チャットツールの利用状況(2023年)/前編
キーマンズネットは企業における「チャットツールの利用状況」に関する読者調査を実施した。「Microsoft Teams」などが社内のコミュニケーションツールとして多用されているものの、さまざまな課題があることが分かった。
メールや音声コミュニケーションツール、Web会議ツールなど社内のコミュニケーション手段が多様化している。中でも「Microsoft Teams」は手軽に利用できることから、多くの企業で導入されている。調査の結果、大企業を中心に「チャット」の利用率は8割を超え、大多数の企業で活用されていることが明らかになった。
恒常的にテレワークを実施している企業が23.7%(キーマンズネット調べ、関連記事参照)に及ぶ中、今回は企業における「チャットツールの利用状況」やコミュニケーション課題、課題の発生原因について調査した。
コロナで増幅したコミュニケーション課題 プロジェクトから会社全体にまん延も?
コロナ禍を機に在宅勤務や時差出勤などテレワーク環境を整備する企業が増え、生産性や業務効率化が取り沙汰される一方で、依然としてコミュニケーションが課題だ。そこではじめに従業員間のコミュニケーションでどのような課題があるのかをフリーコメント形式で聞いた。
メンバ―と管理者間でのコミュニケーション課題
- どのようなタスクが残っているか整理されておらず、手が空いている従業員に対してタスクを割り振れていない
- テレワーク主体となっていることで社員の業務状況がつかみづらくなっている
次にコミュニケーションツールが複数あるにもかかわらず、運用ルールが決められていないことで情報が分散してしまっているとの声があった。
- コミュニケーションツールが複数あり、情報を探すのに時間がかかる
- メール、チャット、Web会議など複数のコミュニケーション方法があり、どこでどの話をしていたのかが分からなくなる
プロジェクト内だけでなく部門間の課題も多く寄せられた。コミュニケーション機会が限定的かつ固定化してしまっているケースもある。
- 事業所ごとに文化があり、事業所を横断した横の連携が疎い
- 組織の縦割りが強く、組織を超えたコミュニケーションが弱い。全社での創発的なコミュニケーションの場がない
こうした状況が続くと、顧客とのつながりやノウハウ、スキルといった社内資源が活用できなかったり、会社全体の本質的な課題を見落としてしまったりする懸念がある。中には「若手社員の育成」や「会社への帰属意識の醸成」へのマイナス影響を嘆く声もあった。
世代間で「モラル」や「スキル」にギャップあり? コミュニケーション課題の発生原因
ただ、コミュニケーションを困難なものにする根本原因は働き方だけではなく、その他にも要因があるはずだ。
考えられるコミュニケーション課題の原因について聞いたところ(回答者数:384人)、「チームの文化や組織の構造」(46.1%)、「チームメンバーのスキルやモラル」(37.0%)、「ツールやシステムの仕様」(26.0%)が上位に挙がった(図1)。
以下のように、「その他」では関連会社や部門間での情報連携の仕組みが未整備だという声が挙がった。
- 関連会社との連携も多いが、両者が同じツールを導入できるとは限らずデータ連携は難しいことがある
- 上流工程と下流工程の間の情報交換が少なく、部署間の連携、引継ぎがうまくいっていない
- 部署間連携の問題でお客さまからのクレームが発生する場合がある
従業員規模別に見ると「チームメンバーのスキルやモラル」と「マネジャーの管理能力」の2項目については従業員規模が小さくなるほど回答の割合が大きい傾向にあり、中小企業では3〜4割がこれらを原因と捉えている。
例えば「上司が連絡手段を電話のみと強要する、急ぎではない用件を帰宅後や休日も平気で連絡してくる」や「Web会議やチャットで作業の割り込みが多発し、タスクに集中できないことがある」といったコミュニケーションルールの設定や運用ができていないといったケースだ。
他にも「世代間のコミュニケーションギャップがある。若手は個対個のコミュニケーションを好む傾向にある」や「中国企業であり、中国人が多くその大半は日本語能力が十分ではない。WeChat(中国Tencentが開発したインスタントメッセンジャー)を使って連絡をしてくるが、休日や時間外もお構いなしに連絡が入り気が休まらない」など、世代間の考え方や他国との文化の「ギャップ」がコミュニ―ション課題を引き起こしているのでは、という指摘もあった。
チャット利用率は2年半で30.3ポイントと激増 最も利用されているツールは何?
テレワークを取り入れた働き方にシフトする企業が増えたことも背景にビジネスでも「チャット」によるコミュニケーションを採用するケースが増加した。既に84.6%と大多数の企業で活用されている状況だ。
今回と同様の調査を実施した2020年8月は54.3%、前回調査の2022年1月は82.5%であったことから、2年半で30.3ポイントと急激に増加傾向にあることが見て取れる。
企業の規模別に見ると、1001人以上の大企業では導入が進んでいる(90.9%)半面、100人以下の中小企業では7割にとどまっており、従業員規模による差が大きい。利用している企業では、電話やメールからビジネスチャットに完全に置き換える形ではなく「第3のコミュニケーション手段」として活用しているケースが多い印象だ。
Microsoft Teamsが圧勝
利用ツールは「Microsoft Teams(66.4%)」が最も多く、次いで「Slack(13.8%)」「Google Chat(7.6%)」「LINE WORKS(6.8%)」で、その他には「WebEx」「Skype」などのWeb会議ツールや「サイボウズ Garoon」「desknet's NEO」といったグループウェアの名前が挙がった(図2)。
2022年1月に実施した前回調査と比較すると、依然としてMicrosoft Teamsの利用率が高く、前回からの増加割合も10.2ポイントと最も大きかった。SlackやLINE WORKSなど追随するサービスは利用率を上げてきているものの差は広がっている様子だ。
以上、前編では企業におけるコミュニケーション課題と発生原因を中心に、台頭する第3のコミュニケーションツールであるビジネスチャットの利用状況に触れた。そこで後編では本ツールの満足度や課題、今後への期待についての調査結果を展開していこう。
なお、今回の調査は2023年1月6日〜20日にわたり「チャットツールの利用状況(2023年)」と題して実施した。全回答件数は384人。回答者の所属は情報システム部門が31.5%、製造・生産部門が19.3%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が12.2%、マーケティング部門が4.9%だった。
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