ChatGPTで業務効率化? 自動化実現を目指す日本企業に「足りないこと」(1/2 ページ)
「自動化を信頼しない企業は2026年時点でリスクに直面する」と専門家は警鐘を鳴らす。グローバルな競争力を保つために、日本企業が取り組むべきこととは。話題の会話型AIの導入事例もあわせて紹介する。
IT専門の調査会社IDC Japan(以下、IDC)は2023年1月27日、オンラインイベント「IDC Japan FutureScape 2023−破壊的変化の嵐に打ち勝って、デジタルビジネス時代の勝者になろう!」を開催した。「企業価値を高めるデジタルインサイト―持続可能な組織のために何をすべきか」と題したセッションでは、「自動化の信頼」をテーマに企業担当者が高度な自動化を実現するために留意すべきことは何かが語られた。
一貫性に欠ける日本企業の投資
IDCは「2026年の時点で、国内の『Global 2000』企業の60%は、検証済みの自律技術システムが起こすアクションを信用しようとしない現場スタッフとビジネスリーダーが原因で、重大なリスクに直面するだろう」と予測する。要するに「自動化システムやプロセスに対して懐疑的な従業員は、ビジネスの成長を阻害する存在なる」というのだ。
IDCでソフトウェア&サービス担当リサーチマネジャーを務める飯坂暢子氏は、「検証を重ねて導入した自動化システムに否定的な従業員を擁することは、ブランド失墜、人材流出、機会損失を引き起こします」と警鐘を鳴らす。
ブランド失墜が引き起こすリスクは、売り上げや利益の減少、株価の下落などが挙げられる。自律システムを否定した非効率、かつ不適切なビジネスプロセスに固執すれば、株主などから「成長が見込めない企業」だと判断されてしまう可能性もある。
自動化で処理できるマニュアル作業を担当する従業員は、疲弊したりモチベーションが低下したりして退職する。そのため、企業は慢性的な人材不足に見舞われる。
さらに、従業員が最新技術に対して共通認識を持てないために自動化が進まず、結果として機会損失につながる。飯坂氏は「高度な自動化を実現するにはその特性を理解し、適正に活用することが不可欠です」と指摘する。
では、そのような状況で、日本企業がこれから取り組むべきことは何か。飯坂氏によれば、その鍵は「投資の一貫性」にあるようだ。
IDCは「グローバル規模で比較すると、日本企業は自動化の範囲が狭く、投資の一貫性が欠ける傾向にある」と分析する。同社が2022年9月に実施した調査によると、「2022〜2023年でどの業務プロセスに自動化の投資を優先させるか」という問いに、日本企業は「受注からデリバリーまでのリードタイム短縮」や「従業員のオンボーディング」など、限定的な分野での投資を優先する傾向があった。一方、グローバル企業では「顧客エクスペリエンスの向上」や「サプライチェーン管理」「受注から現金化までの期間短縮」といった、包括的な領域を重視する傾向が強かったという。
こうした傾向について飯坂氏は、「日本企業は投資範囲が狭くて一貫性に欠けています。例えばリードタイム短縮は重視しますが、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(注1)短縮への投資は低い。両者は強く関連していますから、どちらか一つに投資を優先することはちぐはぐなのです」と指摘した。
また、IT人材をめぐる状況についても、日本とグローバルではその違いが明らかになった。日本はソフトウェア開発者の需要が高いものの、おしなべて他の職種も不足している。一方、グローバルではITセキュリティの専門家とITプロジェクトマネジャーに対する需要が高かった。
さらに、日本ではデータサイエンティストの数も不足している。飯坂氏は「こうした業種の人材不足は、ITサプライヤーだけが抱える課題ではありません。ITユーザー企業側のリソースも有効活用し、一部内製化を適正に進めながら人材不足を解消していく必要があります」と訴求した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.