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クラウド電話の利用状況(2022年)/前編

働き方の多様化が進み、就労環境と併せて問題となるのが“会社に残された固定電話”をどうするかだ。オフィスに縛られない働き方が主流になりつつある現在、かつてはコミュニケーションの主役であった固定電話をどうすべきか。

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 自宅やサテライトオフィスなど職場以外で業務を進めることが増え、オンライン会議やチャットコミュニケーションが当たり前となった現在、会社の代表宛てや個人宛てに掛かってくる電話をどう受けるかが問題だ。その解決策として、「Teams電話」や「Zoom Phone」に代表されるクラウド電話がある。PBX(電話回線交換)をクラウドに置くことでスマートフォンなどからでも外線や内線を受電できる。

 本稿では、クラウド電話の利用状況についてキーマンズネット読者を対象にしたアンケート(実施期間:2022年9月26日〜10月7日)を基に、クラウド電話の認知度や導入状況、クラウド電話のトラブル事例などを紹介する。全回答者数220人のうち、情報システム部門が30.5%、製造・生産部門が15.9%、営業・販売部門が11.8%、経営者・経営企画部門が7.7%という内訳だった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

「クラウド電話、どこまで分かっていますか?」読者の認知度

 そもそも「クラウド電話」自体がどこまで認知されているのだろうか。読者に対してクラウド電話に関する認知度について尋ねたところ、「まあ理解している」が最も多く45.9%で、「名前を聞いたことがある(何ができるかは分からない)」が27.7%となり、「ある程度知っている」という層が多くを占めた。(図1)。


図1:クラウド電話についてどの程度知っているか

 次に勤務先におけるクラウド電話の導入状況について尋ねたところ、「全社で利用している」「一部の部門や拠点で利用している」は13.6%にとどまり、47.3%が「現在利用しておらず、今後も利用予定がない」とした。「現在は利用していないが、利用を検討している」とした人は21.4%であった(図2)。


図2:勤務先でクラウド電話を導入しているか

 この結果を従業員規模別に見ると、5001人以上の大企業では44.7%と約半数で導入済みだが、100人以下の中小企業においては1割弱だった。また101〜1000人規模の中堅企業では「全社で利用している」とした割合は高かったが、大企業においては部門や拠点を限定して導入している様子が結果から見て取れた。

 「クラウド電話を利用している」とした人に導入時期を聞いたところ、「2019年〜2020年頃」が4割と最も高く、コロナ禍による行動制限下で導入を決めた企業が多いものと予測できる(図3)。


図3:クラウド電話の導入時期はいつごろか

クラウド電話、導入の“決め手”となったのは?

 クラウド電話を導入するきっかけとなったのは、オフィスの受電問題の解決のためだけだろうか。次に、現在クラウド電話を利用しているとした人にその目的を尋ねた。

 その結果、「テレワーク対応のため」(63.3%)や、「電話の取り次ぎコストを軽減するため」(40.0%)、「オフィス新設や移転に伴う対応のため」(21.7%)などが上位に並んだ(図4)。

 その他の観点では「PBXの老朽化・サポート終了による切り替え対応のため」(31.7%)」もあった。PBXの法定耐用年数は6年と設定されているが、実際は6年を超えて使用することも珍しくない。だが、その場合、配線の劣化などにより電話業務が停止してしまうリスクもある。また、メーカーサポートの終了や修理部品の欠品などから、古いPBXを使い続けるには不要なコストがかかる場合もある。そうした問題への対応策としてクラウド電話に切り替えるケースも少なくないようだ。


図4:勤務先ではなぜクラウド電話を導入したのか

 クラウド電話を導入していると回答した人に対して重宝している機能を聞いた項目では、「代表番号での発着信」(38.3%)、「保留転送機能」(31.7%)、「ダイヤルイン(ダイヤルインサービス)機能」(31.7%)など、導入目的で上位に挙がった出社せずに電話の取り次ぎができる機能が上位に挙がった(図5)。

 他にも多くの票が集まったのが「メールやチャットとの連携」(33.3%)だ。チャットツールとAPI連携させることで受電の有無や着席ステータスを自動通知でき、テレワーク下での電話業務の効率化が見込める。こうしたコミュニケーションツールとの連携のしやすさも、クラウド電話の重要な選定ポイントとなるだろう。


図5:クラウド電話で重宝している機能はどれか

「音声品質がひどい」「休日に顧客から着信がある」クラウド電話のトラブル事例

 クラウド電話利用企業に対して満足度を聞いたところ、「とても満足」が8.3%、「満足」が56.7%となり、半数以上が満足と回答した(図6)。「満足」とした回答者からは「メールではなく直接音声で顧客とやりとりができる点に満足している」など、場所を問わず電話でのコミュニケーションが可能になったことを挙げる声や、「時間短縮につながった」と電話取り次ぎにおける効率化が挙がった。


図6:利用しているクラウド電話の満足度

 一方「不満」とした回答者からは「電話の転送操作が失敗する。画面が細かくて操作しづらい」「通信環境やPC周りが原因かもしれないが、たまにつながらなかったりアプリが起動しなかったりする」「クラウド通話全般に言えることだが、音質や通話の安定性が悪い」といった、使い勝手や性能に対する不満が多く挙がった。

 こうした不満は「想定外のトラブルに見舞われたケース」を尋ねた質問項目でも寄せられた。「回線トラブルやSaaS(Software as a Service)に関するトラブルの影響を受ける」「サービスがダウンした場合、電話がつながらなくなる」「IP電話機に着信が来ない。Wi-Fiで利用した際に通話品質が悪く通話が成り立たない」などだ。その結果「顧客から電話があった際に通話が不安定だとクレームを受ける」といったケースもあったようだ。また「業務がカレンダー通りではない顧客から、休日に電話がかかってきてしまう」「誰もログインしておらず、着電に応答できず長い時間不在となった」といった運用面での不備によって起きたトラブル事例もあった。

 一方で「トラブルはない」との回答も多く、おおむね問題はないとしている。ただし、今後導入を検討する際はこうした事例を参考に、二の舞にならないよう導入とともに運用面や想定されるトラブルなども考えたい。

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