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情シスのメンタルを疲弊させる社内ヘルプデスク業務の実態

情シスの主な業務として社内の従業員からの問い合わせに対応するヘルプデスクがある。社内ヘルプデスクの担当者は見えない業務やストレスを抱えがちだという話をよく聞く。担当者のコメントからは日々の業務の苦労が見て取れた。

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 キーマンズネット編集部は2023年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「電帳法/インボイス」「Windows 11」「社内ヘルプデスク」「音声コミュニケーション」「デジタルスキル」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2022年11月11日〜12月12日、有効回答数654件)。企業における2023年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 第4回は「社内ヘルプデスク」の調査結果を紹介する。社内ヘルプデスクの件数や対応人数、対応チャネルの他に、よくある問い合わせや印象的な問い合わせなどを募った。

社内ヘルプデスク業務はつらいと言うけれど……実態調査

 社内ヘルプデスクで利用しているチャネルを聞いたところ、「メール」(74.8%)、「電話」(71.1%)、「Webフォーム」(31.2%)がトップに上がった。いずれも有人対応を必要とするもので、無人対応で完結するマニュアルやFAQシステム、無人チャットといったチャネルよりも多く利用されていると分かる(図1)。


図1 問い合わせ対応のチャネル

 有人対応による社内からの問い合わせの件数は「0〜10」(74.0%)が最も多く、「11〜20」(14.6%)、「31〜40」(2.8%)が続いた(図2)。当然のことだが、従業員数が多くなるにつれて、問い合わせ件数も多くなる傾向があった。なお、コロナ禍のテレワークで非対面のコミュニケーションを支えるツールが多く導入された。新しいシステムの導入が進む中で問い合わせ件数は増えたのだろうか。これに関しては、「変わらない」(75.8%)が最も多く、「増えた」(19.4%)、「減った」(4.7%)が続いた。


図2 社内ヘルプデスクの1日当たりの件数

 また、問い合わせ対応の人数については、「1〜5人」(86.6%)が最も多かった(図3)。なお、5001人以上の大企業であっても45%の企業は1〜5人の担当者で社内ヘルプデスクに対応していることが分かる。社内ヘルプデスク業務の量は、従業員規模に対する担当者の人数だけでなく、利用しているシステムの数や量、従業員のリテラシーも影響するが、どの企業帯でも数人での対応がメジャーであることから人手不足に苦慮している企業もあるのではないかと想像できる。


図3 社内ヘルプデスクの対応人数

 実際に、社内ヘルプデスク業務にまつわる課題について聞いたところ、「人手不足で待ち時間が発生する」(21.3%)は4位に挙がった。トップ3は、「対応に時間がかかる」(36.2%)、「社内のナレッジが蓄積されている場所がない」(27.7%)、「社内ポータルやFAQを検索しても該当の問題にたどり着けない」(25.5%)だった(図4)。


図4 社内ヘルプデスクの課題

情シスが印象的だった社内からの問い合わせ

 担当者にはどのような問い合わせが寄せられるのだろうか。フリーコメントで聞いたところ、よくある問い合わせ内容としては「インターネットにつながらない」「プリンタで印刷できない」「メールの送受信ができない」「初期不良」が多いようだ。

その他も「よくある相談」「印象的な相談」として以下のようなコメントが寄せられたが、端々から回答者の苦労や悲哀がうかがえるものばかりが並んだ。

<よくある問い合わせ、事象など>

  • 初期的な故障不具合が多い。
  • 新しく人が入社するたびに同じような質問が繰り返される。
  • 多くの場合、不具合を発生させた本人はその自覚がない。「急に、勝手に動かなくなった。私は何もしていない」と言う。
  • とにかく分からないと言って何でも聞いてくる。
  • 「パスワード忘れた」「ログインできない」という問い合わせは未来永劫続く。
  • 自己流でいらんことをして完全に壊してから「なんかおかしい」と言ってくるのが多過ぎ。
  • スマホ操作の問い合わせが多い。
  • ウイルスメールなどの判別をしてほしいという問い合わせを受ける。
  • 電話対応に終始しており、チャットbotやオンラインマニュアルの活用ができていない。
  • マニュアル、FAQサイトを閲覧せずに電話をかけてきて、解決方法を説明しても解決するまで電話を切ってくれない。
  • 機器トラブルやオフィススイート製品の操作周りに関する対応が中心。対応に2秒で終わるようなものばかり。
  • このメールは開いてもいいのかというような、なりすましのようなメールを一緒に確認することが時々ある。大体が少し気になる時点で開く必要がない、開かない方が良いものであるとあらためて感じた。
  • PCの電源を入れたら、英語のメッセージがでて動かない。
  • 印象的には、パッチチューズデー(Microsoft製品の月例セキュリティ更新プログラムのリリース日)後のブルースクリーン発生やWindowsが起動できなくなるなどの事象が増えている。
  • 営業員に営業用ツールとしてタブレットを配布しているが、基本的な操作の問い合わせが多く、使いこなせていないと感じる。
  • 画面にエラーメッセージが出ても、そのメッセージを読まない・記録しないで連絡してくるケースが多い。
  • 専用の総合窓口を設けていてもなぜか個人宛に問い合わせがくる。

