週休3日制を望む声は多い。マイナビが実施した調査では、収入が減らない場合に週休3日制を「利用したい」「どちらかと言えば利用したい」と答える人が約8割に及んだ(注)。
しかし、必ずしも全ての現場に受け入れられるわけではないようだ。景品の製造や人事関連サービスを提供するO.C. Tannerでは、工場の従業員450人を対象に週休3日制を導入したが、上手く浸透しなかったという。多くの従業員が望むはずの週休3日制はなぜ受け入れられなかったのだろうか。
週休3日制へのチャレンジ
同社では工場の従業員と比べて、デスクワークの従業員の方が勤務形態に柔軟性があったため、不公平感を払しょくしようと考えた。
まず、経営陣は450人の工場従業員の現在のスケジュールを調べた。彼らの中には、月曜日から金曜日の日中に8時間勤務する従業員と、月曜日から木曜日の夜間に9時間勤務、金曜日に4時間勤務する従業員がいた。週休3日制を実現するためには、週4回の10時間勤務を導入し、「月曜日から木曜日」と「火曜日から金曜日」の2グループに分けて勤務するのがベストだと同社のゲイリー・ピーターソン氏(サプライチェーン担当エグゼクティブバイスプレジデント)は考えた。
しかし、いくつかの問題が発生した。まず、O.C. Tannerは週5日の製品出荷日を確保するために金曜日も業務を行う必要があったが、誰も火曜日から金曜日のシフトを希望しなかった。また、日勤と夜勤の従業員が働く時間が重複し、設備も不足した。夜勤の従業員に1時間追加で働いてもらうことも評判が悪く、残業時間も増えるため、残務のために追加で勤務し、結果的に週休2日になってしまう恐れもあった。
労働者の勤務時間を1日10時間に増やすことには安全上の問題もあった。
「立ちっぱなしで仕事をし、製品を扱うのだから肉体的な負担がある。さらに1時間延長すると、皆の安全が心配だ」とピーターソン氏は述べる。結果的に、2カ月間試した後、同社は以前のシステムに戻ったという。
新しいことを試す価値
ピーターソン氏は今回の「失敗」が無駄だったとは考えていない。従業員たちは、経営陣が彼らの要望に耳を傾け、代わりのスケジュールを模索したことを評価したという。
米国のコンサルティング企業Culture Partnersで職場文化に関するチーフサイエンティストを務めるジェシカ・クリーゲル氏は、O.C. Tannerのように、企業が従業員の懸念に耳を傾け、これまでとは異なる仕組みを試す意思があることを示すことが重要だと指摘した。
「イノベーションとは素早い失敗である。素早い失敗がなければイノベーションは起きない。そして、彼らは明らかに革新的なことを行ったのだ」(クリーゲル氏)
O.C. Tannerのような企業には適さなかったかもしれないが、企業は必ずしも大掛かりなイノベーションを起こす必要はなく、現場の従業員に新しい勤務スケジュールを提示することもできるのだ。看護師や消防士、客室乗務員などはすでに特定の日数で勤務と休みが交互に設定されているスケジュールで働いており、こういった働き方は他の現場作業や対面での仕事にも適用できるかもしれない。
ピーターソン氏によれば、同じような状況にある企業で、週休3日制など新しい取り組みを試したい場合、管理職がこのような変更の計画を理解し、労働時間の変更がビジネスにどのように影響するか把握する必要があるという。
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