STEM分野で働く人は何割? IBMが調査結果を発表
IT人材不足が厳しい昨今、STEM教育の必要性が叫ばれている。日本でSTEM分野で働く人はどの程度いて、STEM分野に興味がある人はどれくらいいるのか。IBMの調査で明らかになった。
2023年3月6日、日本IBMは13カ国14000人以上の学生や転職希望者、求職者を対象に実施したSTEM(科学、技術、工学、数学)分野のキャリアに関する調査結果を発表した。日本は世界と比べてSTEM教育が遅れていると言われるが、実態はどうなのだろうか。
国内におけるSTEM分野の雇用状況は?
日本ではIT人材不足が叫ばれるが、実際、STEM分野の仕事に就いている人はどの程度いるのか。
同調査によれば、「現在STEM分野の仕事をしている」と回答した人は学生が5%未満(5%未満の数値は非開示)、求職者(現在仕事に就いておらず求職中の人)が10%、転職希望者(現在仕事に就いていて求職中の人)が8%だった。世界全体における割合よりもわずかに少ない結果となった。
「STEM分野の仕事に興味があるが、現在はSTEM分野の仕事をしていない」と回答したのは学生は40%、求職者は41%、転職希望者は48%だった。この結果を世界全体で見ると学生は51%で、特に学生のSTEM分野への無関心が課題となりそうだ。
そもそも、日本は世界と比べてSTEM分野の仕事に関する認知度が低いようだ。STEM分野の仕事について「よく知っている」「ある程度知っている」と回答したのは学生は19%、求職者は31%、転職希望者は22%だった。日本IBMによれば、「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した人の割合は、国別に見ると日本はフランスに次いで2番目に低い。「知らない」と回答した学生の割合は日本が最も高い数値を示した。
自信がない求職者たち
別の質問では「適切なスキルを持っていないためSTEM分野で働く資格がない」と回答した人の割合が各属性で約6割に上った。そもそもSTEM分野に触れる機会が少ないため興味も湧かず、スキルも身に付かないため、そういった分野で働くイメージが持てない人が多いのかもしれない。
こういった状況を打破するには、より開かれた教育機会が必要だ。日本の高等学校では2022年度から「情報1」が必修科目となり、全ての学生がプログラミングやネットワーク、データベースの基礎等について学習することになった。IBMも「IBM SkillsBuild」と称した無料の教育プログラムを提供している。セキュリティやデータ分析、クラウドコンピューティングなどのテクノロジー分野について、オンラインで学習できる。オンライン学習サービスの「Udemy」とも提携し、希望者が同サービスのプログラムの一部を無料で受講することもできる。
教育機会が充実することで、これまでSTEM分野に触れてこなかった人も参入しやすくなる。効果が出るまで時間はかかるだろうが、日本のIT人材不足解決への一手となるか、注目したい。
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