ジョブ型、タレマネ…… デロイトが発表した2023年注目の人事トレンドとは
デロイトが大規模調査を基に2023年注目の人事トレンドを発表した。近い将来の働き方を示した、その内容とは?
デロイト トーマツ グループは2023年5月11日、世界105カ国、約1万人の人事部門責任者と管理職などへのアンケートを基に、人事部門や人材活用の課題とトレンドをまとめた「デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2023 境界の無い世界のための新たな原理」を公開した。
同レポートは、ジョブ型雇用に関する変化や労働者へのテクノロジー活用、コロナ禍により変化が急速に進んだ職場空間の未来、タレントマネジメントシステムなどで活用される労働者データの今後、多様性・公平性・包括性(DEI)実現のための課題と解決アプローチなど、9つのトレンドを3つの提言に分けてまとめている。以下でその内容を紹介する。
提言1:課題を設定する
業界や業務内容、時間や価値観、テクノロジーなどで従来の区分が通用しなくなる「境界のない世界」では、組織と労働者は、直面する課題について実験的な取り組みから「学び、適応し、改善する」という研究者のような思考が求められる。
ジョブの終焉への先導
ジョブとジョブを区別し、タスクをグループ化し、労働者を狭い役割と責任に分類していた境界線は、イノベーションや機敏性などの組織の成果を制限している。ジョブではなくスキルに注目することで、労働者はジョブから解放され、組織や労働者の成果の向上に向けて、その能力や経験をより活用する機会を得られる。
テクノロジーで人間そのものの能力を高める
人間が行う作業を自動化・拡張するだけでなく、人間やチームのパフォーマンスを向上させる新しいテクノロジーが職場に登場し、人間とテクノロジーを区分してきた境界は消滅しつつある。先進的な組織は、人々がより良い自分、より良い仕事をすることを目指すテクノロジーの使い方を模索している。
未来の職場の活性化
仮想技術やメタバースは、物理空間としての職場の概念を再定義している。従業員同士の相互接続性が高まり、在宅勤務とオンサイト勤務の境界が曖昧になっているため、組織は“どこで”ではなく“どのように”仕事を行うべきかを実験する機会を得ている。
提言2:新しい道を描く――関係を共創する
組織は、労働者が組織のコントロール下ではなく、共に主導的立場にあることを認識し、新たなルールや関係性を労働者と共創する必要がある。
労働者データの交渉
「労働者が所有するデータなのか、組織が所有するデータなのか」という区分は、無意味になりつつある。所有権だけでなく、「労働者データとは何か」や「そのデータの透明性」「データドリブンな洞察の相互利益」についての議論は、データが新しい“通貨”になるのと同時に増加している。
労働者の交渉力の活用
労働者がより意味のある仕事や柔軟な働き方、よりパーソナライズされたキャリアパスを求める中で、組織が唯一の意思決定権限を持つことを前提とした働き方は廃れつつある。労働者の交渉力はこれまで脅威とみられていたかもしれないが、先進的な組織は、労働者のモチベーションと共創を活用して互いの利益を高め合う方法を模索している。
労働力のエコシステムの解放
多様な労働力のエコシステムを育成する価値は大きいが、多くの組織はあらゆるタイプの労働者(ギグワーカー、フリーランサー、請負業者、従業員など)に、どこで、どのように、誰のために働くかについての発言権を与えていないため、旧来の人材管理手法から抜け出せずにいる。
複雑かつ従来とは異なる労働者構成になっている現実の人材プールに合わせて戦略と施策を適応させる組織は、成長やイノベーション、敏しょう性を加速するためのスキルと経験にアクセスできるようになるだろう。
提言3:影響を考慮した設計――人間の成果を優先する
組織はビジネスや労働者、株主だけでなく、より広範な社会にも影響をもたらす必要がある。今回の調査に参加した組織の内、半数以上は自身が働いている社会とより大きなつながりを作ることを望んでおり、2018年のデロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンドで定義した「ソーシャル・エンタープライズ」(社会課題の解決を目指すビジネス)は、ビジネスの世界で引き続き中心的な力を持つことを示している。
公平な結果のために大胆なアクションをとる
組織が多様性のみを指標とする考え方は失われつつあり、組織は代わりにDEIを成果として見る必要があると捉えている。この結果は、3つのポイントに焦点を当てている。まず、組織がどのように人材にアクセスするかに関する公平性。次に、開発プログラムやメソッド、ツールによって人材を生かすこと。そして、組織のあらゆるレベルでどのように人材を昇進、昇格させるのかという点だ。組織はその活動や努力に対する責任よりも、より大きな社会目標を支援する公平な成果の達成能力に対する責任を負うことになる。
サステナビリティにおける人的要素を進化させる
「社会全体の利益」と「組織の利益」の境界は曖昧になっている。組織は、政府や世界規模の団体、コミュニティー、労働者から、持続可能性の問題に対処するよう、強いプレッシャーにさらされている。
労働者は、組織が持続可能性に関する美辞麗句を並び立てることは望んでいない。組織は、労働力と仕事に持続可能性を適用することで、これまでの戦略や行動に存在しなかった人的要素に焦点を当てなければならない。
人的リスクへの関心を高める
組織は、労働者がビジネスにもたらす潜在的なリスクという狭い視野で人的リスクを考えてきた。これからは、組織はコンプライアンスや単なる報告を超えて、広範なリスクがどのように人々に大きな影響を与え、また、大きな影響を受けているかを考慮する必要がある。これらのリスクは、企業の長期的な存続可能性に重大な影響を与える可能性があり、全ての経営陣は十分に理解し、取締役会は最終的な説明責任を負う必要がある。
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