IT資産管理ツールの導入状況(2022年)/後編
キーマンズネットは「IT資産管理ツールの導入状況」に関する調査を実施した。後編となる本稿は、IT資産管理ツールの「選定・利用方法の変化有無」や「利用機能」「ツール導入時の重視ポイント」「資産管理のヒヤリハット」を紹介する。
キーマンズネットは2022年10月7〜21日にわたり「IT資産管理に関するアンケート」を実施した。前編では、IT資産管理ツールの「導入状況」や「利用形態」、ツールで管理する「対象端末」「1ライセンス当たりの導入コスト」を紹介した。
後編となる本稿では、IT資産管理ツールの「選定・利用方法の変化有無」や「利用機能」「ツール導入時の重視ポイント」を調査した。フリーコメントには、リース物品の廃棄や野良OSの放置といった“資産管理のヒヤリハット”が寄せられたので、併せて紹介する。
ハイブリッドワークでIT資産管理はどう変化した?
企業を取り巻く環境の変化を振り返った際、欠かせないのはコロナウイルスの世界的まん延だろう。テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークが注目されるなど、大きなパラダイムシフトが起きた。
そこで、IT資産管理ツールを導入・検討している企業に対し「働き方の変化がIT資産管理ツールの選定や利用方法にも影響を与えたのかどうか」を聞いた。その結果「やや変化があった」(23.5%)、「大いに変化があった」(6.1%)と全体の31.6%が何かしらの変化を生じたと回答した(図1)。
フリーコメントで詳細を聞いたところ、「テレワークに移行したためクラウド化や電子化を進めた」という回答が多く寄せられた。具体的には「自社も客先も同様にテレワーク用のHWとSWの導入があった」や「テレワークのデバイス管理に合ったツールを導入した」「資産管理ツールをクラウド化した」「紙ベースの決裁が電子化され、紙による申請がなくなった」などだ。
テレワークに対応する上で懸念されるのはセキュリティリスクだ。従業員が利用するPCやモバイルWi-Fi、スマートフォンなどの端末が増える一方、物理的な監視の目が減ったことで漏えいリスクが増えた。
こうしたリスクに対し「テレワーク用のデバイス管理項目(PC、ルーター、利用ユーザー、パスワード)を増やした」や「IPアドレスやユーザーPCに不要ソフトがないかどうかを監視している」など、IT資産管理ツールでセキュリティを強化したという意見が寄せられた。
ハイブリッドワークで利用が増えた機能
2021年10月の前回調査と比較して、利用している機能の上位項目は「資産台帳作成」(57.8%)や「ライセンス管理」(55.8%)、「ログ収集・監視」(53.2%)と変化はなかった。しかし、「資産管理台帳」が9.1ポイント、「ログ収集・管理」が4.5ポイント、「デバイス制御(外部機器接続の制御やデータ書き出しの禁止など)」が3.2ポイントと、柔軟な働き方を支援する機能が軒並み増加傾向にあった(図2)。
IT資産管理ツールを導入する際に「重視した(する)ポイント」を上位3位まで聞いたところ、重視するポイント1位では、前年1位であった「導入、運用のしやすさ」に次いで「管理項目、機能」がランクインした。利用が増えたモバイル端末やネットワーク端末の集中管理に役立つ機能へのニーズが見て取れる(図3)。
勝手に廃棄、端末紛失、通信障害……IT資産管理トラブル集
企業は情報漏えいやライセンス違反などで社会的信頼を失わないよう、セキュリティリスクに注意する必要がある。IT資産管理にまつわるトラブルや事故の事例を調査したところ、全体の20.2%がトラブルを経験していた(図4)。
フリーコメントで寄せられたトラブル事例では「リース物件や固定資産を部門で勝手に廃棄されてしまった」や「紛失(どこにあるのか分からない)、利用者が分からない」「シャドーITが横行している(現在進行形)」といった、正確に管理できないことによる事故が多く挙げられた。
また、「Officeのライセンス不足を把握できていなかった」や「ライセンス・サポート切れ」「ツールで認知できないOSエディションがあり放置されていた」など、ライセンス違反や更新漏れを起こした例もあった。
他にも、「アップデートの配信不具合による接続障害が発生」や「野良ルーターの影響で正規のインターネットADSLルーターにアクセスできなくなった」などのネットワークトラブルや、「管理表への登録し忘れ、削除漏れ」や「固定資産台帳に記載されて居ないものを発見した」「マニュアル管理のミス」といった人的ミスによる例も寄せられた。
働く環境の変化を背景に、IT資産管理ツールに期待が寄せられる管理の範囲は広がっている。一方で、運用ルールの徹底やネットワーク環境の構築など、ツールだけでは解消できない課題も多い。従業員のリテラシーを向上したり、周辺環境整備を組み合わせたりするなどして、環境変化に柔軟に対応できるIT資産管理体制を構築することが望まれる。
なお、全回答者数263人の内訳は、情報システム部門が38.8%、製造・生産部門が12.5%、経営者・経営企画部門が11.4%などだった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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