仕様を改める予定はなさそうだな。地域の治安維持に一役買う機能なだけに、複雑な気持ちになるよ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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