マックスバリュ西日本がRPA内製化で年間4000時間を創出、きっかけはIT部門長の試行錯誤
マックスバリュ西日本が「BizRobo!」とAI-OCRツール「BizRobo! OCR with AI inside」を併用し、導入後約1年で年4000時間相当の余力を創出した。どのように開発体制を築いたのか。また、小売企業でどのようにRPAを活用しているのか。
中国・四国地方と兵庫県の10県でスーパーマーケットなどを展開するマックスバリュ西日本が「BizRobo!」とAI-OCRツール「BizRobo! OCR with AI inside」を併用し、導入後約1年で年4000時間相当の余力を創出した。6月8日にRPAテクノロジーズが発表した。
小売業界でのユースケースとして、どのようにRPAを活用しているのか。
IT部門の部長が自らRPAを開発したことが重要なきっかけになったというが、その後どのように開発体制を築いたのか。また、小売企業でどのようにRPAを活用しているのか。
IT部門の部長の試行錯誤が社内展開のきっかけに
マックスバリュ西日本は中国・四国地方と兵庫県の10県でスーパーマーケットなどを展開する企業だ。同社は、2020年から、専用のスキャン端末を使ってレジ待ち不要のセルフスキャンシステム「My-Piスキャン」を導入するなど、売り場のデジタル化を進めてきた。並行して、本社スタッフのルーティン業務の効率化に乗り出し、従業員が自ら使いこなせる生産性向上の手段として、RPA(Robotic Process Automation)に着目した。
製品は、従業員自らRPAを活用して業務効率化を実現する体制作りを念頭に選定した。最終的に、操作が容易であることや、ロボットが人の操作を妨げないこと、複数ロボットの同時実行が1ライセンスで可能であることを理由にサーバ型RPAの「BizRobo! Lite+」を導入した。
導入にあたって、まずはシステム運営部部長の石田智也氏が自身でBizRobo!の開発に挑戦した。同氏はバイヤーや店舗統括など業務部門の経験が長く、「“ITスキルが少ない私”でもBizRobo!を使えるなら心配ない」と考えたという。石田氏はBizRobo!パートナーのヴィンクスによるサポートを受けながら試行錯誤でデータの自動処理に成功し、その後に定型作業が多い部署に声掛けをしたところ、初年度から約10人が開発に加わった。
2021年には、社内開発の要として「RPA推進事務局」をシステム運営部内に設けた。中には店舗勤務から専任担当になり、BizRobo!のスキルをゼロから習得した人もいるという。専任担当者は、導入部署主体で取り組むRPA運用への協力や、開発者がいない部署向けのロボット開発、部署横断型の業務効率化プロジェクトチームへの参画などを担う。
年間4000時間相当の人的リソースを創出
マックスバリュ西日本では現在、100業務で104体のロボットが稼働している。
一例として、My-Piスキャン利用実績の集計業務においては、「レジ単位で記録される専用のスキャン端末の利用実績を社内システムから取得後、店舗やレジの種類別にまとめ、メール添付のExcelファイルで報告する」という一連の作業を自動化した。手集計では8店舗分に毎日1時間を要していたが、自動化後は35店舗分を5分で完了できるようになった。
毎月約5000件の請求書のデータ入力業務においては、作業の大半をBizRobo!とAI-OCRツール「BizRobo! OCR with AI inside」によって自動実行できている。
こうした効果を積み上げることで、マックスバリュ西日本は月当たり約340時間、年間でおよそ4000時間相当の人的リソースを創出した。
RPAとAI-OCRの活用でインボイス対応も
マックスバリュ西日本は今後も社内スケールや、RPA開発者の拡大、ロボットの増加のための施策を進めている。2023年4月にライセンスを全社展開に最適な「BizRobo! Basic」へアップグレードした。
RPAとAI-OCRを用いた「インボイス制度(2023年10月開始)」への対応や、来店客が手書きで寄せる「ご意見承りカード」の共有の自動化などを予定している。
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