<印象的・苦労した対応案件>

  • 良く分からないメールが来たので、添付ファイルを開いてみたら、英語の資料が出てきた。どうすればよいか。
  • 「『Microsoft Word』で作ったデータが無くなった」との問い合わせがあり、確認したら『Microsoft Excel』だった。
  • 古いPCのデータの引っ越しを依頼された。
  • 無断でインストールしたソフトウェアの使い方を聞かれ、回答に困った。
  • メールドメインを、なぜか別部署単独で契約しており、勝手に解約しようとしていた。社内全体に影響が出る寸前だった。
  • 拠点からPCがインターネットに接続できないとの障害報告があり、調査した結果ひかり通信のONU(Optical Network Unit)の故障が判明。通信会社に連絡し、なんとか当日中に復旧させた。
  • ネットワーク接続できない原因がケーブル抜けかけだった。
  • PCにみそ汁をかけて動かなくなった
  • 「PCにコーヒーがかかって動かなくなっちゃったんですけど、どうしたらいいですか?」という問い合わせがあった。
  • PCの動きが悪いので見てほしいと言われたが、数カ月再起動していないことが分かった。
  • 「文字が勝手に打たれ続けている。ウイルスか?」と問われた際、理由を調べたところキーボードにかばんがのっていた。
  • 営業拠点で(ネットワークの)ループ現象に陥り、解消するまで電話で30分以上指示を出していたこと。
  • EDI(Electronic Data Interchange)受注データのExcelによる文字化け問題。ダウンロードしたUTF-8データは正しかったが、直接Excelで開き保存してしまったためシフトJISになって文字化けが発生していた。ExcelのUTF-8を開くときの方法や、シフトJISとUTF-8の違いなどを説明するのに苦労した。
  • 「Wordの文字が消えている」という問い合わせがあった。ユーザーが目への負担から、Officeのテーマを「黒」くしていた。その場合、標準的な文字が白くなる。背景に白い画像データを使用していたため文字が視認できなくなっていた。

<理不尽なクレーム>

  • クレーマー的な従業員がいる。
  • 掲示板に「何月何日から公開します」と掲示しているのに、公開日前に「システムが公開されてない」とクレームを入れてくる人がいた。
  • メールでの問い合わせに対する遅延を指摘された。
  • デスクトップ上のアイコンの位置に変更があっただけで問い合わせがくる。

<業務外の問い合わせ>

  • システムと関係ない業務への質問があり、回答したところ喜ばれた。
  • 「Excelの関数が分からないから教えてくれ」と言われた。
  • 「年休どれくらい残っていますか?」と聞かれた。

<マニュアルがあっても有人対応が必要だった案件>

  • 「自分で調べられないから代わりに調べてほしい」と丸投げされたことがある。
  • 周知事項やリリース情報を一切見ずに問い合わせしてくる従業員が少なからずいる。
  • 業務手順書を読めば分かることを都度問い合わせてくる職員(決まった職員)がいる。問い合わせ内容よりも、各職員に対する教育やヘルプデスク体制の周知がまずは重要だと感じる。
  • 従業員一律にて確認を依頼している最低限ルールを記載したファイルを確認しない従業員ほど問い合わせ内容が不適格と感じる。

<その他>

  • キーボード入力すら面倒だと思っている人が割と多い。
  • 「ライバルが変装してきた」という問い合わせがあった。
  • たくさんありすぎて印象に残らない……。
  • 人によって理解度がさまざまなため、対応が難しい。

 これらのコメントを見ると、日々の問い合わせ対応工数は、Windowsのアップデートといった不可抗力な事象だけでなく、従業員のITリテラシーや習慣に左右されることが分かる。「人によって理解度が違うために、対応が難しい」というコメントからも分かるように、問い合わせをしてくる従業員のITリテラシーによってはフォローに多くの時間を費やさければならない場合もある。仮に、マニュアルやFAQシステムなどを作成したとしても、それを見てもらえずに同様の質問が繰り返される場合もあり、担当者の工数増加や徒労感につながる。

 その他、「クレーマー的な従業員がいる」というコメントも寄せられたように、露骨に負の感情をぶつけられるケースもあり、担当者のストレスがたまる場合もあるだろう。社内ヘルプデスクの業務量や精神的負担といった悩みを解決する方法は、情報の整理や、従業員教育によるリテラシーの向上、業務の外注、無人対応を増やすためのシステムによる仕組み化といった方向性で模索できる。詳しくは、「「『IT介護がつらい……』ヘルプデスク担当者の苦悩と3つの対応策」で専門家が解説しているのでぜひ見てほしい。

問い合わせ対応工数を減らすために導入したいシステム

 問い合わせ対応工数を削減する方法として、システム化があるという話をした。実際に読者が利用してみたいツールはどのようなものか。調査の結果、「ナレッジ共有ツール」(42.4%)、「チャットbot」(31.8%)、「FAQシステム」(27.2%)、「RPAなどの業務自動化ツール」(20.3%)、「音声自動応答」(9.0%)という順番で回答が多かった(図5)。


図5 今後利用したいツール

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