カルチャーリーダーが語る「企業文化の醸成に必要なのは社員の声を聞くこと」
企業の成長とパフォーマンスばかりに目を向け、なおざりになりがちなのが「企業文化」。文化は企業のアイデンティティーであり、組織と従業員をつなぐ役割もある。企業文化醸成において、カルチャーリーダーが成すべきこととは。
1年ほど前、カリフォルニア州はビデオゲーム出版社のBlizzard Entertainmentとその親会社であるActivision Blizzardを相手に、性差別とセクハラが横行しているとして民事訴訟を起こした。そして同社は、初の文化担当責任者であるジェシカ・マルティネス氏の就任を発表した。しかし、そのような役割を担う人物は、具体的に何をするのだろうか。
会社とのつながりを感じない従業員たち
Blizzardによると、マルティネス氏は会社の文化戦略と組織の整合性の確保、学習、開発イニシアチブを見直した。「チームが安全で大切にされていると感じ、共通の目的に向かって共に働く。人を第一に考えた環境を作れば、企業は成功するはずだ」と、マルティネス氏は自身の役割をプレスリリースで公表した。
Blizzardが文化担当役員を任命したのは、同社におけるハラスメント疑惑や騒動を受けてのことだ。企業文化を積極的に変えようと考え、それは極めて重要なことだ。Gartnerの世論調査によれば、従業員の4分の3が「企業文化は自分の成功にとって重要な要素である」と回答した一方で、「自分の組織の文化につながりを感じた」と回答したのは調査対象の4人に1人だけだ。
Gartnerはその解決策として、企業文化を一致させ、企業と従業員を結び付けることを提案した。Blizzardはマルティネス氏の就任を発表する際、同じ言葉を用いた。そして、グローバル人材派遣会社のAquentの文化・コミュニティー責任者であるエリン・ブルーム氏は、自分の役割について説明する際に同じ思いを表明した。
「文化は組織の中で生きるものだと考えている。私たちはAquentを推進する柱であり、私は自分自身をその指導者だと考えている」とブルーム氏は述べる。
ブルーム氏はまだ就任して1年余りだが、Aquentで働き始めてから23年がたつ。Aquentがリモートファーストのワークモデルに移行する前は、不動産担当のグローバルディレクターを務めていた。
ブルーム氏は、新しい役職に就く最初の人物だ。同氏は経営幹部の直属であり、人事部リーダーシップチームの一員だ。同氏の仕事は、DEI(Diversity:多様性、Equity:平等性、Inclusion:包括性)とインターナルコミュニケーション、ディストリビューションオペレーションという3つに分けられる。
「協調性が必要な仕事なため、私は典型的な人事担当者や上司ではなく、安心して相談できる窓口のような立場であるべきだと考える。このような立場だからこそ、パンデミック後の文化において重視される従業員への傾聴に専念できる。従業員の声に耳を傾け、それに応えることは重要なことだ。そして私はそのキュレーターだ」とブルーム氏は語る。
コンプライアンスや法的な事案に追われる人事担当者は従業員の声に耳を傾け、企業文化までも考えることは困難だ。しかし、ブルーム氏はそれができる。最近、Aquentの従業員が、同社の無制限のPTO(Paid Time Off:有給休暇)に関するガイダンスを求めてきた。ブルーム氏は、祝日を拡大したリストを発表するようチームに働きかけ、企業はそのリストを見直している。
ブルーム氏の役割には、多くの企業にとっての懸念事項である分散型ワークモデルへの取り組みもある。パンデミック以前は、Aquentは世界中にあるオフィスで活動していたが、テレワーカーが増え、今では会社全体がリモートで運営され、ブルーム氏は従業員同士のつながりがより強くなったことを実感している。
Aquentはテレワークへ移行する中で企業文化も重視し、ブルーム氏のネットワークにいる多くのリーダーたちはそれを注視している。ブルーム氏の同僚の多くは、ワークシフトが進む中で未来の働き方をどうするかを議論している。一方で、退職率の高さにも悩まされている。
「人材不足が続く中、いかに優秀な人材を確保し、定着させるかを考えなければならない。人材は目的を共有し、学び、成長することを望んでいる。そのためには、このような役割を担う人材を確保することが非常に重要だ」と同氏は語る。
出典:What is a culture leader?(HR Dive)
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