ある調査によれば、離婚した人の67%が健康状態の悪化や経済的な負担を経験し、さらに多くの人が、1年以上の欠勤や生産性の低下に悩まされているという。近年、企業はさまざまな分野で福利厚生や手当を充実させてきたが、離婚した従業員へのサポートが行き届いていないこと、そればかりか企業の中で問題として認識さえされていないと専門家は話す。
離婚が従業員に与える影響
「結婚の約半分は離婚に終わる」というのは、米国でよく見られる統計だ。最新の米疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のデータはその統計を今も反映している。さらに、Good HousekeepingとSupportPayによる2022年の調査によれば、労働人口の約70%が常に離婚に影響されているという。しかし、離婚の多発はスティグマ(ここでは差別や偏見を指す)を生む。
財務管理システムSupportPayの創業者兼CEOであるシェリ・アトウッド氏は、離婚に際して男性同僚からシングルマザーであることを揶揄されたと振り返る。
「私はテクノロジー企業でバイスプレジデントの立場だったが、男性の同僚から仕事を続けられるかどうか常に聞かれた」とアトウッド氏はHR Diveに語った。
企業や人事担当者は、婚姻状況に関するハラスメントに加え、離婚が従業員のメンタルヘルス、ひいては生産性に及ぼす影響についても注意しなければならない。
Good Housekeepingの調査によれば、離婚した人の67%が健康状態の悪化や経済的な負担を経験している。さらに多くの人が、1年以上の欠勤や生産性の低下に悩まされている。
アトウッド氏は、離婚を「最大の混乱と注意散漫、そして生産性の低下」と呼んだ。同氏は自身の経験から、子供の親権に関する金銭的な追跡とスケジュール管理のプロセスを容易にするためにSupportPayを設立した。アトウッド氏はHR Diveに、自分の目標は円満な離婚のプロセスだったと話した。それでも同氏は仕事の会議中に元夫からの電話に悩まされ、子供に関することで苦悩があった。離婚して働く親としての日々の業務が、最も勤勉な従業員を疲弊させ、燃え尽き症候群を引き起こす可能性もある。
「SupportPayのようなものがなければ、表計算シートを使って元夫に領収書の写真をメールで送ることになる。元夫はそれほどお金がかかるとは思っていないので、相手に借りがあることを認識させなければならない。実際に口座に預金し、それに基づいて表計算シートを更新するために銀行口座をチェックする」とアトウッド氏は話す。
同氏はまた、共働きの親が直前に予定を変更した場合、その日の生活が狂ってしまうとして「一世帯だけでやるのは大変なので、世帯をまたがってやることを考えている」と説明した。
報酬と福利厚生の観点から、SupportPayは、社内コミュニケーションのベストプラクティスから、社外向けの声明、ユーザー向けウェビナー、1対1のサポートコールまで、職場の意識改革に役立つノウハウやサポートを企業に提供するとアトウッド氏は説明する。
「また、企業と機密情報を共有しないよう徹底しており、個人のメールアドレスでも登録できるようにしている」とアトウッド氏は言う。SupportPayがクライアントに報告するのは、このプラットフォームを利用している従業員の数だけだ。
人事担当者の管理負担を軽減することも重要なアプローチだ。SupportPayの一連のサポートに対して、ユーザーからは「そんなことは考えたこともなかった」という声が届くという。最近同氏の同僚が働く親についてのセミナーを開いたが、「シングルや離婚した働く親に言及することは思いもよらなかった」とアトウッド氏に伝えた。
アトウッド氏は、従業員サポートが報酬の分野にまで広がってきていることを認めている。
「葬儀の予定、忌引き、養子縁組、不妊治療、そして親になるための情報など、今日の企業はあらゆる手当や情報を提供し、素晴らしい仕事をしている。しかし、離婚となると、誰もそれについて語ろうとしない」と同氏は言う。
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