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人材不足なのに定年退職者を採用したくない企業のホンネ

定年退職者の再雇用は人材不足の解決策になり得ると専門家は語る。定年退職者はなぜ再就職への意欲が高く、そのような人々を採用するメリットはどこにあるのか?

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HR Dive

 ベテランは何歳で引退すべきだろうか。フランスや米国では議論が再燃している(注1、注2)。

 米人材マネジメント協会(SHRM)のイベントで、コンサルタントで講演者のデスラ・ジャイルズ氏は、定年を迎えたベビーブーマー世代の再雇用を提案した。

定年退職者の再雇用、なぜ進まない?

 ジャイルズ氏は今日の人材不足について強調した。労働統計局の2023年3月の雇用統計によると(注3)、失業率は3.5%だ。2020年4月の失業率は14.7%だった(注4)。

 「政治家にとっては素晴らしい数字だが、人材管理の専門家にとっては深刻な数字だ」とジャイルズ氏は語る。人材不足を解消するために彼女が提唱したのは、退職年齢に達した人たちの採用だ。

 定年退職者は再就職への意欲が高いというが、なぜ多くの企業は採用を渋るのだろうか。また、定年退職者の再雇用は通常の採用に比べてどのようなメリットがあるのか。

 米国の高齢者団体であるAARPによると、平均して1日に1万人が退職年齢に達しているとジャイルズ氏は指摘した(注5)。そして、7年後の2030年には約7500万人のベビーブーマー世代が退職する予定であることを強調する(注6)。これは、多くの人材専門家が既に「大退職時代」と呼んでいる事象だ。

 定年退職者を雇うメリットは、働く意欲があり、高度な資格を持っていることだ。ジャイルズ氏は、その多くが大学の学位を持っており、退職の代わりに小規模なビジネスを始めていることを指摘した(注7)。アメリカにおける確定拠出型の個人年金制度の一つである「401k」において、現在、退職間近の人々(55歳から64歳の人々)が得られる金額の中央値は17万7805ドルである(注8)。つまり、多くの年配労働者にとって完全に退職すると生活費が足りないのだ。

ベビーブーマー世代と企業の利害の一致

 調査によると(注9)、半数以上のベビーブーマー世代の半数以上は18歳から39歳の成人した子供を経済的に支援している。そういった意味でも、退職後に稼ぐ必要があるのだ。

 ジャイルズ氏は、かつてクライアント企業の幹部に提案した内容を披露した。彼女は人材不足への対策として年配の従業員を採用することを検討するように提案したのだ。

 そうすると、「年配者はテクノロジーに詳しくない」「数年で退職する」「雇用主は革新的な人材を求めている」「若くて新しいアイデアが必要だ」といった”言い訳”が聞こえてきたが、これらは全て「年配者を雇いたくない」ということの婉曲的な言い回しに過ぎない、とジャイルズ氏は言う。

 同氏はその幹部に対して、退職した後に何をするつもりか尋ねると、「私にはまだたくさんのことができるから、株主総会のメンバーになるつもりだ」と答えたという。「65歳以上でたくさんのことができるのは、あなただけだと思いますか」とジャイルズ氏は問いかけた。

 ジャイルズ氏は、採用担当者の間で起こる対立についても言及した。ある人は「求職者の潜在的な能力に基づいて採用したい」と考える一方で、ある人は「未経験の応募者は採用したくない」と考える。ジャイルズ氏は「そうした反対意見の持ち主もかつては新人だったのでは」と指摘する。

 企業はパートタイムやプロジェクトベースでの契約も可能だ。採用担当者はギグエコノミー(短期的な労働で成り立つ経済の状態)を避けたがるが、ジャイルズ氏によれば、実はそのような働き方は定年退職者にとって理想的だという。全てのギグワーカーが仕事に無頓着なわけではなく、雇用主をほったらかしにするわけでもない。正社員ではなく契約社員を採用することは人件費の節約にもなる。

 履歴書作成サービスを提供するResumeBuilderによると、退職者の20%が企業から再雇用の要請を受けたと報告している(注9)。裏を返せば、80%は再雇用の要請を受けていないことになる。40年以上のキャリアを持つ彼ら・彼女らを活用するのは、人材不足への一手となるだろう。

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