PwCの米国会長兼シニアパートナーであるティム・ライアン氏は2022年8月9日、Washington Post Liveのイベントで、「出社か在宅かという議論は『過去の話だ』」と述べた。
例えば、一部の企業では、従業員を受け入れやすくするため、ハイブリッド型の勤務形態への移行を試みた。しかし、専門家は以前HR Diveに「このシフトでさえも、雇用者と従業員の足並みの乱れがいかにたやすく生じるかを明らかにした」と語っている。従業員に週2日出社するように求めるという一見単純なことが、従業員に対する信頼の欠如や仕事の進め方の理解の欠如を意味する可能性があるという。
従業員は「出社か在宅かではなく、別のもの」を求めている
ライアン氏によると、従業員は「出社か在宅かではなく、何か別のもの」を求めている。その「何か別のもの」とは「プロテクトされた時間」だという。プロテクトされた、つまり「保護された時間」は従業員にどのような価値を提供するのだろうか。
数年前、同社は12月のホリデーウイークに全社で休みを取るようになった。そのベネフィットに対する労働者からのフィードバックは「絶大だった」という。そこで同社は、通常の2〜3週間の休暇に加え、2022年は7月にもう1週間の休暇を設けた。
「全員が休暇を取ることは非常に価値がある」とライアン氏は言う。電子メールの量やプレッシャーが減り、社員は仕事から離れ、充電できる。従業員からのフィードバックは、このベネフィットがうまくいったことを示していると同氏は言う。
1週間の全社休業のような取り組みが活発化しているのは、市場で従業員の勢いが増していることの証明だ。「それは不況が訪れても変わることはない」とライアン氏は言う。
さらにライアン氏は「正直かつ謙虚に考えても、雇用主と労働者の力関係が元に戻ると思っている人は間違いだと思う」と続けた。
労働者優位の力は、高齢化や移民規制の強化、ギグワークの魅力の増大など、労働力を全体的に逼迫させる複数の“巨大なてこ”から生まれているとライアン氏は指摘する。雇用主にとっての問題は、「変化するために今何をすべきか」ということになる。
PwCはこの問題に取り組むために、「My+プログラム」という、PwCの勤務体系を再構築するためのテクノロジー中心のアプローチに数十億円を投資しているという。しかし、雇用における変化がどのように企業文化を形成し、維持していくかは、全ての企業にとってまだ大きな課題だと同氏は続ける。
ライアン氏は「私たちは皆良い仲間だ。雇用主も労働者も、企業全体でこの問題に取り組んでいる。私たちは、ある方法で文化を構築する方法を知っている。私も、私の世代の多くも、そうして学んできた」と言う。
オフィスが企業文化を形成し、伝達するための伝統的なスペースだったことは、さまざまな研究で分かっている。今、雇用主はオフィススペースに費やす費用を削減し、他のことを試すリソースを入手し、「従業員のリードに従っている」とライアン氏は話す。例えば、PwCはオフィスの経費の一部を他の方法で社員が集まれる場となるように投資している。
「現実的に世界が変わったということだ。良い方向に向かうと思う」とライアン氏は言う。
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