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凸版が成功したAWS"伴走型"トレーニングで日本のデジタルスキルは上がるか?

AWSの調査結果から日本のデジタルスキルの現状が見えてきた。同社が伴走支援するトレーニングはどのような成果を生んでいるのだろうか。

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は2023年4月17日、「APAC デジタルスキル調査」の結果と、同社のデジタル人材育成に関する取り組みの成果を発表した。同調査はAmazon Web Servicesが調査会社のGallupに委託し、オーストラリアやインド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、タイの雇用主7500人と労働者16000人を対象に実施された(実施期間は2022年8月2日〜23日)。

労働者は意欲的なのに……○○が不足

 近年、日本のデジタル人材不足が頻繁に取り沙汰される。AWSジャパンの調査から、日本人のデジタルスキル習得が進まない理由が見えてきた。

 同調査によると、日本ではAPACの他国に比べて高度なデジタルスキルを使用する人材が少なく、デジタルスキルを使用しない労働者が比較的多いようだ。


図1 日本のデジタルスキルレベルの現状(出典:AWSジャパンの記者発表資料)

 なぜこのような状況に陥っているのか。同調査によると、日本の労働者の約半数はデジタルスキル習得に向けたトレーニングの受講に関心を示しているが、時間不足や予算不足、必要なトレーニングが分からないといった理由で、トレーニングの受講が進んでいない。


図2 なぜトレーニング受講が進まないのか(出典:AWSジャパンの記者発表資料)

AWSジャパンの取り組みと成果

 このような状況を受け、AWSジャパンはさまざまな人材育成の取り組みを展開する。

 IT教育支援などを提供するシステムシェアードとともに、新卒従業員向けのJava開発研修を推進する。自治体向けにもオンライントレーニングを提供したり、学生向けのクラウド学習プログラム「AWS Academy」を提供したりもしている。AWS Academyは加盟校200校、認定教員300人に達し、卒業生が地方企業へ就職するケースも出始めた。

 大企業でのトレーニング提供も積極的に行う。日本航空(JAL)では2020年から3年間で840人がAWSのトレーニングを受講し、130以上のアプリが稼働中だ。

 AWSジャパンの岩田健一氏(トレーニングサービス本部 本部長)によると、トレーニングの提供だけではなかなかデジタル人材の育成は進まないという。そこで、同社は2022年に「AWS Skills Guild」と呼ばれる人材育成の伴走支援プログラムを開始した。


図3 トレーニングの伴走支援プログラム(出典:AWSジャパンの記者発表資料)

 岩田氏は、人材育成を進める上での日本企業の課題として「失敗が許容されにくい環境」「短期の成果が求められる環境」「人材育成の目的化」を挙げ、それぞれに対して「トライ&エラー文化の醸成」「中長期視点での成果の定義」「ビジネス価値創出の目的化」が重要だと指摘した。

 このような考え方を基にした伴走支援が成功した例が凸版印刷だ。同社の人財開発センターが中心となり、AWSトレーニングチームが伴走することで、大規模なリスキリングプログラムを設計した。3カ月間で1600人以上の従業員がAWSのトレーニングを受講し、AWSの認定資格取得者数は1050人まで増加した。これにより、「AI校閲・校正支援システム」などのデジタル関連ソリューションの開発を加速できたという。

 所属組織がそのような取り組みをしていなくても、個人で「AWS Skill Builder」を利用すれば500以上のオンライントレーニングを無料で受講でき、認定資格の練習問題なども参照できる。

 AWSジャパンの人材育成の取り組みについて、同社代表執行役員社長の長崎忠雄氏は以下のように述べた。

 「10年後、20年後、30年後を見据えると、人への投資は今やっておかないと間に合わない。日本のデジタル競争力強化のために、お客さまとともに人への投資を加速していきたい」(長崎氏)

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