名刺管理ツールの利用状況(2022年)/後編
キーマンズネットは「名刺管理ツールの利用状況」に関する調査を実施した。前編では名刺管理手法、ツール導入目的、ツールの便利な点や不便な点を紹介した。後編となる本稿では、個人における名刺管理ツールの利用状況が明らかになった。
キーマンズネットは2022年7月13〜26日にわたり「名刺管理ツールの利用状況」に関する調査を実施した。前編では名刺管理手法、ツール導入目的、ツールの便利な点や不便な点を紹介した。後編となる本稿では、個人における名刺管理ツールの利用状況が明らかになった。
「電池無くなった時に困る」との声も
前編では、「企業が導入するツールによる名刺管理」が全体の25.9%と、直近2年で10ポイント近く増加した一方、個人での管理が減少傾向にあることが分かった。「ファイリングなどを含めた物理的な個人管理」(49.5%)と「スマホアプリを使った個人管理」(16.5%)を合わせると66.0%になり、名刺の個人管理はまだ多数派であることが分かる。
管理手法としては、「名刺フォルダなどを利用した物理的な管理」が「ツール利用」の約3倍となっている(図1)。ただし2020年10月に実施した同様の調査と比較すると8.7ポイント減少しており、代わりに「個人や企業で利用されるツールによる管理」が増加していることからも、名刺の物理管理は今後も減少すると予測される。
個人で利用されている名刺管理ツールは「Eight」(57.1%)や「Sansan」(11.4%)、「Wantedly People」(11.4%)が上位に並んだ。企業における導入と同じく、Sansanのサービスが市場をけん引する様子が見て取れた。
利用している名刺管理アプリの便利な点としては、「写真から文字情報を自動入力できる」や「クラウドで同期できる」「スマホ撮影するだけでデータ化され、電話帳に登録される」など、名刺登録の手軽さを上げる声が多かった。名刺フォルダを持ち歩かないためかさばらない点も評価されている。
不便な点では、「文字情報の読み取り精度が低い」や「スキャンの読み取り精度がいまひとつ」「読み取り後に手入力で修正が必要なことがある」など、取り込み精度についての意見が大半であった。
前編の「企業が導入しているツール」では読み取りに関する指摘が少なかったことから、「無料アプリのため機能が制限されている」や「有料ライセンスとの差別化がされている」のように、利用プランによる精度の差異の可能性もある。他にも「スマホの電池が無くなった時に困る」など、忘れがちだが注意すべき点を指摘する人もいた。
「個人のつながり共有NG」「費用対効果合わない」などの意見も
名刺活用の幅を広げられる名刺管理ツールだが、個人で名刺管理をしている人は企業による導入の増加傾向をどのように考えているのだろうか。
確認したところ、「導入してほしいと思う」が37.1%、「導入してほしいと思わない」が55.0%で、企業による導入を望まない方が多数派ということが分かった(図2)。2020年10月に実施した同様の調査では「導入してほしい」が49.6%、「導入してほしいと思わない」が42.4%と、企業導入を望む声が若干上回っていたが逆転している。
導入を希望しない理由を聞いたところ、「社外勉強会などで得た名刺などを職場で共有する必要がないから」や「自身の人とのつながり(交友関係)を共有する必要が無い、したくない」といった、「個人で構築した顧客関係を社内共有して活用してもらいたくない」という声が寄せられた。導入希望者からはこうしたつながりを共有、活用できる点をメリットに挙げる方が多かったため、全く反対の主張が存在していることが分かる。
反対派の中には「個人情報の漏えいにつながる」「個人情報保護の不理解」といった指摘もあった。他にも「テレワークに移行しており名刺の受け渡しが無くなっている」や「コロナ禍の影響で社外の人と直接会うことが少なくなり、名刺をもらうことがなくなった」など、名刺交換の機会が減少していることから、企業導入では「費用対効果が合わない」という指摘もあった。
オンライン会議時の名刺交換どう対応すべきか
テレワークやオンライン会議が増えた昨今、前述のように名刺を使うシーンは減少、変容している。「オンライン会議開始時の名刺交換方法」において、最も多い方法は「自己紹介の際に口頭で相手の情報を聞きメモして控えておく」(45.3%)であった。
オンライン会議は両者の情報を共有して会議できて対面に近い手法といえる一方、「漢字や読み仮名の確認」や「メールアドレスのメモ」などで時間がとられると、会議時間に影響が出てくるなど懸念もある。次点は「打ち合わせ前後に電子メールで名刺情報を共有」(28.3%)や「名刺管理アプリでQRコードやURLなどを送って名刺情報を交換」(17.9%)が続き、「その他」には「名刺情報の交換自体を行わない」が挙げられた(図3)。
「オンライン会議時の名刺交換にまつわるトラブル」に関する調査項目では、「漢字が分からなかったり、読み仮名がメモできない。覚えるためのメモ書きもできない」や「オンラインでは氏名が表示されるので分かるが、その方が何を担当しているか分りにくい」など、これまでの名刺交換では即座に共有できていた情報が双方交換できないといった声が多く寄せられた。
他にも「自分が使っているアプリにオンラインで交換できる機能が実装されていない」や「人によってやり方が異なるので、統一規格があると助かる」のように、名刺交換手法をそろえるために気を使ったり、時間がかかったりするとの指摘もあった。オンライン会議時の名刺の取り扱い習慣はまだ確立されていないのが実際のようだ。
今回は前後編にわたり、個人および企業での名刺管理、活用の取り組み状況を紹介した。テレワークが進んだことでオフラインの名刺交換機会は減少傾向にあるようだが、管理ツールによるデータでの情報管理は進んでいる。今後も名刺を含む顧客情報の管理や有効活用を推進するサービスは拡充するとみられる。
なお全回答者数212人のうち、所属部署は情報システム部門が25.0%、営業/営業企画・販売/販売推進部門が20.7%、製造・生産部門が14.2%、経営者・経営企画部門が8.5%などと続いた。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、ご了承いただきたい。
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