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コラム

Wi-Fi 6Eが登場 ルーターの“買い替えどき”はいつ?

2022年9月に、日本でWi-Fi 6の拡張版「Wi-Fi 6E」の認可が下りた。気になるデバイスやルーターの買い替えどきはいつなのか。この話題を機にSpaceXの衛星コンステレーションであるStarlinkの導入を画策したい筆者の思惑とは……?

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 キャンプの夜、寝ている家族を横目に、火の番をしながらPCを取り出してメールをチェックしてみた。どうもこのキャンプ場に電波が届きづらいようで、なかなか仕事がはかどらない。イーロン・マスク氏のSpaceXにて提供されている衛星通信サービス「Starlink」があれば、たとえ通信が厳しい場所でも仕事が継続できるはずだ。もちろん、キャンプに来てまで仕事はしたくないのが本音だが。


※キャンプの朝食で作ったビーフペッパーライス、お店と比べると当然ながら何か足りないようだ。

 インターネットにアクセスする通信手段において、無線LANは今や欠かせないインフラの一つだ。街中には無料Wi-Fiが多く展開されて、SSIDやパスワードを提示してそれらを利用できるカフェも多い。かくいう私も、原稿を書く際には喫茶チェーン店をよく利用し、Wi-Fiも利用させていただいている。ありがたい世の中だ。

 そんなWi-Fiの世界は定期的に拡張が続けられているが、電波法施行規則などの一部を改正する省令の公布により、日本で2022年9月に「IEEE802.11ax」、通称Wi-Fi 6の拡張版「Wi-Fi 6E」の認可が下りた。1999年に5GHz帯が登場して以来、20年以上ぶりに新帯域6GHz帯が加わったことで、幾つかのメリットが期待できるという。デバイスやルーターをリプレースするチャンスになることは間違いないが、買い替えのタイミングはいつなのか。

Wi-Fi 6Eが登場 デバイスやルーターの“買い替えどき”はいつ?

 無線LANに関する新たな規格が登場するたびに記事内でも紹介しているが、Wi-Fi 6Eに関しては拡張版(Extended)のEナンバーだからなのか、さほど大きな話題にはなっていないように感じる。

 確かに目新しい情報が少し乏しいのが現実で、記事が書きづらいのが本音だ。新たに6GHz帯が解放されたという目新しさ感はあるものの、基本的にはWi-Fi 6の技術を踏襲しているため、紹介するポイントが少ない。

 もちろんWi-Fi 6Eにもメリットはある。日本の場合、Wi-Fi 6Eにおいては5925〜6425MHz(米国では7125MHzまで)が無線LANで利用可能になったので、Wi-Fi 6の懸念点であるDFS(Dynamic Frequency Selection:動的周波数選択)の影響がないことは大きいだろう。5GHzでは気象、航空レーダーなどに利用されているW53やW56といったチャネルでの信号を感知した場合、別の干渉しないチャネルに切り替えるDFSの仕組みが働く。しかし、新たに解放された6GHz帯では干渉もなく高速な通信が可能になると期待されている。

 しかも、チャネルを束ねてボンディングする際は、160MHzであれば3チャネルほどが利用できるので、Wi-Fi 6Eを利用すれば大容量の通信が必要なアプリケーションも使える可能性は高い。混雑しがちな5GHzではなく、制約の少ない6GHz帯が利用できるようになることで、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などデータ量の大きな通信に対応できるようになるだろう。利用シーンの幅も広がるはずだ。

 ただし、6GHz帯は5GHz帯のW56というチャネルに比べては出力が大きくなるよう設定されていない。広帯域ながら劇的なスループット向上につながるかどうかは、環境次第というのが現実だろう。

 Wi-Fi 6Eにおけるデバイスの対応状況はどうだろうか。すでに幾つかの無線LANメーカーは、一部のアクセスポイント(AP)でWi-Fi 6Eに対応したチップセットを搭載したモデルを提供している。これから先、APを調達する際は数年先を見越してWi-Fi 6E対応のモデルを選択することになるだろう。

 すでにWi-Fi 6Eのチップセットを搭載した端末も多く出回っているが、対応には地域差がある。日本国内の場合は、技術基準適合証明、いわゆる技適を受けた機器以外は使用できないため、現状流通している機器で6GHz帯を使えない。多くのユーザーが6GHz帯のメリットを享受するのは、これから発売される機器が技適を受けてからになるだろう。

 日本に多くのユーザーを持つAppleの「iPhone」や「iPad」についていえば、2022年11月時点でWi-Fi 6Eをサポートしているモデルは「iPad Pro」の11 インチ(第4世代)モデルおよび「iPad Pro」の12.9インチモデル(第6世代)だけだ。しかも中国本土または日本では利用できないと記載されている。

 なお、Wi-Fiのルーターについては、NECやバッファローなど既に幾つかのベンダーが対応モデルを出している。ルーターはリプレースのチャンスが少ないのでWi-Fi 6Eの展開を機にぜひ買い替えたいものだが、ひとまずは端末側の対応を待つことにはなりそうだ。

 そうこうしているうちに、次世代の規格である「IEEE802.11be」の「Wi-Fi 7」も近い将来利用できるようになる。チャネルを束ねるボンディングによって最大320MHzのチャネルを利用でき、複数のバンドとチャネルで同時に端末と送受信できるマルチリンクオペレーション(MLO)が実装されることで、高いスループットと低いレイテンシが期待できる。新たな規格の登場がすでに見込まれている今、Wi-Fi 6Eに一喜一憂する人が少ないのかもしれない。

無線LANよりもStarlink、我が家の予算が通るめどもなし

 すでに自宅で利用する無線LANは、Wi-Fi 6対応が進んでおり、快適な通信を実現しているが、Wi-Fi 5の段階でも快適な通信は実現できていたのが正直なところだ。オフィスに出社する機会の少ない私にとって、Wi-Fi 6Eへの興味はそれほど高くないのが現実だ。多くのユーザーがWi-Fi 6Eに触れるのは、しばらく先となりそうであるし、これを機にStarlinkを購入するのはどうだろうか。

 キャンプや山歩きが趣味の私にとって、電波の届きづらい山間部などに足を運ぶ機会が多いため、Starlinkのほうが断然興味関心の度合いが高い。ITmediaの記者のなかには、すでにStarlinkを試している人もいるようだ。

 とはいえ、Starlinkキット(ハードウェア)は税込で7万3000円、月額の通信費で1万2000円を超える。この金額のものを、ちょっとした興味で導入するわけにはいかない。もちろん、財務大臣である家内に、予算申請だけでもしてみるつもりだ。予算を勝ち取る根拠は、今のところ持ち合わせていないのだが。そもそも利用時には大きなアンテナの設置が必要でスマートフォンだけで利用できるサービスではないので、まだまだ身近なものとはなり得ない。

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