2023年もWindows 11は「様子見」、Microsoftの“賭け”が失敗した原因は?
AndroidアプリのネイティブサポートやTeamsの統合、UIの大幅刷新など、MicrosoftはWindows 11の魅力を強調するが、ユーザー企業は「静観」を続ける。Windows 11はこのまま「失敗作」に終わるのだろうか。アンケート調査からその答えと原因を探る。
キーマンズネット編集部では2023年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「電帳法/インボイス」「Windows 11」「社内ヘルプデスク」「音声コミュニケーション」「デジタルスキル」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2022年11月11日〜12月12日、有効回答数654件)。企業における2023年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。第4回のテーマは「Windows 11」だ。
調査サマリー
- Windows 11、「移行完了」は5%、32.9%が「Win 10をサポート終了まで使う」
- 「ハードの要件対応」ではない、移行の最大のボトルネック
- Windows 11、大失敗の原因はユーザーとの「溝」にある?
対応機種であり、かつ「Windows 10」がインストールされているPCならば、無償でWindows 11にアップグレードが可能だ。Microsoftの公式Webサイトには「対象となるシステムに対する無料アップグレードに特定の終了日は設けていません。しかし、Microsoft は無料アップグレードに対するサポートをいずれ終了する権利を留保します」とあり、将来的な有料化をほのめかす記述があるが、本稿公開時点では無償提供期間は定められてはいない。
また、Microsoftは「Windows 10 Home/Pro」のダウンロード販売を2023年1月31日をもって終了すると告知した。Windows 10の提供を徐々に縮小するとともにWindows 11への移行を促すのが狙いだ。
Microsoftはリリース当初からWindows 11への移行促進に取り組んできたが、IDCが発表した「2021年通年の国内トラディショナルPC市場実績値」によれば、2021年第4四半期(10月〜12月)の出荷台数は同期比34.1%減となり、Window 11がPC市場にインパクトを及ぼす起爆剤となることはなかった。そして、リリースから1年以上が過ぎた現在でも、普及率は上がっていないようだ。このままWindows 11は「失敗作」に終わるのだろうか。
本稿ではアンケート結果からWindows 11への移行、検討状況を明らかにするとともに、ユーザーのコメントから「移行が進まない原因」を探る。
Win 11への移行は「まだ静観」、ハード対応以外のボトルネック
アンケート回答者の勤務先におけるWindows 11への移行状況と移行方針を尋ねた結果をまとめたものが図1だ(企業規模別)。「移行が完了した」とした割合は全体の5%程度で、3割強が「利用しているOSのサポートが終了するまで移行はしない」とした。
「移行を計画中」とした割合は従業員数5001人以上の大企業が高く(38.5%)、100人未満の企業では半数近い45.5%がサポート終了となる日までは現OSを使い続けるとした。
Windows 11に「移行する予定はない」「利用中のOSのサポートが終了するまでは移行しない」とした回答者にそう判断する理由を尋ねたところ、最も大きなボトルネックは「ハードウェアの要件対応」以外にあった。
最も回答が集中したのが「アプリケーションの互換性調査が煩雑なため」で46.2%、「急を要することではないため」「移行メリットを感じないため」が同率で37.7%となり、これらが移行をためらう理由のトップ3となった。
業務アプリケーションの互換性チェックは、アプリそのものがWindows 11に対応しているかどうかを調査するところから始まり、対象アプリがインストールされているPCの特定や、アプリ周辺ドライバの互換性確認などチェック項目が広範囲にわたる。正確な現状把握と適切なIT資産管理が必要であり、相応の時間と工数を要することから、互換性調査が大きなハードルになっているとみられる。
「現時点ではWindows 11に移行しない」理由として「要件対応のためにPCをリプレースする必要があるため」とした割合は22.0%だったが、「Windows 11を全社、または一部の部署部門で移行した」とした回答者に対して「インストール要件対応のためにPCをリプレースしたか」と尋ねたところ、「一部のPCをリプレースした」が59.3%、「全てのPCをリプレース」「リプレースはしない」が19.4%となった。
Windows 11、大失敗の原因はユーザーとの「溝」にある?
MicrosoftはAndroidアプリのネイティブサポートやUIの大幅刷新、「Microsoft Teams」の統合などをWindows 11の特徴としているが、ユーザーが本当に求めていることはそこなのだろうか。アンケート回答者に対して「今後のWindows OSに求めること」をフリーコメント形式で募ったところ、意見を4つに分類できる。
最も多く寄せられた回答が「これ以上の改良は求めない」「機能よりも安定したOSを提供してほしい」といった意見だった。OSとしては必要十分は機能を備えているため、今後は機能追加ではなく、安定性や長期的な利用を考慮したOSを提供してほしいというコメントが多数を占めた。
現状維持、シンプル化を望む声
- セキュリティ面の強化は必要だが、これ以上大幅な改良は望まない。システムへの影響が少ない改良としてほしい
- OSのバージョンが変わるだけでアプリが動作しなくなるような仕様変更はやめてほしい
- OSなのに機能が多すぎる。もっとシンプルにして動作を軽くしてほしい
ユーザーインタフェースや操作性に関する意見
- 過去のUIや操作感を残してほしい。誰もが新しい仕組みに切り替えられるわけではない
- 改良が加えられるのは結構だが、必要な操作は変えないでほしい
OSの長期利用、軽量化を望む声
- 新しいバージョンに乗り換えなくても継続的に利用できるようにしてほしい(乗り換えの判断はユーザーが決められるようにしてほしい)。
- Windows 11では(PCに)少し高めのスペックが要求されたが、低スペックでも動作するようOSを軽量化してほしい
- レガシーもサポートしながら、(長期的に)業務で利用できるのがWindowsの強みだと思う。古いソフトウェア資産も動作可能(最小限の修正などで移行可能)にしてほしい
運用、管理に関する意見
- 「Windows Update」でネットワークの帯域が窮迫することがしばしばあるので、ギガバイトオーダーのアップデートは日を分散して実施してほしい
- 自動更新設定にすれば大丈夫だと思っている従業員が多くて管理が面倒なので、管理が容易なOSにしてほしい
Windows 10は2025年10月14日でサポート終了を迎える。残された時間は3年弱だが、OSの移行に加えてアプリケーションの対応やPCのリプレースなどを考慮すると、決して長い時間とは言えない。まだ移行事例はそう多くはないが、情報収集を進めつつIT資産の棚卸など、少しずつ準備を始めてみてはどうだろうか。
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