「大卒じゃなくても良い仕事に就ける」ってホント?
ある研究で、収入が高い「良い仕事」に就く可能性を上げる進路が分かった。どのような学生、若手従業員は「良い仕事」に就けるのだろうか。
2023年5月1日にジョージタウン大学教育・労働力センターが発表した報告書によると、「進路の変更」は若手従業員の能力開発に良い影響を与えるようだ(注1)。
良い仕事につながる道は「大卒」だけではない
本報告書の著者であり、同センターのディレクターのアンソニー・カーネヴェール氏は次のように述べた(注2)。
「私たちの研究によれば、学士号を目指すことが”良い仕事”に就くための最も一般的な進路だ。一方、キャリア教育や技術教育、職業経験が”良い仕事”につながる可能性が存在することも分かった。良い仕事への進路は、効果的な介入策を重ねる包括的な政策努力によって強化される」
では、どのような進路を選んだ若者が良い仕事に就きやすいのだろうか。
カーネヴェール氏らは、良い仕事につながる進路に関する政策シミュレーションモデルを作成した。ここで言う「良い仕事」は30歳時点で年収が最低3万8000ドル、中央値では5万7000ドルの仕事を指す。このモデルでは、長期間のデータを分析することで、良い仕事に就くための人生の分岐点を特定している。これによって分かった、良い仕事に就きやすい進路は以下の通りだ。
- 高校で職業技術教育(CTE)プログラムに参加する
- 22歳までに特定の職業に関するスキルを習得できる1〜2年制のプログラム(日本では高等専門学校や短期大学など)に進学する
- 22歳までに4年制大学に進学する
- 22歳までにブルーカラーの職業に就く
- 20歳から22歳の間に雇用の空白期間を作らない
- 22歳でSTEM(科学、技術、工学、数学)または他の高収入の職業に就く
- 特定の職業に関するスキルを習得できる1〜2年制のプログラムに進学した後、26歳までに準学士(日本では高等専門学校などで取得できる)の学位を取得する
- 特定の職業に関するスキルを習得できる1〜2年制のプログラムに進学した後、26歳までに学士の学位を取得する
- 4年制大学に進学した後、26歳までに準学士の学位を取得する
- 4年制大学に進学した後、26歳までに学士の学位を取得する
このモデルによれば、進路変更の効果は人種や性別、階級によって異なる。例えば、高校におけるキャリア教育や技術教育への特化は、白人と黒人の若者が30歳時点で良い仕事に就く可能性を高めるが、ヒスパニック系やラテン系の若者に対してはその可能性を低下させる傾向がある。
また、ほとんどの進路変更は、男性、白人の若者、低所得層の人々を良い仕事に就かせる可能性が高い。「進路の変更は格差の縮小に効果があるかもしれない」とカーネヴェール氏らは述べる。
報告書の共同著者であり、同センターの教授であるザック・メイベル氏は次のように述べる。
「教育や能力開発によって若者が良い仕事に就くサポートが可能だが、属性による格差を是正するには、歴史的に不利な立場にある人々に投資を行い、そういった人々が担っている職業の賃金を引き上げる必要がある。良い仕事につながる進路を拡大するには、包括的な政策戦略が必要だ」
出典:How employers could improve job outcomes for young adults(HR Dive)
注1:What Works: Ten Education, Training, and Work-Based Pathway Changes That Lead to Good Jobs(Georgetown University Center on Education and the Workforce)
注2:Ten Pathway Changes through Education, Training, and Work Could Substantially Increase the Number of Young Adults in Good Jobs at Age 30, Georgetown University Report Says(GEORGETOWN UNIVERSITY)
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