米国でIT系男子の意味を指す「Tech bro」という言葉がある。IT業界に従事する高収入の男性を意味する言葉のようだが、こうした人材の多い企業、あるいはTech broの雰囲気を持つ企業は優秀な人材を逃す可能性があるという。一体なぜか。
なぜ、高収入IT系男子が多い職場に優秀な人材は来ないのか?
スタートアップが創業当初に男女の多様性に欠けていた場合、その格差は時間の経過とともに拡大するばかりだ。この現象は、最近の研究論文で「ダイバーシティーデット」と呼ばれている。
この研究論文の著者らは、スタートアップで男性の数が女性の数を大きく上回ると、他の女性が応募しにくくなることを発見した。テネシー大学ノックスビル校のハスラム・カレッジ・オブ・ビジネス(Knoxville’s Haslam College of Business)の2023年2月16日の発表によると「応募者の男女差は、スタートアップが労働力を拡大する際に、"多様性の負債"という悪循環を引き起こす可能性がある」という。
研究者たちは、就職希望者に2つのスタートアップのプロフィールのうち1つを閲覧するよう依頼した。一方は女性5%、もう一方は女性40%という性別構成であることを除けば、雇用主は同一である。その結果、女性は男性よりも前者に応募することに警戒心を抱くことが明らかになった。
「ダイバーシティーデット」は、特別視されたり、疎外されたり、虐待されたりすることへの懸念を生むようだ、と研究者は述べている。女性の被験者は、「この企業にすぐに”テックブロ”の雰囲気を感じ、興味を持てないと思った」「女性は相手にされない気がする」といったコメントを寄せている。
この研究の共著者の一人であるメリッサ・カードン氏(ハスラム・カレッジ、起業・イノベーション学部教授)によれば、起業時から格差のあった雇用主は、将来にわたってパイプラインに制約を受けることになる。この負債によってスタートアップは、募集職種を満たすために必要な最高の人材にアクセスできなくなる、と同教授は声明で述べている。
研究チームは、雇用主が女性の求職者にとってより魅力的になるための積極的な方法を見つけ、もし手遅れでなければ、初日から採用ファネルにおける女性の割合を改善することを提案した。その結果、「より多くの、多様な候補者が集まるという競争上の優位性を得られる」と研究チームは述べている。
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